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End  作者: 平光翠
第二階層 アザピース研究所
33/200

第33話 狂科学者の研究室

しばらくエタってましたが、納得のいく続きをかけたので近いうちに投稿します。

〈End【二階層 アザピース研究所】〉


ひっそりと、薄暗い部屋に女の声が響く。


「これ…じゃない。これ…でもない。これ…後で読もう。これ?なんだエロ本か…。クソッタレめ!ゲームなら一発で出てくるのに…!」


「魔王。探す。何?」

「『魔王様が探してるのはなんですか?』と言ってる。」


書類や本を一瞥しては、空に放り投げる魔王は、その質問に答えずに、作業を続ける。


「……あった!『100度目の実験レポート』…!」

「それがなんだと言うんだ?」


魔王はいつものように、『ヒヒッ!』と、凄惨な笑みを浮かべる。


「これは、ゲームの話なんだけど…。」

そう言って、彼女はその狂気なまでに整った口を開く。


「ゲームの中のアザピース研究所には、アザピース博士がモンスターを作ったという記録はなかった。しかし、一つだけあったのが、〈Lv2〉のスライムを作ったという記録だけ…。」


「でも、実際はもっと沢山の記録が残ってた。元々はひとつの書類として纏められてたんでしょうけど、バラバラになった。それが100枚。」


「なんで100枚って分かるんだ?」

「シャドモルス。下。」


シャドモルスは、アバドンの指さす方向を見る。指の先には、魔王が持っているのとは別の66度目の実験レポートがある。

そして、下の方に書かれているのは、『66/100』という、ページ数を示す文字がたしかに印字されていた。


「なるほど…で、その100枚目には何があるんだ?というか、そもそも、お前の見立て…では無いのか。ゲームのストーリー的にいえば、ナントカ博士ってのは自分で作った、モンスターに飲み込まれて一体化したんじゃねぇのか?どうやって、続きを書いてた?」


「その秘密はここに隠されてるのさ。ヒヒッ!」


魔王が書類を投げ渡すと、アバドンがそれを受け取り、一瞬見て、シャドモルスに渡す。


「…あ?読めって?めんどくせぇな。」


舌打ちをしながら、その書類を読んでゆく。


『100度目の実験。私が1番作りたかったモンスター『アブ・ホース』についての記録を残しておく。このモンスター…いや、この生命体は、メスのエルフを捕まえ、子供を産ませることから始まる。

最初は動物の精子を使ったが、動物しか生まれなかった。それらの精子に魔力を寄生させてみたが、今度は使い物にならなくなった。─人間ではどうだろう。好奇心ついでにやってみたが、成功だった!

ただのハーフエルフを作るのなんてつまらない。人間の精子に魔力を寄生させ、それを直接エルフに受精させてみた。

すると、普通の人間よりも、いや!()()()()()()よりも魔力の高い生物が生まれた。

しかし、そのガキには脱走されてしまった。いや、別に記録は取ってあるから、あのガキそのものはいらないのだが…。

ちなみに、今まで作ってきたエルフとのハーフの獣共は、交配を重ねるうちに、魔力が薄まり、それに反比例して、感覚が鋭くなってきた。

人の精子を喰わせてみたら、面白いことになりそうだ。』


「これがどうかしたのか?」


彼は、魔王に見えないように()()()()舌打ちをする。

悪趣味な博士だと、声を高らかにして言いたいが、目の前の女はそれを許さないだろう。


(こんなくだらない生き物を()()やがって…。地獄に堕ちろ!)


彼は、ひっそりと友人(アバドン)に頼んで、博士を奈落に突き落とすことを決める。


「ちなみに、アブホースという名前は、自分の名前からだけでなく、母体であるエルフの『アヴ』からも取っているらしいよ?ヒヒッ。因果だねぇ〜。ヒヒッ!ヒヒヒッ!」



▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪

〈End【同階層・狂科学者の実験室】〉


この階層のボスは、アザピース博士と博士の作った人造生命体のケルベロスのようなもの。

博士の方は魔法瓶を使ってくる。中身は、初級の属性呪文と、状態異常系。回復系の瓶は使わない。

弱点属性は風。

ケルベロスは、とても高い再生能力を持っていて、首を吹っ飛ばしても再生する。

しかし、博士の命令にしか従わず、『自分の意思』というものを持っていない。そのため、博士を倒すと、自己再生すらやめてしまう。

周りに『ビット』と言う機械が浮いてて、遠距離攻撃を阻止してくる。弓矢は殆ど効かない。


「言っておかなきゃならない特徴はこのぐらいだな。」


2人が頷くのを見て、改めて武器を構え扉に手をかける。


部屋の扉を開けると、既にアザピースは俺たちを待っていた。

自分で造ったケルベロスの口の中から、こちらの様子を伺っている。

しかし、すぐにラスボスのような自己紹介を始める。


「よく来たな。知ってると思うがここは私の研究所だ。そして、コイツは私が人生をかけて作り上げた最高傑作『ケルちゃん6号』だ。」


「……名前ダサッ。」

こら、レイ。ホントの事言わない。


「なんだと小娘!お前もそうやって…!私を否定するのか。この能無しがッ!」


そういや、この博士過去になんかあったらしいけど、実際に何があったのかまでは明かされてないんだよな。

ま、どーでもいいから、サクッと倒して次の階層に行くけどね。


「二重詠唱!【ストーム】&【ダブルスピード】」

「ありがと、イヴ姉。【ストームカッター】!」


イヴの魔法により、ビットたちは薙ぎ払われ、間一髪避けたやつも、己の習性により、その魔法(ストーム)を打ち消そうと群がってゆく。


レイは邪魔者がいなくなったためか、のびのびと攻撃を開始する。

しかし、2回ほど斬りつけると、博士はケルベロスの喉の方へ引っ込んでいってしまう。

閉じようとする獣の口は攻撃硬直で動くことの出来ないレイを噛み砕こうと降ろされる。


「させるか!【ガーディアンキューブ】」

ガーディアンの大技のひとつ、【ガーディアンキューブ】。

これは、自分の防御力を0にする代わりにその全てを10倍して味方に譲渡する技である。

もちろん、効果時間が切れれば防御力は元に戻るが、それまでは、俺は無防備である。


レイはケルベロスの喉を切り裂き、血塗れながらも、口の中から逃げ出す。


「……うわ。ほんとに再生してる…。結構深めに斬ったのに…」


彼女に笑いかけようと、少し足を前に出した瞬間─


「жрцъ!」


ピキュンッ!という、光線が放たれる音と、肉のやけ焦げるような異臭。右足が燃えているかのような熱を帯び、一拍遅れてきた激痛によりのたうち回る。


イヴの放ったストームからは少し遠いところのビットが、煙を上げながら、2発目の光線を撃ち出す。


倒れた姿勢のまま、ゴロゴロと転がるようにその光線を避ける。すぐ隣には親指の爪ほどの大きさの穴が空いており、黒い煙がモワモワとあがっている。


ふと自分の足を見れば、煙の代わりに血が吹き出しており、トンネルのように貫通してしまっていた。

どうやら、骨も貫かれたらしい。


さらに、倒れた時に左足に負荷をかけすぎたのか、左のアキレス腱も断裂しているような気がする。


「クエイフ様!【ハイ・ヒール】」

「クエイフ!魔法瓶(ハイ・ヒール)


イヴの魔法は、彼女が焦りすぎているのか、魔法の射程距離外からであったため届かない。

レイの瓶は、ビットによって、撃ち落とされてしまった。


こちらに向かって必死な顔で瓶を投げたレイの後ろには、博士がケルベロスの口の中から、燃え盛るような魔法瓶を投げようとしている。

おそらく中身は【ファイア】だろう。


「おっと…。ヒーローは遅れてやってくるものだけど、少しおそすぎたか?どう思う、()()()()?」

「うん。かもね。()()()()()


「【裂斬・大首両斬(おおくびりょうざん)】!」

「『聖女よ、彼の者は主に仕えるものである。我は、其を信じるものなり、主よ、今一度奇跡を起こしその命を救いたまえ。』【ハイ・ヒール】」


青年の声と少女の声が入り混じる。

突如として現れた大剣は、ケルベロスの首を綺麗に両断し、流れるような声で詠唱された魔法は、足の傷を完璧に修復してゆく。


「カークスにキュレー!助けに来てくれたのか!」

「当たり前じゃないですか。()()!」


カークスが大剣をインベントリに収納し、こちらに向かってくる。


「まて!そいつは首を飛ばした程度じゃ……」

俺が言い終わる前に再生しきったケルベロスは、カークスを飲み込もうと口を開き近づいてくる。


「お兄ちゃん、油断しない!【ボム】」

再生したはずのケルベロスの頭はまた、吹っ飛ばされて、今度は爆煙混じりの視界になる。


「カークス!あの博士の方をぶっ殺さなきゃ、あの犬野郎はいつまでも再生し続けるぞ!」


「博士?お兄ちゃん…もしかして」

「師匠、博士の名前って?」


なんだか無駄にシリアスな雰囲気を演出しながら、カークスが聞いてくる。


「博士の名前?確か…アザピースだったと思うが…?」


先程もそう名乗っていたし、ゲームでの設定もそうなっている。


「あの野郎…!」


2人はそれをきくと、何をどうしたのか、カークスがケルベロスの口の中に入り、キュレーが小さな声で魔法を唱えたと思ったら、次の瞬間には博士が真っ二つにきられており即死していた。


え?また、俺とどめさしてなくない?


二階層アザピース研究所攻略完了……To be E()n()d()

三階層ネザートロワーム攻略開始

……To be continued


次回予告─


ヘタレで情けないクエイフだ。

いつもいつも美味しいところを微妙に取られるのはなんなんだろうな?

まったくもって歯がゆい!


次回─カークス&キュレー


このまま、主役を取られたりしないよな?

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