第4話 スライム
新章突入(というか、やっと本編?)
今回初戦闘!
やっぱり説明的なものが多いですね。
いざ塔に入ろうと意気込みながら、謎の声の案内に従いその場所に向かうと大きな門が塔への道を阻んでいた。
その門は何百年も前に建てられたもののようで、元々黒かったであろうそれは、サビにより赤く変色していた。
〔神からのボーナスアイテム:『創造神の鍵』〕
〔説明:創造神が創り出した、門の鍵。〕
謎の声の無機質な声と合わせるように、俺の目の前には光がふわふわと浮いている。
その光に手を伸ばすと、鍵の形になり光は霧散する。
「…神様って、チートよりもチートじゃないか?」
ギギィとさびた金属の擦れる音と共に門は開かれる。
その奥では頂上の見えない塔が、挑発するようにそびえ立っていた。
End─第一階層〈アインス洞窟〉
やはりここはゲームと変わらないな。
全シリーズを通して、第一階層は絶対に〈アインス洞窟〉と呼ばれる薄暗い洞窟だ。
所々に、点々と松明が壁にかけられているが、だれが設置したのかは明らかになっていない。
〔薄暗い空間にだんだんと目が慣れてきたあなたは、そこかしこで聞こえる不気味な水音に不快感を覚える。〕
謎の声がノリノリで実況を始めるくらいには余裕のある状況にほんの少しだけ安堵するも、そんな心意気だとスライムにすら瞬殺されると考え直し、気を引き締める。
「……しまった。スライム相手ならウィザードの方が有利なんだ…。今のうちに変更しておくか。」
【ジョブ変更:ソードマン→ウィザード】
〔ジョブ変更により、現在の装備品の一部が外されます。〕
〔助言:特殊インベントリに装備品を設定しておくと、ジョブを変更した際に自動で装備します。〕
外れた装備品(剣だけしか外れてないが…)を杖に持ち替えて、ステータス画面から特殊インベントリを開く。
「何だコレ?ゲームには無かったな。」
インベントリとは、要するに持ち物のことであるが、ゲームでは『特殊インベントリ』というものはなかったな。
ゴブリンと戦う時はソードマンの方が戦いやすいし、特殊インベントリに剣を入れておくか。
どうやらこれでソードマンに変更した時は、いちいち装備し直す手間が省けたようだ。
ぐっ!頭が…痛い?なんだ…これ!?
突然襲ってくる頭痛に、モンスターからの攻撃を受けているのかと身構えるも、どうやらそうではないようで、謎の声による解説が始まる。
〔説明:ジョブ変更による副作用です。本来、ジョブ変更は儀式を行わなければいけませんが、それを省略したことによる代償ダメージです。〕
ダメージと言っても、実際にHPが減っている訳でもないので、まぁ、特に関係ないだろう。
強烈な傷みが20秒ほど続いたあと、痛みは収まった。
未だに少しズキズキするが…
頭を抑えていると、びちゃりびちゃりという水音が聞こえてくる。少しずつ大きくなる音は、こちらに近づいてきているようだ。
「頭痛いのに、スライムかよ…。めんどくさいな。」
水音はさらに音量を増し、敵の気持ち悪い風貌が薄暗い所から這いずり回りながらに現れる。
「Endの基本は先制攻撃!【マジックボール】ッ!」
マジックボール─無属性の魔法攻撃だ。
スライムは物理攻撃がほとんど効かない代わりに、魔法にめっぽう弱い。なのでゲームでの定石は、ウィザードで、スライム相手に戦闘に慣らして、ソードマンでゴブリンを倒すという、攻略方法がメジャーだった。当然だが、俺もよくやってた。
「ДЖБЁЙЗЖДыюьщ」
スライムは意味があるのか無いのか分からないような悲鳴?を上げつつ、こちらに反撃をしようとしてくる。
あの構えだとただの体当たりか…?
ゲームでのスライムは攻撃パターンがかなり少ない。
体当たり、プルプル震える、スラ・ストライク、にげる。
この4つしかないので、簡単に覚えられる。
(避けないで反撃するか?いや、ウィザードは近距離攻撃は大してダメージを与えられないんだった。
だったら、ソードマンにするか?─いや、副作用で攻撃出来ないな。なら、避けるしかない!)
やはりEndは、冷静な判断を強いられるので、考えることが多くなるし、思考もどんどん加速してしまうな。
「ЙЖЕЗЖщЁ!」
そんな叫ばれても分かんないけど、多分俺が避けたのを怒ってんのかな?
「【ファイア】」
マジックボールは、MPを消費せずに使えるが、火属性魔法攻撃のファイアは、MPが目に見えて減るな。
MPがほんの少しずつ回復していくのでマジックボールだと、ほぼ即時回復にちかいが、ファイアだとそうもいかないからな。あまり連発は避けたい所だ。
雑魚の代表格であるスライムは、今の2回の攻撃により力尽きてしまう。
〔プルプルゼリーを手に入れました。インベントリに収納します。〕
インベントリの容量は60。そのうち20ほどが回復薬や装備品が収納されているので、それなりにドロップアイテムを収納できそうだ。
さて、初戦闘を終えたことだし一度休憩しよう。
……To be continued
次回予告!
主人公のクエイフだ。
スライムは大した強さでもないから、手こずるわけがないんだよな。
しかし、次も上手くいくとは限らない。
油断はすぐに死を招く。
塔の中では『油断と死はお友達』という皮肉があるくらいには油断は禁物だ。
ちなみに俺の座右の銘は『油断大敵』としているから、あまり油断はしないな。……嘘だ。座右の銘なんて考えたこともない。
さて、次回は『赤いアイツ』が出るらしい。
ああ、あのめんどくさいやつだな。作者も意地が悪いな。
次回お楽しみに!