第8話 大倉庫
なんだか、急に長くなってしまった。
あとすいません事情によりサブタイトルが変わります。
朝になったらしい。
陽の光が閉じた瞼を射るように、赤く照りつける。
小さくおはようと言ってみても、謎の声は反応してくれない。
意外と素っ気ないな。照れ屋なのだろうか?
また、昨夜同様適当に身支度等を済ませると、買い物に出る準備をする。
「謎の声、メモを出してくれ。」
〔メモ:通常の食料品,携帯保存食,砥石,磨き布,削り石,矢,解体用ナイフ,携帯用短刀(どのジョブでも使えるようなやつ),魔法瓶(水筒の方ではない)etc……〕
昨日の俺は、結構必要なものがあると考えたらしい。
食料品はまぁ、言わずもがな分かる。
携帯保存食は塔の中で食べるものだろう。
砥石か…ウィザードから変更したことがないからいらない気もするが…どうしようかな。
磨き布…そもそも、砥石の時も気づいたが、あるのだろうか?
砥石は剣の耐久力をある程度保つためのもので、磨き布は盾の耐久力を保つアイテムである。が、この世界には無いかもしれない。その辺も見てみよう。
矢は弓のインベントリに、30本も入ってるから、実際に買う本数は値段を見てから決めよう。
解体用ナイフ…モン○ンと違って、解体や剥ぎ取りに使うナイフは自分で用意しなければならないからなぁ。
(ゲームでは、必要なかったのに…)
携帯用短刀があれば、クリムゾンスライムの時のようなことにはなりにくくなるだろう。
それと、Endというゲームにおいて、第2の刃、第3の刃、というものは必要不可欠だ。
運の要素がかなり強いこのゲームでも、その2つ目や3つ目の刃で、運という逆境を乗り越えることだってある。
値段によっては後回しにしよう。
水筒の方じゃない魔法瓶というのは、あらかじめ魔法を込めておける瓶の事だ。
特殊な加工がされた瓶の中に、適当な魔法を込めておくと、それを割るだけで、ジョブに関わらず、一定の魔法ダメージを与えられる。
無論、回復や補助系の魔法でも可能であるので、これ以降のソロプレイでは、かなり便利なアイテムになってくれるだろう。
まぁ、それはそれとして、まず最初に『大倉庫』に行って素材を売ってこよう。
大倉庫にて─
ここはゲームと名前が変わっていないようで、すぐに見つけられた。
まず最初にこの場所は一体何なのかということだが、ここは大倉庫と呼ばれる超大型仲卸市場である。
仲卸市場が分からない人のために一応説明しておくと、元々はEndから溢れ出て弱体化した魔物や、突如生まれた怪物なんかの素材を一度この場所に保管しておき、鍛冶屋などの二次生産者が、ここから買っていったのが始まりとされている。
例えば、ドラゴンの大きな素材があったとしよう。
当然だがそのドラゴンを倒した人は、素材の加工が出来るジョブでは無いだろう。
だから、鍛冶屋に持って行って剣にしてもらうとする。
しかし、そのドラゴンの素材はどこに置いておくのだろうか?
鍛冶屋に置くには、かまどなんかの設備を動かすのに邪魔になるし、ドラゴンを倒した冒険者の家や拠点に適当に置いてしまうと、素材が傷んでしまう。
だからこそ、この大倉庫で一括管理をしておけば、素材は傷まないし、ここは広いから邪魔にもならない。
仲卸業というのはそういう目的がある。
(もちろん少しお高くなるが…)
さて、そんなこんなの解説をしていると、前の冒険者風の男が、素材を買い叩かれていた。
(へぇー、塔の外のモンスターってだけであんなに安く買い叩かれることもあるのか。)
恐らく、オークの毛皮だと思われるが、ゲームでは1500G~2000Gぐらいだったのに600Gと言われて、冒険者はしょんぼりしながら帰っている。
………まぁ、俺がそうなったら、イチャモンつけて出来る限り高く買い取ってもらおう。
「いらっしゃいませー。初めてのご利用ですか?」
初対面で失礼だが、近くで見ると20代後半の厚化粧をしていて、婚活に必死な女性みたいな顔してるな。
「ええ、塔内のモンスター素材を持ってきたのですが」
無意味に敵を作る必要も無いので、最低限のマナーを守って答える。
「おめでとうございます。一応鑑定をかけさせて頂きますがよろしいでしょうか?それと、お客様はポイントカードお持ちですか?」
「……え、なにそれ?あ、すみません。持ってないです。どんなものなんですか?」
しまった。ゲームに無かったからつい素の反応をしてしまった。
お姉さんは苦笑いをしながら、
「ポイントカードを持っていると素材ひとつにつき1ポイントで、ポイントを貯めると、このマークがついているお店でポイント決済ができるんです!もちろん、年会費なんかもかからないので冒険者の皆様にはとってもお得だと思いますよ。」
なんだかセールスみたいな話だな
「あー、俺、探索者なんですけど、塔専用のボーナスとかってあります?」
「ええ、塔内の一部の素材以外はひとつで2ポイント獲得出来ます。さらに、未発見の素材には100ポイントプラスですよ!」
なるほど、例えば、二階層に到達したとして、あそこのドロップアイテムは最初に持っていく時、101ポイント獲得出来て、次からは2ポイントずつ貰えるのか。
あと、一部のアイテムと言うのはスライムの素材のことなんだろうな。
「ええと、じゃあ、ポイントカード作ります。あと、この素材の鑑定と買取お願いします。」
元気な声で「分かりました」と言って奥に引っ込んで行ってしまったお姉さんを待っていると、周りがどんどん賑やかになってくる。
朝早くから出てきたので、最初の方こそ冒険者や探索者は少なかったがどんどん増えてくる。
ふむ、この空き時間を使って冒険者と探索者の違いでも説明しておこう。
探索者とは、人類未到達領域のうち、宇宙や火口、深海を除いた場所を探索したり、その領域を解明する人のことを呼ぶ。
冒険者というのは、探索者が攻略した場所に出るモンスターを狩ったり、貴族の警護や、依頼をこなす人達のことだ。
ついでに人類未到達領域とは、あるかもしれないと伝承されていたり、科学や魔法で観測されているが、人類が立ち入れない場所のことを指す。
もうすぐで完全攻略できるとされている、宇宙空間や火山内の灼熱空間、日の当たらない深海空間などは、国が攻略しようとしているため、探索者は探索できない。
それに対し、『変化の里』『亜人の村』『混合都市』『竜国家』そして、『神の塔〈End〉』
そしてこれらは、代表格であり、ここ数百年は探索不可能な領域である。
さて、こんなくだらない話をしていると、鑑定が終わったようだ。
うーん、やはり鑑定の精度を100%に近づけるようとすると、複数人で鑑定するしかないんだな…。そのせいで時間がかかる。
……To be continued
次回予告
またまたクエイフだ。
次回は驚きの鑑定結果が出るらしい。
っておい!そんな安い値段なわけないだろ!もっと丁寧に扱えコノヤロー
次回!ヒロイン登場!
タイトルがコロコロ変わって申し訳ない