第49話 塔の天気は変わりやすい
ゴブリンLv2を倒したことにより、リベンジランサーは再びロックされる。
リベンジランサーのような、条件付きでランクアップできるジョブを『特殊中級職』と呼ぶ。上級職や究極職にはこれが無い。
「ガーディアンの中級職は、スキルレベルが足りないしな…。」
俺が目指しているのは、確実に2人を守れる『アーマーナイト』そして、さらにその上位職『ゴリアテ』である。
「ゲームではアルティメットゴリアテなんてなかったな…。新しく登場するのか…?」
ステータスを開いて、ジョブのクラスアップツリーを眺めるも、究極職は全て伏せられている。
バカバカしいようなゲーム的演出にうんざりしつつも、ゴリアテから伸びているツリーがあるので、『アルティメットゴリアテ』があると予想する。
くどいようだが、ゲームではアーマーナイトまでにあと、レベルを3つほど上げる必要があり、アイテムランクがもう二段階ほど高い盾が必要だ。
ちなみに、今俺が使っている盾─『蟻皮の盾』のランクは、Nであり、下から2番目の結構弱い装備である。
アイテムランクとはいわゆるレア度であり、下から
LN<N<HN<LR<R<SR<SSR<URと結構長いのである。
なお、武器や防具に関しては、『進化』をすることにより、制作した時のレア度にプラス補正をかけることが出来る。つまり、一段階上のランクになれるということだ。
〔情報の訂正:ゲームの設定と変更されています。〕
俺が、頭の中でレア度について思い出していると、謎の声の警告音がなる。
〔『リアル異世界』においては、N<R<R+<SR<URしかありません。さらに、ガーディアンのランクアップ条件も変更されています。
条件:盾がランクR+以上の装備。全身にランクR以上を装備する。〕
ステータスのクラスアップツリーを見てみると、ゲームより条件がわかりやすくなっていた。
1番変わったのは『サモナー』のクラスである。
サモナーになるまでに3つほど魔術系のスキルを上げなければいけないのだが、この世界では、『魔術スキル』とアイテム『召喚士の本』があれば、『ウィザード』からクラスアップできるらしい。
さらにゲームでは、そこから様々な種類ごとに分けられていたはずが、『アルティメットサモナー』しか無くなっている。
「結構ゲームと違うんだな…。」
「なにかおっしゃいました?」
イヴの問いかけに首を振って誤魔化す。
「…来てる!ゴブ4。アン6。ボムマン!」
「2人は下がれ!俺が出る!」
レイの報告を受け、俺は盾を構えながら叫ぶ。
ボムマンは体が小さいためか、意外とすばしっこい敵であるため、下手に回避するよりは俺の盾で防いでしまった方がいいのだ。
「【ボム】」
廊下の向こう側から、気味の悪いスピードでこちらに近づくと、自分の体を破裂させる。
ものすごい衝撃と熱量により、ほんのわずか後ろに押されるも踏みとどまる。
「クエイフ、上!!!」
咄嗟に上を見るも、50cmも無いほど近くに2体目のボムマンはいた。
レイが見逃した?それも仕方ないだろう。なんせどこから登場したかがわからない。
〔意志を確認:【ジョブチェン……
「【スラッッッッシュ】!!」
特殊インベントリがジョブチェンジと同時に反応し、腰の左側に出現した剣を抜刀する。
爆発のために膨張し始めたボムマンを流れるように斬り落とす。
「クエイフ、3体目!」
2体目を斬り落としたときには、既にこちらに向かってきていたのか、既に膨張は十分なようで、破裂し始める。
爆発する寸前に、奴は不敵な笑みを浮かべる。
まるで、『お前らにボクは殺せない』とでも言いたげな不遜な表情でこちらに迫ってくる。
事実、3体目のボムマンを避けきれるとは思えない。
運良く避けたとしても、少なくないダメージを負うことだろう。
「【フリィィィーズ】!!」
しかし、イヴの魔法が3体目のボムマンを凍てつかせる。
魔法による氷の中で、自分が死ぬことに気づかないまま笑っている。そして、砕ける。
「イヴ姉、もう一体降ってくる。いや、2…4…5…7!?」
いくらモンスターハウスといえど、それほどの数のボムマンが出現するなんてのは、間違いなく異常事態であり、さらに言えば、空から出現するなんてことはまずありえない。
明らかに人為的なものであろう。
また、魔王絡みかと思うが、いつもとは違う。
今までと違って本気で殺しに来ているような敵…?
「こんだけ連続で降ってるって事はボムマンの雨とでも言いたいのか?」
ただの予想でしかないが、あながち間違いではないだろう。
しかし、そんな悠長に敵の正体を考えていられるほど、ボムマンは簡単に処理できるような奴らではない。
すぐ目の前に着地したボムマンは、すぐに魔法を詠唱し始める。
「させるかよ!【シャープエッジ】ッ!!」
ジョブとスキルのアシストを受けた武器が、膨張する爆弾に向かって吸い込まれるように近づいていく。刃先は導火線が殆ど見えなくなったボムマンを斬り裂いた。
しかし、真っ二つに両断する直前で、詠唱は完了し中の火薬に導火線からの火が届く。
ボォォォンッ!!!!!
体は吹き飛び、剣を持っていた手は焼け焦げたようで、頭の中が、ミキサーのようにシェイクされ、視界は眩む。
焦げる匂いと爆煙の味が口に広がりつつ、イヴとレイが焦ったようにこちらに走ってくるのがうっすらと目にうつる。
俺の目の前で爆発したボムマンは、先程のボムマン同様不敵な笑みを浮かべながら、風に乗って死んでゆく。
「【フル・ヒール】ッ」
チートにより、詠唱をすっ飛ばして上級回復魔法を俺にかける。
イヴが、呪いによる痣で穢されるのに反比例し、俺の火傷は治り始めた。
強制的に修復された皮膚は、ボロボロに炭化した皮膚を押しのけて回復する。
一気に大量の魔力を消費したため、イヴはぐったりと倒れ込む。
「イヴ姉、危ない!」
倒れかけるイヴに爆弾は容赦なく近づいている。
ボムを唱え、導火線がどんどん消えてゆく。
その間にレイは割り込むように押し入り、自分とイヴに布を被せる。
「【カモフラージュ】」
ドンッ!
爆発と共に布は消し飛び、怯えている2人が千切れた布の下から見えてくる。ダメージを、肩代わりして消し炭となった魔法の布はしばらく使えない。
しかしながら、当然のようにまだまだ降ってくるボムマンたちは、休むことなく攻撃を続ける。
「なんなんだよ!【クロスブレイド】」
真上から登場したボムマンを空中で両断する。
死の間際、そのボムマンはダメージこそないものの、小さく爆発し俺たちを怯えさせた。
「止まった…?」
「……ボムマンの音は聞こえない。」
「でも、寒くないですか…?」
たしかに、ボムマンの爆発により汗をかくほど暑かったはずが、それがだんだん冷えてきて気持ち悪い。
持っている盾も冷たくなっていき、正直持ちたくない。
「おい、寒すぎないか?」
「……虚技【上着代わりの体】」
「あ、レイ。私にもお願い。」
「…自分にしかできない。」
盾をインベントリにしまう。とてもじゃないが冷たすぎで持っていられない。さっきからモンスター達も、寒いためか全く出てこなくなった。
「なんでこんな異常気象が…?塔の中に天気なんて関係ないはずなのに…。」
「…ねぇ、なにか聞こえる。」
スケルトンだろうか?あいつなら寒さなど関係ないだろう。
「……バチバチって聞こえる。何コレ?」
「モンスターの音じゃなさそうだな。」
乾燥しきったモンスターハウスにバチバチと乾いた音がする。
つまりは…
「マジかよッ!!」
ドゴォォォ!!ゴロゴロゴロォ…
目が眩むような光、その正体は雷撃。
まさに神の武器のような形で、乾いた空気の中を鋭いナイフで切り裂いているかのように、光が通り抜ける。
運良く今回は誰にも当たらなかったが、次かその次かには俺たちの誰かに当たるだろう。
ビシャァァァァーン!ゴロゴロォ…ゴロゴロゴロゴロ…
2発目は、塔の内側の壁に直撃して、土色の壁を恐怖的な黒に染め上げる。
次の電撃をチャージしているのか、少しの間が開く。その間に自分たちの装備を確認する。
雷を誘発しそうな物は俺は持っていない。盾もさっきしまったしな。
レイも大丈夫。肉体変形を応用して体をゴムのような雷を通さない皮膚で覆っている。
では、イヴの方は…
「イヴ!杖をしまえ!」
あの杖は魔力の伝導率が高く、おそらく魔法で引き起こされているであろう雷にとって、避雷針のようになることだろう。
さらに、微量ながらそれなりに雷の伝導率もいい金属が混ざっている。
魔法と本物の雷、どちらの性質も持っている攻撃に対し、あの杖は狙いを定める格好の餌食だ。
そして、その雷撃は上空に浮かぶドス黒い雷雲の中で弾け、地表に向かって降り注ぐ。
「え…!?」
「イヴ!!」
ガシャァーーーン!!!!!ゴロゴロゴロゴロ……
……To be continued




