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End  作者: 平光翠
第三階層 ネザートロワーム
39/200

第39話 下との違い

〈End三階層ネザートロワーム〉


『地下』ということで、ただでさえ薄暗いこの階層。

距離感の掴みにくい暗さの中、一際暗い部分が目立つ。

それはまるで、()()()()()()()()、塗りつぶしたかのようなおぞましい黒々しさだった。


「あいつら、三階層に来てるぞ?手を出すんじゃないのか?」

「んー、方法を考えてるんだよ。」


響くような男の声。

ハスキーな女の声。


2人の声は薄暗い地下に散ってゆく。


「……思いついたァ♪」


気持ち悪く気味の悪い、おぞましさと不快感を混ぜ合わせた、胸糞の悪くなるような甘く(ただ)れた声が、闇の中に反響する。


三階層(ここ)のボスを変えてしまおう。」

「……なるほどな。それは面白そうだ。魔王らしく、塔を破壊したがるあのお方にふさわしい。」


影が魔王のソレの中に沈み込むと、陰ながら魔王を影へと引きずり込む。


「しっかり掴まってろよ。」


地の中を蠢く闇は、どこかへ消え去った。


▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪

〈同じく三階層〉


不気味なほどの殺気。なんだか粘着的な感情を向けられるような、嫌な感覚。


ふと下を見ても、当然何も無い。


「クエイフ、どうしたの?」

「敵ですか?」


後ろの2人があたりを見渡すが、それらしいものは無い。

気のせい…?

だが、たしかに、不躾な視線が今もなお、こちらに向けられている気がする。


俯いたまま首を傾げると、イヴの魔法による光源で出来た俺の影が揺らめく。


「クエイフ♥」


影が俺の名前を呼んだ?

いや、そんな訳が無い。


しかし、俺たちの前には、黒く蠢くものが、超高速で俺達と俺たちの進行方向と同じように抜けていった。


「あれは…なんなんだ?」


もう一度首を傾げる。

さて、先に進もう…。

▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪


〔レベルアップ:Lv29になりました。習得する技を選択してください。〕


謎の声のステータスメッセージを読み飛ばし、アントルの頭を踏みつける。


新しい鎧は、金属だけでなく断熱性の高いセラミックを混ぜて打ったらしい。


だが、残念なことにビットは、アザピースが居なくなったのでもう出現しない。

それ以外で熱攻撃をする敵といえば、クリムゾンスライムぐらいだろう。

いや、ボムマンもいたな。


「ふぅ、あらかた終わったな。二人ともレベルどのくらいだ?」


三階層は、Lv25程度が攻略目安である。(ゲームでは22。安全性を考えて少し高めに設定している)


「私は30です。」

「……ちょっと前に32になった。」


なん…だと…!?


「あちゃー、そうか、基本戦闘は2人が中心だもんなぁ。盾職じゃレベルアップも遅いわなぁ…」


完全に盲点だった。

ゲームでは、この2人はいなかったので(当たり前だが)ソロ攻略となれば、必然的に戦闘は自分一人で終わらせるし、経験値も独り占め状態になる。


しかし、連携のためにと生きる確率を高めるために、安定したパーティにしようとすると、一番キル数の多いレイは、レベルアップが早くなるし、レイの撃ち漏らしを、妹の尻拭いをする姉のように、魔法で撃破するイヴも経験値は手に入る。


だが、俺はどうか?

ただ盾を構えて、彼女たちを守るために東奔西走するだけなのだから、当然、撃破数は1番少ないだろう。


「…クエイフ、意外と弱い?」


失礼なことを言うレイにチョップをお見舞し、ジョブチェンジをする。


「450m先の小部屋。モンスターハウスだな。2人は手を出すな。俺一人でやる。」

「「大丈夫なの?」なんですか?」


当たり前だ。

何度この塔を攻略し、失敗し、成功し、挫折して、登りきったと思ってる。


習字に使う半紙ほどの小さな盾と、鋼とゴブリンの爪を混ぜ合わせた合金のロングソードを構える。


「ゴブリン4…メイジ1…アチャ2…アントル6…スライム…マルシェ…3か?クリムゾン。その隣にスライムが5。アントル4…いや、5、6、……8だな。こっちにもゴブリンの群れか」


獣共の唸り声の反響音から部屋はかなり広い。300m²はあるな。


高さは、20m程だろう。

イメージとしては、学校のプールほどの面積で、ビルの7階ほどの高さ。と言ったところかな。


モンスターハウスの近くまで来ると、腐った水の匂いと獣の匂いが混ざり、鼻が壊れるような異臭が強烈に漂う。


ゆっくりと深呼吸をする。空気は冷たく、ほのかに生臭い。

しっかりと思い出す。あのゲームの中で、ハウスに入る時の緊張感と、プレッシャー。

しみじみと実感する。これは、ゲームじゃない。ほんの少しのミスが、代えがたい痛みや死をもたらすことを。


吐き出した息が、周りに溶けてゆく。

俺は、走り出した。



目指すはハウスの中心。


棒立ちでいたゴブリンの腹に、ロングソードが突き刺さる。

醜い断末魔。聞くまでもなく、振り返りざまに一閃。


メイジの詠唱が聞こえる。

それをかき消すように頭の中で、強くイメージする。


〔意志を確認:【ジョブチェンジ〈ソードマン→モンク〉】〕


武器が外され、特殊インベントリに収納される。

素手のままではあるが、ゴブリンメイジの顔を変形させる。

ただし殴り飛ばすことはしない。


吹っ飛んでいきそうな頭を右手で押さえ付け、こちらに引っ張る。

俺の右脇腹を狙ったマルシェオンブルの鋭利な一撃は、みごと、ゴブリンメイジの腹を3枚に下ろすことになる。


〔意志を確認:【ジョブチェンジ〈モンク→ソードマ……


謎の声のメッセージも最後まで聞かずに、2枠目の特殊インベントリの短剣を左手に持つ。


アントルの牙を左の短剣で抑え、マルシェの腹を蹴り飛ばす。

牙をへし折るように、アントルの顔を殴り飛ばすと、一瞬の空き時間が生まれる。


それを待っていた!

〔意志を確認:【ジョブチ……


ええい、邪魔!


「【ボム】ッ!!」


右手を前に突き出し、爆撃を加える。

2体ほどのアントル1体のスライムが爆散する。

空いている左手で、腰のホルスターから、魔法瓶を取り出しもう一度前に投げる。


2度目の爆破音。

イヴの詠唱付きの【ボムラ】だ。威力は、俺とは桁違いだろう。


〔意志を確認:【ジョブチェンジ〈ウィザード→トラッパー〉】〕


「【パラライズポーション】ッ!」


トラッパーの、【トラップポーション】は、インベントリに入っているポーションを、どちらかの手の中に出現させるものである。


今回はゴブリンに投げるために麻痺(パラライズ)のポーションを使ったが、毒のものも持っている。


〔意志を確認:【ジョブチェンジ…


次は『モンク』だ!


麻痺状態のゴブリンにのしかかる。

首の骨をへし折り、命の重みが消えて軽くなった死体をうしろのアントルに投げつける。


死角の出来たアントルに、掌底を喰らわせ、また、ジョブを変更する。


ロングソードを携え、アントルに向かってゆく。

甲殻の隙間の肉を狙いその剣をねじ込む。

刺さったその剣を抜くことなく、アントルを蹴り飛ばし、また、魔法瓶を高く投げる。


三度目の衝撃。


それに乗じて、ジョブチェンジは既にされている。


少し遠い場所で歯をギチギチと鳴らしていたアントルの下顎から、独特の水音を立て、体を引き伸ばす。


「【スラ・ストライク】ッ!!」


すぐさま振り向き、弓を引き絞るアーチャーへ、火の砲弾を2発ぶつける。


「弓は貰うぞ!」


2本とも弓を掴むと、人間に戻る。

矢は持っていない。ついさっき燃やし尽くしてしまったらしい。

先程剣を預けていたアントルの首に、ドロップアイテムである『ゴブリンの弓』の弦を引っ掛け、弓を回転させる。

流石に弦の方が耐えきれなかったようで、木がしなり、へし折れてしまった。


続けざまに、フラッシュで敵の目を眩ませ、アントルの少し曲がった首を強引にこちらに振り向かせる。


アントルの背中に乗っていた俺は、刺してあるロングソードを引き抜いて、明後日の方向へ飛ばす。

スライムの魔石に突き刺さり、剣が軽快な音を立てて、地下の黒い床に寝転がる。


残りのヤツらもリズムよく、命を奪い去ってゆく。


そして、全てを殲滅する。

〔レベルアップ:Lv35になりました。〕


さて先に進もう。

……To be continued

次回予告

イヴです。

次回はいよいよ、さらに深みへと向かっていきます。

それにしても、今回のクエイフ様かっこよかったですね!

流れるように魔法を撃ったと思ったら、剣を振り回して…。どのタイミングで、ジョブチェンジをしたのか見えませんでしたよ!


次回

三階層深部

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