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End  作者: 平光翠
第二階層 アザピース研究所
29/200

第29話魔王の襲撃!

補足のコーナー

種族や系統について─


種族─そのモンスターのルーツや成り立ちによって決まる。

例えば、汚水が変化したスライムは変化種。

人のような獣のゴブリンは亜人種。

蟻が、ほかの種族と混ざったアントルは混合種

etc……


系統─種族の中でも繁殖方法や食べるものによってわけられる。

なんでも食べるスライムは分裂して増えるのでスライム系

大気中の魔力をたべるファイアエレメント(まだ出てこないモンスターです。)は、エレメント系

etc……

〈End二階層【アザピース研究所】〉

薄暗い研究室の小部屋で、ハスキーな女の声が響く。


「ヒヒッ!クエイフ〜♥まさかあの程度でくたばったりはしないと思ってたけど…すぐに反省して、自分を強くするなんてねぇ〜。流石だよ〜♥」


彼女の影─シャドモルスは、魔王の甘えるような猫なで声に、()()()()眉をひそめる。

すると、恋焦がれるように体をくねくねと動かす魔王の後ろから、シャドモルスを避けるようにして、歩いてくる2人の男女がいた。


「ねぇねぇ、魔王さん、そのクエイフってやつの所のレイちゃん、ホントにアタシが貰っていいの?ねぇねぇ」

「やめろ。ねぇねぇ。言うな。」

「……恐らく、『ねぇねぇと言うのをやめろ。』と言っているんじゃないか…?」


男の名はアバドン。今でこそ、青年のような(たくま)しい体つきの人のような姿であるものの、本来の姿は、ゲームにおいて最下層やその1つ上の難易度を誇る最高難易度の階層、【アトラク・ヘル=ナクア】に出現するラスボスそのものであった。

彼は本来【アトラク・ヘル=ナクア】にいるものだが、魔王たる彼女が、彼を()()()()()のである。


そして、女の方は、アスモデウス。

彼女もまた、魔王によって造られている。


人に化けた時の容姿は、豊満でスタイルの良い体つきであり、少し動けば見えてしまうのではないかと言うほど色気に満ちた、格好をしている。


しかし、その真の姿は、ひどく恐怖的なものであり、牛の頭と羊の頭を混ぜたような頭部に、そのまま人の顔を貼り付けたような醜悪な頭をしており、体は大きさこそあるものの人らしくはある。しかし、その足は、ダチョウのような足で、正しく狂気と言うにふさわしかった。


そして何より、彼女は同性愛者(レズビアン)であり、小児性愛(ロリコン)でもある。

現在の彼女のお気に入りは、どうやらレイであるらしい。


なお、アバドンは、ノーマルである。(もちろん、地獄や深淵を支配する悪魔なので、好きだと思った女性を食い殺したいとは思っている。)

さらに彼は、どこかのヘタレ(クエイフ)とは違い、好きな人は明確に好きだと伝える主義である。


「魔王。好き。」

「んー?そりゃボクは生みの親だからね。ヒヒッ!嫌われてちゃ世話ないよ。」

「そういう意味じゃないと思うぞ…?」

と、魔王に振られ

「アスモデウス。好き。」

「ねぇねぇ、アンタの男らしい顔は好きだけど、アタシ、レズだし、ロリコンだよ?ほんとにいいの?ねぇねぇ」

「うん。好き。」

「……ねぇねぇ。アンタのその、途切れ途切れの話し方キライなの。つか、男とかムリ!わかった?ねぇねぇ」

「……アバドン。後でなにか奢るよ。」

と、アスモデウスにも振られたのである。


「失恋。苦い。コーヒー。」

「ああ、失恋の味はコーヒーより苦いよな。」

そう言って2人は、またコーヒーをすする。

(べつにシャドモルスは失恋してないが…)


「ヒヒッ!おいおい。くだらない回想なんかやってないで、こいつを構ってやってくれないか?」


魔王は、自分の体を引き裂きながら、モンスターを創造してゆく。

否、自身を()()し、その反動で産み上がっているのである。


「俺達がお守りをするのか?」

「ねぇねぇ。やーよ、アタシ。お守りなんて絶対やだ。可愛い女の子ならいいけど、ねぇねぇ、ゲテモノモンスターじゃムリ!OK?ねぇねぇ」

「めんどくさい。やる。だめ。」

「あ、ああ。『面倒臭いからやりたくない。人にやらせるのはダメだと思う』って言ってる。」


何故かアバドンの不可解な単語を、意味のある文章として理解出来るシャドモルスが、3人の視線を受け翻訳する。

アバドンは、分かってもらえて嬉しいとばかりに、ウンウンと満足気に頷き、女二人は、分かりにくい話し方をするアバドンに舌打ちをする。


「お守りめんどいし、クエイフに相手してもらおう♥ヒヒッ!ヒヒヒッ!」



▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪▪


塔の二階層、入口近くで、俺は盾をインベントリに収納しながら、イヴとレイに報告をする。

「えーと、実験の結果、こうなりました。」


「俺は、基本どのモンスターにでもなれる。ただし、スキルの取得条件を満たしてないから、スライムと、ゴブリンしかなれないけどな。」

正確に言えば、スライム、アクアスライム、クリムゾンスライム、ゴブリン。この四種類である。

「次に、そのジョブの最中は、種族が違えば攻撃されない。」

スライムになっている時は、ゴブリンに攻撃されなかった。(攻撃したら反撃されたけど…)

ゴブリンの時はスライムにもアクアにもクリムゾンにも、されなかった。

しかし、スライムの時はスライム系には正体がバレるようで、普通に攻撃された。

ゴブリンの時も、ゴブリンアーチャーや、ゴブリンメイジなどには攻撃された。

「まだ詳細がわからんから、なんとも言えないが、俺の見立てでは、系統が関係してると思う。スライム系には、スライムの擬態がバレるし、ゴブリン系には、ゴブリンの擬態がバレる。恐らくアントル系には、アントルの擬態がバレるだろう。」


2人は黙って頷いている。

眠たそうにして話を聞いているのかどうか分からないレイはともかく、イヴが、理解しているということは、俺の説明でバッチリだろう。

因みに、レイの方も、聞いてるらしく、後で『俺がどんな話したか覚えてる?』と聞くと、しっかり答える。


すると、レイは突如として首をあげ濁った目を見開いて、

「なんか…来る!」

と叫ぶ。


彼女の言うとおり、尋常じゃない気配が、辺りに広がっていく。

ほのかに聞こえる羽の音…。

「ガーゴイルか!」


ガーゴイルとは、翼を持った下級悪魔であり、それなりに強い部類に入る。と言っても、下級であるため、大した強さではない。

「普通は4階層か6階層に出るやつだろ…」

そう、ガーゴイルは4階層【死教会】か、6階層【蒼き聖堂】に出てくるようなモンスターであり、決して2階層で登場するなんてことは無い。


つまり…

「人為的なモンスターという訳ですね。」

「ああ、そうなるな。」

頭の回転の早いイヴは、杖を構えガーゴイルを睨みながら、俺の言葉の続きをレイにもわかりやすく話す。


レイの方は、早くも戦闘態勢を整えて、弓矢を打っている。

やはり、短剣では、空を飛んでいるアイツには不利だと彼女なりに考えたのだろう。


さて、どうするこの状況…!


さらに、俺の腕が吹っ飛ばされた時に、アーチャーゴブリンの後ろにいた女が、かなり遠いところに立って、いやらしい笑みを浮かべていた。

この様子だとイヴとレイは気づいていない。

このことは、2人には言えないな…


……To be continued

次回予告


ヒヒッ!どーだい。ボクの作ったガーゴイルは…。

今回は新キャラのせいで、ボクのキャラが薄くなったからなぁ…。

大体あの露出狂!どーしてボクが造ったのにボクを好きにならないんだ?まぁ、ボクにはクエイフがいるからいいか!


次回

ガーゴイル


さてと…次はどんなモンスターを作ろうかなぁ…。あ!そうだ。クエイフの得意なゴーレムなんてどうかなぁ…。ヒヒッ!

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