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End  作者: 平光翠
第二階層 アザピース研究所
32/200

第32話 Lv2

寝室から出て、リビングに向かうと、目玉焼きの焼けるいい匂いが漂ってくる。


「お!うまそー。レイ起こしてくるよ。」

「あ、レイなら私の……


元・レイの部屋であり、現・ただの空き部屋のドアを開けると、鍵が閉まっていた。


おかしいな?イヴの痣は消えていたから、レイは一人で寝たはずなのに……?


(着替え中か?ラッキー。覗いてやれ!)


〔意志を確認:【ジョブチェンジ〈ガーディアン→シーフ〉】〕


「【鍵開け】」


本来、部屋の鍵を開けるなんてできないが、この家の持ち主は俺だ。そのため、鍵を閉めて、その鍵を持っているのがレイだとしても、持ち主である俺は、針金1本でこの家の全てのドアを開けることが出来る。


「レイ!寝てんのか!お前はもうどれだけ寝ても成長しないZe!そのちっぱいで諦めろ!」


…………シーン……。


「あの、クエイフ様…。レイは昨日私の部屋で一緒に寝ましたよ…?」


恥ずかしい…。




「クエイフ…馬鹿じゃないの?」

「ホンッッットに、その通りでございます!」


朝食の時に、レイにその事をいじられ、イヴの乾いた笑いが、心に染みた…。



▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪

〈End【2階層 アザピース研究所】〉


「イヴ、下がれ!前に出すぎだ。」

「すみません!」


アントルと呼ばれる、アリのようなモンスターは、牙をギチギチと鳴らし、攻撃のために前に出ていたイヴに襲いかかる。


「させるか!【ガードカウンター】」


防御する上、盾を少し跳ねさせその攻撃を反射する。


「すみません!大丈夫ですか?【ヒール】」

「こんなんダメージに入らないよ。」


彼女は、気絶(スタン)したアントルから遠ざかり、こちらによってきて、ヒールをかけてくれる。

イヴの優しげな金髪が、顔にかかりくすぐったい。

つか、すげーいい匂い!よくある話だけど、同じシャンプー使ってるのにいい匂いってやつじゃん!ラノベあるあるじゃん!


「塔でこんないい思いするとはなぁ…。」

「?」


イヴの金髪が離れていき、その端整で芸術的な顔は遠ざかってしまう。


「……ねぇ!私一人で攻撃して、一人で解体したんだけど…?何イチャついてんの?クエイフは私のだから!イヴ姉には渡さないから!」

「料理も家事もろくに出来ないのに、()()()()()()の奥さんを名乗るの?」

「……なっ!うー……夜は甘えん坊のくせに!」

「ちょっと待って、『夜は甘えん坊』について詳しく、具体的に頼む。」

「「クエイフ(さん)は黙ってて!」」


……とりあえず、喧嘩はやめてー。




「クエイフさんは、私の方が好きに決まってます!私の方がおっぱいも大きいですから!」

「…クエイフはロリコンだから、私の方が好きだもん。」

「どっちも愛してるよこの野郎!」


そんなふうにふざけあっていると、突如として空気がヒリヒリしてくる。

「匂いはスライム。音も…。でも、感じたことの無い雰囲気と威圧感(プレッシャー)…。」


〔スライムのような独特な水音が、次第に大きくなってくる。明らかにスライムのものと思われるが、いつものスライムとは違った威圧感と殺気が漂ってくる。〕


「шъцфт!」

プルンとした質感と、気持ち悪い光沢をまとって、現れたのは、スライムであった。


「ыцоухфлплжсруопц!【スラ・ストライク】ッ!」

…早いッ!


衝撃吸収(ショックアブソーバー)の盾!」

「補助します!【ガードアップ】」


ガゴン!

と、怖くなるぐらいの大きな音と共に、とんでもない衝撃が加わる。


……ぐッ!今まで受けてきたどの攻撃よりも重い。


「クエイフ!」

「大丈夫!こっちは問題ない。」

二重詠唱(デュアルキャスト)【ボム】&【ヒール】」


イヴは、もう爆破魔法を覚えたらしい。さすがと言うしかない。


「【ホーミングアロー】」

「レイ、合わせて!【マジックエンチャント:パラライズ】」


レイの放った弓矢に、イヴの麻痺魔法が付与され、スライムに向かっていく。

その全てが直撃し、スライムは動きを止める。

「【ガーディアンハンマー】ッ!」


すかさず、俺が盾を叩きつけると、スライムは動かなくなる。


ふむ、なんとかなったようだ。


その後、しばらく探索すると、小さな部屋を見つける。

そこには、山盛りの書類が積まれており、チラリと見える部分には、()()()()()スライムについても書かれていた。


『我々の研究は、モンスターの強さをレベルアップさせようというものである。手始めにスライムで実験してみることにした。』


『最初の実験は、スライムが別のモンスターになってしまった。動き方が全く変わってしまっているため、別種と呼んだ方がいいだろう。コイツは三階層に放り込んでおく。』


『4度目の実験は、弱体化してしまった。しかし、分裂能力が高まり、どんどん増えてゆく。1階層には、動物ぐらいしか居ないから、そこに放置しておけばいいだろう。』


『12度目の実験である。すこし、活性炭を入れすぎてしまったようだ。とても熱くなり、火の砲弾を撃つように進化した。が、私が作りたいのはこういうものでは無い。関係ないが、入れる物質を変えれば、冷たいスライムも作れるのではないだろうか?』

(クエイフの豆知識!活性炭は、ホッカイロの原料だぞ?)


『13度目の実験、前の実験を活かし、尿素と硝安を入れて、水とスライムを混ぜてみた。普通のスライムよりも、薄い青色で、水の砲弾を吐くスライムが出来上がった。私が作りたいのはこれでは無いのに!これが研究者の性か…』

(尿素と硝安に水を混ぜると、周りの熱を奪い、冷たく感じるぞ!)


『16度目の実験、スライムから離れ、新種のモンスターを作ってみた。毎日のように汚水を加工する作業には飽きたのだ。ゴブリンに弓を学ばせてみたら、あっさり使いこなし始めた。他の武器も使わせてみよう。』


『20度目の実験は、前に知り合いの博士が作った『巨大化光線』を試してみる。というか、完全に別の実験を始めてしまったな…。アリを巨大化させたら、気持ち悪いことになった…。』


『24度目の実験、スライムとは関係ないが面白いモンスターを作ることが出来た!これで、私を塔に閉じ込めた人間共に復讐できる!』


『34度目のож、ついに当初の目的であったスライムю作ることが出来た!これを『Lv2』と呼ぶことにする。もっと強いスライムを作らねば…。』


『37度目уож、чътпфъкрэпоцрзЯдЬすることになっж。зкであいьつсчみかфжёмзаЫきる。шццыпчрчмччмчъклчИцхтпрмохкъюところで、昨日の私はなぜ電気を消したのだろう?暗くて良く見えないな…。』


『шчолппък!шцуыпцъоцмчрыуъощоплнупйёррижт』


『助けて…』



古びた日記のようなものには、最後にそれだけが書かれ、それ以降はなんの記録もなかった。


先程の異常に強いスライムは、間違いなくコイツが作ったものだろう。


書類の一番下に『アザピース』というサインを発見する。

ゲームにも出てきたマッドサイエンティストだ。

と言っても、名前しか出てこないのだが…。


「ヤバイものを見たが、探索を続けるぞ」


……To be continued

次回予告


久々のクエイフだ。

次回は、早くも2階層突破!の予定だ。

さて、本当に攻略できるのか?


次回

狂科学者の研究室


小鬼獣の小部屋と、韻を踏んでいるつもりらしいが、どうなんだ?

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