第23話 二階層アザピース研究所
休暇といった一週間はすぐに過ぎ去り、今日から新たなるステージへ向かう。
朝刊には、俺達がホブゴブリンを倒したことにより、一階層を〈人類未到達区域〉から外すことを政府が決定したことを大きく報道している。
メディアのいらない活躍によって、そこそこ名は売れたが、街で時たま声をかけられる程度で、特に変わったことはない。
普通の人たちは、それだけEndが怖いのかもしれないが…。
「イヴ、レイ、準備出来た?」
「OK」
「はい、戸締りも終えました。」
塔に向かい歩き出すと、
「え?あの瞬間移動で行くんじゃないの?」
…そうでした。
では改めて、
「転移!〈End正門〉」
転移した先では、何人かの冒険者がEndの前で準備の最終確認をしていた。
「…クエイフ、なんで正門に来たの?小鬼獣の小部屋じゃないの?」
ホブゴブリンと一緒に戦ったイヴとレイも、【塔内転移】は使える。それがゆえに、2人は転移先の候補も知っているため、純粋な疑問をぶつけてくる。
「ああ、いや、一週間も休んだら、感覚掴めなくなってきてるでしょ?だから一応。3時間ぐらいはレベリング兼ねて、体慣らしておかなきゃね。」
ちなみに、2人に言ったこの理由は、半分嘘だ。
ゲームにおいて二階層の適正レベルは15。
それに対し俺らは11。命のやり取りということもあり、安全マージンを考えると、20、最低でも18ほどまでレベルを上げておきたい。
つまりは、体慣らしなんていうのは全くの建前で、本来の目的は、レベリングである。
そして、きっかり三時間後…
「クエイフー。大体3時間たった…。二階層行こう?」
「二人ともレベルどのくらい?」
所有権があるせいで、自分のステータス欄を見る時一緒に見えるが、こう言ったコミュニーケーションに憧れがあるので、あえて聞いてみる。
「私は21です。」
「20。あとすこしで21。」
俺のレベルも23なので安全マージンは十分にとってあるだろう。運良くゴブリンばかりが現れたので、簡単にレベルが上がったし、お互いの連携も確認出来た。
二階層への階段を登っていると、先程までの洞窟ならではの石や岩のような地面から、整備されたコンクリートのような地面に変わっていく。
〈End二階層【アザピース研究所】〉
アザピース研究所は、ゲームの中の話になってしまうが、両親の友人が住んでいた研究所である。
そこでは、非合法の研究や魔物の錬成などなど、人類の為にならないような研究が進められており、そこかしこの小部屋に、それらをほのめかすような研究レポートが残されていた。
更には、両親(母親)がその研究に加担していたという書類まで見つかる。(シリーズによってはカットされてる。)
ここの敵は、新しくアントルという、アリのような魔物が出てくる。混合種であり、今までの敵とはまた違った対策を取らなくてはならない。
他には、弓矢を使うゴブリンアーチャーや、魔法を使うゴブリンメイジなんていう、ゴブリンの亜種が登場する。もちろん、今までの奴らも少しは出てくる。
詳しい話はのちのち分かるだろう。
「アントルは、体の皮膚がすごく固くて、普通に斬っただけだとダメージが入らない。でも、刺突系の武器に弱いから、弓矢を打つ時、貫くことを意識して打ってくれ。魔法は風が有効だったはず。」
「…わかった。」
「分かりました。」
「ゴブリンアーチャーとかゴブリンメイジは、麻痺と右肩が弱点で、ゴブリンと変わらない。ホブゴブリンと違って避けたりはしないから、普通に攻撃して大丈夫。」
「「…了解」しました。」
新しく登場するモンスターへの対策を一通り話していると、近くでモンスターの反応がする。
「1ゴブ…終わり」
これは、レイに教えた、モンスターの伝達方法だ。
この場合、『一体のゴブリンが接近中、それ以外は来てない。報告終わり』という意味である。
鼻のいい彼女に、伝達係を任せている。
と言っても、俺は何となく予想がついているし、イヴに教えるだけなのだが、イヴも、『魔力の違い』で、なんとなく察しがついているらしい。
なので、どちらかと言えば、確認のために言ってるだけだ。
「落とします!【ウォーター】」
イヴの言う通り、ほんの少し高い所からこちらを見下ろしていたゴブリンは、突如として後ろから現れた水流に流され、こちらに落ちてくる。
「イヴ姉、ナイス!」
ヒュッ!と風を切り裂くような音を立て、レイの鋭い矢はゴブリンの右肩に突き刺さる。
イヴが落としたタイミングと、レイの矢を放ったタイミングが絶妙に噛み合わさり、その一撃で絶命する。
俺たちはレベルが上がっていることもあり、それなりに余裕だった。
しかし、そんな傲慢な考えこそが、あの事態を引き起こしたのだろう。
倒した後の事後処理も終えて、散歩でもするように歩いていると、またモンスターの気配がする。
「ゴブリンアーチャーか…?」
「ゴブッ!グッ……ハァ!」
弓の弦を引くような音がすると同時に、少し前を歩いていたレイは腹を撃ち抜かれ血を流す。
「な!?クソ!」
何が起きた!と叫ぶよりも前に、懐から魔法瓶を取り出す。
もちろん、こんな時に水分補給という訳ではなく、特別製の魔法の入ったガラス瓶である。
前も説明した通り、魔法を込めておき、瓶を割ることで、詠唱もなく魔力消費もなく、込めておいた魔法を使える特殊な瓶だ。
レイに向けて、それを放り投げる。
中身は、イヴが詠唱付きで唱えた【ハイ・ヒール】だ。
もちろん、チートによるものなので、唱えてもらったその日は一人で寝ていた。
しかし、そのビンを投げたのはいいが、異常なほど左手が軽くなる。
違和感を覚え、レイを見ていた目を、自分の左手に向ける。
しかし、何も無い。
俺の肘から先には、何も無かった。
「ぇ!?あ…」
意識は朦朧とし始める。
生きることを諦めた目は、最後に、俺たちをこんな目にあわせた敵を見る。
(ゴブリンアーチャー…と、あの女は誰だ?影が異常にでかいあの女は?どこかで見覚えが… )
もし、あの時の傲慢さが、少しでも別なものであったなら、こうはならなかったのか?
そんな後悔ばかりで、先程の一瞬の思考は消し飛ぶ。
〔【勇気】のスキルを獲得しました。これにより『勇者』のジョブを解放しま………
謎の声をかき消すように、イヴの声が響く。
お前が無事でよかった…。
「【塔内転移】ッ!」
……To be continued
次回予告
カークスです。
えっと…クエイフさんは気を失っていて、レイさんは死んでしまっていて、イヴさんも2人の蘇生と回復に忙しいそうなので、代わりに僕が次回予告をします。
お兄ちゃーん。はやくー。お風呂入ろー
……こんな感じで、塔の中でもお風呂に入れるぐらいには強くしてもらったり、設備をもらったりしたので、クエイフさんにはぜひ生きてて欲しいです。
次回
油断は勇気へと
お兄ちゃーん!
今行くよー!




