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End  作者: 平光翠
第5.5階層 小さな世界の幕間
84/200

第84話 国VS攻略者

国最強の男がどれだけ強いのか、俺の技がどこまで通じるのか、そんな不謹慎な興奮を感じながら、抜刀の構えを取る。


「End流抜刀術其の一【一閃】」

「うッ!力任せの攻撃か…パワーこそあれど技術は無いな。」


飾り剣により受け止められ、短い金属音がカタカタと連続した音を鳴らす。

「さすが国最強、これを喰らうようなら名乗れないわな。」


馬鹿にするわけではないが、試すように敢えて手加減をした一撃。当然のように軽くあしらわれるがそれで十分。


「じゃ、ちょっとだけ本気で行くぜ?」

「なるほどね。Endの技術とやら見せてくれよ。」


ゲームの技ではない三連撃。カークスが多用する剣士の基本形であるが、その技術をEnd式にアレンジを加えたものだ。


「少し早い……な!」


攻撃を終える直後に無理やりねじ込まれた反撃は、俺の心臓へ真っ直ぐ伸びており、迷いなく貫いてきた。


「End流蹴撃術其の二【孔雀ノ舞(くじゃくのまい)】」


一瞬の殺気を感じ取り即座に後ろに避けるも、さらに1歩踏み込んで俺を追いかけてくる。


「End流槍撃術【激痛特攻(ショットペイン)】」

剣よりもリーチが長く最も威力の高い槍を選んでの一撃。


その先端を見ると同時にアルデリオンは慌てたように後ろに引いていった。すぐに剣を持ち直し体勢を立て直すと、即座に牽制の魔法を打ち込む。


「へぇ、そんなにポンポン魔法も使えんのか…。やりにくい奴だなぁ」


正直言うと盾を用いない防御術は心得ておらず、かと言ってガーディアンにチェンジしてしまうと、攻めに転じづらいというデメリットがある。


そのため、いかに攻撃、反撃を許さずにこちらのフィールドで戦うかが重要になるだろう。


飾り剣で、爆発魔法を逸らしながらゆっくりこちらに歩みよる。

治まらぬ頭痛はジョブチェンジを阻むようで、抗えない硬直が体を支配してやまない。


「クエイフ·ルートゥ。その首貰い受ける」

とうとう、首に剣があてがわれ、冷たい金属の感触が直接伝わってくる。


「我流フェイク抜刀!ここで動けないやつがEndなんか登れるかよ!」


棒立ちのまま、左手で刀を抜き放つ。


「悪いな。俺は嘘つきなもんで、右手をかけなくても抜刀出来るし、硬直もブラフだよ。」


「騙し討ちとは卑怯な!」

「貴様!神聖な王城で!恥をしれ!」


俺の刀がアルデリオンの武器を弾き飛ばし、かわいた音が鳴り響いた。音が鳴り止むと同時に周りからのヤジが飛ぶが、床に向けて放った爆発魔法で黙らせる。


「うるせぇなー!騙し討ちが卑怯だと?アンタらの王が俺にやろうとしてたのは棚に上げるのか。神聖?ふざけろ、4階層に登っても同じことが言えるのか?」


あの死体まみれの教会は上っ面だけの神聖さで取り繕って、その中身はあの神官の私物そのものと言える。

そして、この城も、この部屋も、そんな空気感。


「俺の前で!姫様を侮辱するな!」


骨がへし折られるのではと言うほど、強力で、純粋なまでの突き飛ばし。


技でもなければ意味も無い。

ただ感情に任せただけの攻撃は、一瞬の虚を突かれた俺にはとてもよく通じた。


「姫様!許可を!」

「はぁ、分かりました。貴方が戦争でもないのにアレを使わせろと言うだなんて、その男はそれほどまでに強いのかしら?」

「ごちゃごちゃ言ってねぇで使わせろ、リオン!」


初めて、この男の本音が見えるようだった。

今までの小物貴族ような女王や大衆に向けての取り繕った感情ではなく、強烈な激情。

国や女王を侮辱したからというより、彼女(リオン)自身のやり方を否定されたのが気に食わないようだ。


「喜べ、攻略者。これは伝説の鍛冶師が打った最高峰の武器だ。『王剣アルデルーマ』全てはあの子のために…」


赤と茶色の二色がきっちりとわけられた不思議な剣。


形状こそ、半剣であるが握りしめた柄からチラリと覗くのは、彼の髪色と同じ様な綺麗な赤色。それに対して、刃の部分はなんの金属が使われているのか読ませないほどの焦げた色をしている。


「この剣には、リオンの髪が1本だけ入れられている。俺がこれを使う時は、()()()()()()()()()()()()()事にしてるんだ。まぁ、冥土の土産はこの話で十分だろう?」


先程よりも数十倍早い。一撃の重さが全く違う。


防戦一方であり攻撃に転じる隙が欠片ほども見当たらず、苦痛と衝撃のみを強いられる。


「End流……

「マードレ王国式剣術【アルデルーマ(リオン)】」


一瞬後ろに引いたかと思うと、強烈な突き技。左手を犠牲にして防いだが、続けざまの横薙ぎの一太刀は黒い刀を明後日の方向に飛ばしてしまう。


「【翡翠掌底】」

「【リオン(アルデルーマ)】」


剣の腹により軌道を逸らされ体勢を崩したところに、足をかけられ思い切り顔面が地面に打ち付けられる。


背中から心臓を貫くように突き立てられる剣を避けて、風の魔法を唱えて一瞬の隙を作り出そうと画策する。


「【約束(アルデリオン)】」

「な!魔法を切りやがった!?」


神の目も無しに魔力を見切り、それを切り裂くなんて芸当ができるのは、よほど魔力適性があるか、勘が鋭いかのどちらかだろう。

どちらにせよ、戦いにくいということに変わりはないが。


「神の目……使うか?だが、」

「おいおい、出し惜しみなんてしてる場合か?」


連撃に重ねるような突き技、それなりに重量のある剣でありながら、それを微かにすら感じさせないほど軽く扱い、思い切り振り回す。


「刀を取りに行く時間が必要か?」

「いらねぇよ!蟻金属半剣(こっち)があるからな」


蟻金属、それはアントルの甲殻をモンスタンド原石と一緒に溶かしてアントラント合金とした物を高温状態のまま何度も叩くことで汚れを弾き飛ばし、高純度の高硬度金属としたもの。


金属としての硬さでいえば、先程の影金属と蟻金属を混ぜた『蟻影刀』よりも遥かに硬い。


「いい武器だねぇー。欲しくなる。だが、約束の方が固いぜ?」


三度の打ち合い、並の武器が相手ならとっくにへし折れていると断言できるほど、俺の剣は硬さに重きを置いている。


アントルそのものは、塔の外でも徒党を組んで付近の農村に被害を及ぼすことで有名であり、定期的に討伐もなされていた。当然甲殻も売り買いされているが、あの地獄のような環境で、酷く歪んだ魔力を浴び続けた硬皮は比べ物にならないほど硬くなる。


「驚いたか?その色、アントルだろうけど、残念。こっちは

もっと上だぜ?龍だ!」


材質は()()()

さすがに、塔から離れた辺境で数代後の子孫であるだろうが、この男は、この国は、()()()を成し遂げたというわけだ。


さらに武器同士が大きな音を立ててぶつかり合う。

金属としての硬度で言えばアントラントの方が遥かに勝っている。

だが、それ以上に、最強の男と最強の剣の相性が良すぎるのだ。


「【アルデルーマ(リオン)】」


一言漏らすと、急激に距離が縮まり正面からの袈裟斬り。

ギリギリの所で剣を受け止めたが、受けた刃を滑っていき火花を散らしながら武器ごと弾き飛ばされる。


「End流…」

「フンッ!」


吹っ飛ばされたのを機に反撃の体勢を整えようとすると、またも距離を詰められ、意志をぶち壊すように6連撃。


見切れたのは4回まで、五度目の振り上げとそこから繋げた横一撃は、剣で受け止めるのが精一杯であり、反撃など1ミリも許さない。


「【リオン(アルデルーマ)】」


とどめのつもりか、1度手を止め空気さえも貫くような最後のそれは、無様な格好のまま避けるしか無かった。


「孔雀の舞!」

「逃がすものかッ!」


武器を手放すわけにいかないため、チェンジせずに体のみを動かす。未だに意識が足りていないのか、最強の方が速かった。


「残念だ。願わくばもっと鍛錬を積んでから戦いたかった。あばよ最強。」

「何をッ!?」


投げつけたのは液体銀の入った瓶。

金属を融解させてはいるが、魔力によって温度は低い。


「電気って知ってるか?魔力より効率は悪いが作りやすいし、大きくしやすい。制約も少ないが…、まぁ、それを鑑みても魔力の方が強いんだろうな。天才が使わないわけだし」


アルデリオン─本名はアルデルーマというのだろうか─の背でパチリと音が鳴る。


俺を含めて、この部屋の誰も見えなかっただろうが、今どこかの壁に電気が流れた。

「何度も何度もいろんな壁にたたきつけてくれたよなー!お陰様でトラップは張りやすかったよ!」


ぶち壊したシャンデリアから蝋燭をくすねておき、溶けて半透明になった液体をどさくさ紛れに壁にぬりたくる。


ソードマンだとか、モンクだとか、ウィザードだとかというジョブの制約を受けない、特別な技術。


「魔法をぶっ壊す鋭い知覚はあっても、()()読む頭脳は持ち合わせちゃいないわな。」


魔法ではなく魔術。

予め決められた術式を何かしらの()()に記しておくことにより、一定の条件を満たしたり、魔力を流すことにより世界の理に則った超常現象を引き起こす特別な力。


「でも、こっちじゃ、魔法使いより魔術師の方が多い。なんせ、魔道具は魔術師が作るものだからな。だからこそ、攻撃的な魔術の形なんて見覚えがないから分かるはずがない。」


チンケな蝋燭1本で書ける魔術は、せいぜい書き込めて一言程度。

火炎、氷結、大風、目眩し、どれも決定打にならない。

一撃だけではなく、この場にいる全兵士を倒す必要がある。

そうなれば必要なのは、増幅させる何か。


「科学は得意じゃないんで詳しくは分かってないが、金属なら電気は通しやすいだろ?」


4階層の為に持ち歩いていた液体銀。

偶然かなにか意味があるのか、瓶の中身は金属の中でも電気伝導率の高いものであり、さらに魔法によって液体のまま低温まで冷やされている。


暖かいものより冷たいものの方が電気を通しやすい。

静電気のような小さなエネルギーも、複数箇所に書き込まれた魔術式により、壁から壁へと電気が伝っていき増幅される。


「どいつもこいつもごつい鎧着込みやがって。暑苦しいにも程がある。」


鎧を着ていない兵士も、この部屋には直兵のしかいない。

頭に着けた立場を示すためのバッチは、何かしらの原料で出来ているはずだ。


「貴様ァ!!!その壁に触れるなぁァァァ!!!!」


チリッ!


なにか技を出そうとしたのか、大きく武器を振り上げる。周りの兵士も俺を止めようと怒号と罵声をあびせながら近づいてくるが、ドジな奴が居たのか、運悪く俺が手放した『蟻影刀(ぎえいとう)』を蹴飛ばした。


アルデルーマが、突然飛び出した黒い刀に驚き、一泊早く茶色い刀身を振り下ろした。


グシャグシャに焦げたシャンデリアにぶつかり、蝋燭をはじき飛ばす。


「はははっ!綺麗に燃えてるなー」


当然、蝋で書いた魔術式は音を立てて燃え上がり、そのエネルギーを感知して、一際大きな魔術が完成する。


いつかの雷音が再来する。ピリピリと痛む背中とは別に、女王を除いて全ての兵士が床に伏せている。


さすがに、少ない蝋燭と普通の壁では、巨大な魔術を作ることは出来なかったため、一時的に気絶しているだけだろう。


「ウソ…だろ……。なぜ、今更出てくる…?このタイミングで出てくる?最悪だ………。」


女王の前に透明な膜がはられており、雷撃は全て防がれてしまったようで、床の絨毯が燃え広がって立ち上った煙の向こう側で、その犯人が悠然と佇んでいた。


だが、それでも俺は忘れない。

見間違えるはずがない。


俺が最もEndの中で苦手としていた最強最悪の敵。

公式チートキャラにして通称『負けイベント魔術師』


「国家最強の魔術師にして、名実共にEnd最強、ユーリ·アズマー!」

「おや、私の事知っていらっしゃるのですね。」


片眼鏡(モノクル)をつけた優男は、俺との間を阻む薄い膜をゆっくりとかき消しながら、薄笑いを浮かべて、こちらを見つめていた。


……To be continued

昨日更新が出来なくなりますと言って、舌の根も乾かぬうちに申し訳ありません。

皆様にご連絡的なことをさせていただきます。

今後の更新についてですが、なかなかお読みいただいているようで、楽しみになさっている方がいらっしゃるのかもしれません。

そのため、週3回を目標に更新させて頂きます。

本来ならば毎日更新が理想なのですが、出来ぬ理想より出来る目標をというのが私の座右の銘ですので、こういった形を取らせていただきます。


つきましては、この曜日の何時頃に更新して欲しいというリクエストがあれば、なるべくご期待に添いたいなと考えております。

本小説の感想コーナーだけでなく、Twitterの方でも受け付けておりますので、よろしければフォロー等もお願いします。


名前を変えたことについてですが、特に深い意味はございません。本格的にTwitterを稼働させることを決めましたのでそちらに合わせただけです。

もちろん、ジョジョは未だに大好きです。


それでは、長々と失礼しました。

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