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End  作者: 平光翠
第三階層 ネザートロワーム
51/200

第51話 3人目の攻略者

新キャラ登場

現実世界のある国で……


「すげぇな、あいつまた全教科100点だぜ?」

「でも、性格悪いよな。」

「いつも1人だし、何考えてるか分かんない。」


名前の横に100点と書かれた数学のテストの答案がゴミ箱に捨てられている。

(こんなくだらない紙きれで僕の学力を測ろうなんて、無駄にも程があるな。)


彼は天才だった。全てのテストで100点は当たり前、この国に飛び級の制度があるのなら、2歳の時にはハーバード大学を主席で合格し、3歳になればハーバード大学の教授になる程だ。


さらに運動神経も高く、1人でサッカーをやればワールドカップをぶっちぎりで優勝(他のチームは普通に11人)

野球では一球も打たれることなく、全てをホームランで返す。

バスケもバレーも、その頭脳を活かしたプレイで相手を翻弄し、水泳でさえ世界新記録を打ち破る。


彼にとってこの世界は退屈であった。

ただ一つのゲーム以外は……


『End』

それは、天才の彼でも予測出来ないような突発的な事態が起こり、何度も失敗を重ねる。その事がたまらなく面白かった。


突然現れる敵、形の変わるマップ、一瞬の判断ミスがゲームオーバーを引き起こす。失敗して失敗して失敗する。

何度失敗しても、その度に面白いと感じていた。


帰宅すると、すぐにそのゲームを起動する。

土日の間にかなり進めたが、運悪くクリアすることが出来ずに、次の日に持ち越しになったのだ。


「30作目…いいゲームだった。さすがすぎるだろ…。」

そして、やっとの事ゲームをクリアする。

「なんて、感動するストーリー。さすがの僕もこんなに素晴らしい話は考えられない。」

当然彼が小説を書けば、ノーベル文学賞と芥川賞を同時にとった上に直木賞も軽く受賞するだろう。


『ゲームクリアおめでとうございます。退屈しない世界へ招待させていただきます。宜しければ『31作目のEnd』の世界でお会いできますでしょうか?』


怪しいスパムメールのようだ。当然いつもの彼なら読むまでもなく削除してしまうだろうが、今回は別だった。


そこには、謎の魅力があった。思わず読み込んでしまう魅力があった。


「行ってやろうじゃないか。」


こうして、また1人異世界へと迷い込んだ。


▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪

何も見えないほどの光の中、彼は目を細める。


「はじめまして、私は絶対神。君で塔を攻略したのは3人目だ。とある2人に負けている。勝ちたいだろう?」

「…ハッ!あんたが神だとは信じないが、僕よりも先にクリアした2人というのは気になるな。」

「いいねぇ。面白い。欲しいチートはあるかい?絶対神である私が直接与えよう。」


彼に欲しがるようなものがあるはずもない。誰もが羨む才能。聖人君子でさえ(ひが)んでしまうような能力。

彼が必要とするものは本来ならば、無いはずだった。


「……可愛い女の子。僕に惚れているような頭のいい子を同伴させてくれ。」

「ほう?何故そんなものを願うのかな?君に必要なものかい?」

馬鹿にするように、嘲笑いながら神は聞く。

「足りないんだよ。僕には。」


絶対神は首を傾げる。わからないとでも言いたげだ。

「神だというのにわからないのか?大したことないんだな。」

今度は彼が馬鹿にする番だった。

「答えはなんなんだ?」

「別に女である必要は無いが…。僕が自分よりも大切だと思える生物が欲しい。そうじゃないと、あの塔は攻略できそうにない。」

「いいねぇ!気に入った。面白い。すごく面白いぞ!造ってやろう。君の望み通りにね。」


「情が湧きやすそうに女がいいな。馬鹿面は嫌だ。僕まで馬鹿だと思われそうだ。それなりに学があって、きちっとした顔立ちの方がいい。あまり反抗的なのも面倒だ。ある程度従順な方が気が楽だ。」

「案外要望が多いな…。」


光の中で見えないが、困ったような顔をする絶対神。

不敵な笑みを浮かべつつ彼は話を続ける。


「こんな感じでいいかい?」

「違う。もっと鼻を高く。目は少し可愛らしくしてくれ。身長はあと2mm高くしてくれ。」


3時間以上かけて、一人の女性が造り出された。

「こいつの名前は『メイ・カーレン』にしよう。」

「何だっていいよ…。じゃあ、そろそろ君を送ってもいいかい?」

「ふむ、意外と可愛らしく出来てるじゃないか。ただ、足のサイズを23cmじゃなくて23.5にしてくれ。それと……

「君がもっと面白いものを見せてくれるのを期待してるよ。それじゃ!」

「おい、ちょっと待て話は終わってないぞ……」


▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪

とある鬱蒼とした森の中


「なんだここは…?せめて、まともな家からスタートできないのか?塔はどっちだ?」

「おはようございます、お坊ちゃま。ご気分はいかがですか?」


彼の傍らには、先程自分がデザインした通りのメイド服を身にまとい、背筋をきちっと伸ばした姿勢で立っている女がいた。


「メイ・カーレンだな。よし、僕の名前が言えるか?」

「お坊ちゃまのお名前ですね。『ジース・ニアディジー』でございます。」

「よく出来たな。ふむ、それなりの頭はありそうだ。」


彼─ジースは、人に嫌われそうな傲慢な態度でメイの頭を撫でる。


「あっ…♡」

しかし、彼女は満更でもなさそうだ。

満足そうに笑みをこぼすと、自分の今の表情に気づいたのか、キリッと顔を引き締める。


「メイ・カーレン。近くの街はどこだ?」

「かしこまりました。ご案内致します。」


そして彼らは歩き出し、すぐに近くの街に着く。

街の市長の家まで行くと、巧みな話術で何やら怪しげなものを売り始める。


「これは大したものでは無いのですが…街の防衛をしてくれる優れものでして……お値段はこれくらい…。」


彼が近くにあった有り合わせのもので作った、防衛用のゴーレム。付近のモンスターであれば難なく処理できるものだ。

値段はだいたい市の予算ぐらい。




「さすがの手腕でございました。お坊ちゃま。」

「あの程度のバカの考えていることなんて簡単にわかる。そうなれば、需要に合わせてものを作るだけ。世の中のバカどもはこんなに割のいい商売をなぜやらないのかが疑問だよ。」


すると彼は、服屋で布を買い漁り、そうそうに宿を取る。

「しばらく人を入れるな。メイ・カーレン、お前はいい。そこにいろ。」

「かしこまりました。」


買ってきた布を裁断し、それらを縫い合わせる。

そうして出来たのは、いくつかの服であった。

「メイ・カーレン。どうだ?」

「はい、大変よろしいかと。」

ジースは満足そうにうなづくと、一着のメイド服を取り出す。


「これはメイ・カーレンが着る用だ。」

「私がですか…?」

「これを着て服を売れ。全部だ。」

「かしこまりました。」


メイは少し微笑み、ジースはまた別の服を作り始める。

当然、彼が作った服は全て売れた。


……To be continued

この2人はまたのちのち出ます。

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