表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
End  作者: 平光翠
第2.5階層ピースの幕間
36/200

第36話 塔での幕間

体が軽い。

今までにない感覚!


速い!異常なまでに!速すぎる!


「Lv2スライム4、ゴブリン6。ゴブメイ2。」


右手に持った小刀で、アントルの首に浅く傷をつける。

師匠のジョブ【エンチャンター】により、毒の付与されていた小刀は、一瞬遅れながらアントルに膝をつかせる。

倒れた敵の頭を踏み潰しながら、リノリウムの床を駆け抜ける。


ここは2階層

あの研究者の顔がチラつく度に、ナイフを振り回しては、頭の中からかき消す。


特殊インベントリに設定してある壊れかけの大剣に持ち替え、近くのゴブリンを両断する。


もっと!速く!あの人のように!


「カークス伏せろ!」

前傾姿勢のまま、駆け抜けていると、ふいにあの人の声が聞こえる。

少し足に力を入れるだけで、前転の要領で転がってゆく。

体勢を整え、両肩を床に打ち付けながら3回転ほどすると、その上をスライムが通りすぎる。


「【ファイアボール】」


空中を先の自分と同じようなスピードで飛んでゆくスライムを、寸分違わずに狙撃する師匠。


僕は起き上がることなく、じっとしている。

当然ながら、ゴブリンたちは、僕を取り囲もうと、群がってくる。


「【八方剣山】ッ!!」


予想通りに僕の仕掛けた罠に嵌ったゴブリン共は、腹や頭、足に腰、その他様々な箇所にナイフが刺さったまま、叫び出す。


愛用のロングソードを取り出し、生きている奴らにトドメを刺すと、師匠の方も終わったらしい。


いや、すぐに追加の敵が来たようだ。

それもそのはず、今僕達がいるのは、ボス部屋の一歩手前である。


「運が悪いな。」

「師匠、『酔い』の方は大丈夫ですか?」

【ウォリアー】【エンチャンター】【ウィザード】と、次々にジョブチェンジをしたので、師匠の顔色はかなり悪い。


「大丈夫だろ。まぁ、魔石は全部使っちまうかもな。」


そう言うと、インベントリから魔石を取り出し、足元に転がす。1番大きなものを右手に掴み、左手を接近してくる敵に向ける。

「火よ、暴走せよ。

炎よ、尽き果てろ。

【ボムラ】ッ!」


師匠が詠唱したのは、中級魔法。もちろんレベルが低いので詠唱短略は出来なかったようだけど、やはり、あの人は強い。

足元に転がるいくつもの魔石は、燃えるように赤く輝くと、すぐにその光を失う。

それは、魔石が魔力を肩代わりしたことを示している。


真っ直ぐに打ち出された火炎の球体は、先頭を歩いていたアントルの群れに直撃し、形を変える。



「やべ、近すぎた…。つか、魔力切れで動けねぇ!」


助けに行くにも間に合わない。というか、自分自身すら危うい状況…!

どうしようもないと頭を抱えている間にも、爆発の熱量は、間近に迫ってきている。




「……はぁ、私の好きな人は世話が焼ける。【カモフラージュ】。……カークス君もこっちきた方がいいよ。」


突如、師匠に覆いかぶさるように現れた女性は、僕を手招きすると、透明な布を被せる。


それは、魔法で作られたもののようで、後で師匠に聞くと

『あれは、ハンターの切り札だ。【カモフラージュ】って魔法で、あの布の中にいる間はモンスターからは、見つからないし、よほど強い上位職じゃないと見破れない。それに1度だけありとあらゆる攻撃を無効化する効果がある。』

との事だ。


「レイ!助けに来てくれたのか!サンキュー!」

「…偉い?褒めて…。あと抱いて…」

「いやー、抱いてはやらんが愛してるぞ!」


師匠はレイさんをあしらうように頭を撫でる。

なんとも微笑ましいことだ。


「クエイフ、ここは塔の中、油断しないでね。」

「分かってる。」

「それと、夜ご飯はスパゲティだって。」


なるほど、ならば早めに帰らなきゃいけないな。

「もう少し、素材集めるか…。」

魔力回復ポーションを飲み、師匠は立ち上がる。


さて、先に進むとしよう。

▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪



〈ヘーパイストス武具店〉

レイさんに助けて貰ってから、3回ほどLv2のスライムと交戦し、キリのいいところで、ヘーパイストスさんの武器屋へ向かう。

ドアを開けると、相変わらずの心地いいような鉄の匂いが漂い、へばってしまうような暑さの店内では、巨人族の青年がヘーパイストスさんに迫っていた。






「お邪魔しました…。」

ゆっくりと扉を閉めた。

「師匠。今度はスパゲティじゃなくてカルボナーラが食べたいですねー。」

「ははは、カークス。俺じゃなくてイヴに頼めよ。」


「おいおい!違うぞ!!何か勘違いをしてないか!?」


ヘーパイストスさんが慌てた様子でこちらに向かってくる。

「これはアレだぞ?アレがアレしてアレのやつが……」

「あー、師匠黙っててください!僕が説明します!」


2人の話を聞き終え、要約すると

「つまり、これからもレイの装備はキュロクスが作るんだな?」

「だから、僕はまだ素人です!そんな大役出来ませんよ!」

「お前、俺の弟子になってから何年経ってんだよ。出来の悪い見習いでも、刀の一本や二本、打ってもおかしくないからな。そもそもお前は、アレだろう。優秀な方なんだからもっと早くから炉を貸してやってもよかった!」


つまり、その小さな言い争いから、巨人族のキュロクスさんは、ヘーパイストスさんを押し倒すことになってしまったわけか。

まぁ、さして興味がある訳でもないので、訳の分からない師弟争いに巻き込まれる前に、要件を済ませてしまおうと、師匠は話を進める。


「なぁ、素材持ってきたから、武具を作ってくれよ。」

「ああ、それは任せろ。キュロクス、仕事だ。」

「師匠!1本だけ、打たせてください。カークスさんの大剣。僕が作りたいです。」

「勝手にアレしろ。」


太陽も傾いてきたし、明日は作ってもらった武器を紹介することになりそうだ。


……To be continued

次回予告

どうも、キュロクスです。

レイさんが使う短剣の素材を考えてたら、スライムの体液を沸騰させてました。

師匠、冷蔵庫にモンスターの水液を入れるのやめてください。水道水と間違えて煮沸消毒しようとしちゃったじゃないですか!


次回は、『さす師匠』の話になる予定です!

次回!

装備の進化

…サ○エさんみたいな次回予告してんじゃねぇよ。

師匠、それこそ、口癖でぼかしましょうよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ