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End  作者: 平光翠
プロローグ
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第2話 31作目攻略準備

2話目ですが、肝心の塔の中には入りません。というか、『End』の世界にも転生しません。

そこは、ついさっきまで見ていたゲームの画面より明るく眩く、その場所の姿を捉えることができなかった。


「ここは…なんなんだ…?」


立ち上がり手を動かしてみてもなにかに触れる様子がなく、どれだけ目を見開いても眩い光が目に入るだけで、手掛かりになるようなものはみえない。


自分の名前は覚えている。ゲームでよく使う名前も覚えてる。親の名前も『End』の親の名前も覚えてる。今の所、なにか重要なことを忘れている訳でもない。この記憶が正しければ、俺は俺だ。


これは所謂(いわゆる)異世界転生の一種なのだろうか?死んだ記憶はないが、何らかの理由で─一番可能性が高いのは不健康による急死─死んでしまい、転生することになった。


他の可能性としては、ただの誘拐。しかし、部屋に誰かが入ってきたとは思えないし、夜中に遊び歩いていたわけでもないのに、家の中にいた俺を狙う理由がない。


俺は記憶を辿る中でふと、メールのことを思い出した。


この不思議で奇妙な空間に居るのは『31作目のEnd』が原因なのだろうか…。だとしたらあの時のメールに書かれていた()()2()()のどちらかなのだろう。最初の攻略者なのか2番目なのかは知らないが、どちらにせよ『31作目』をプレイする条件を満たしていて、ゲームが始まるのかもしれない。


(いや、塔の中にこんなステージはなかったはずだ。まさか、31作目にして、新しいステージの追加か?)


もしここが『End』の中の新しいステージだとするなら、18作目以来の事だ。


「おやおや、必要のない考察をしている所悪いけど、答えを教えてしまってもいいかい?」


なんの気配も感じなかったのにも関わらず、最初からそこにいたかのように登場する人物に、俺は思わず後ずさりしながら驚く。


「私は、全知全能であり神をも統べる神『絶対神』。」


神と名乗った光の塊は、自らの後光をさらに強める。ただでさえ眩むような眩しさだった部屋は、目を閉じていても、眼球が焼かれるのではないかと言うほどの光を放つ。


「ようこそ、()()の『End』へ!今までの()()をあんなにも攻略してきた君達なら、この地獄さえも心地よく(はま)ってくれるだろう。詳しい話は、私とは別の神がしてくれる。全てはそちらに聞きたまえ。」


そこまで言うと、『絶対神』は大きく息を吸い、叫ぶような大声で、存在そのものを掻き消されてしまいそうな程の光を放ち、優しく語りかけてくる。


「その塔を完全攻略し、登り詰めろ!もう一度私に会う時には、神よりも面白い存在となっていることを期待して、頂上で待っているよ。あの両親と共にね。」


一転して、闇が視界を覆った。


そして、瞬間的な早さで、まるで、最初から暗闇に変わってなんかなかったかのように、光が戻る。


目の前には1人の老人が座っていた。


「よく来たな選ばれし者よ。お前には『勇気』を与えよう。勇者となり、魔王を打ち破った上で、絶対神が作ったあの忌々しい塔を攻略してくれ。願わくば、この儂に『絶対神』の座を…」


矢継ぎ早に言う老人に、俺は思わず混乱する。


「ちょっと待ってくれ。これは『End』だろ?魔王を倒すのは9作目だけだったはずだ!まさか、31作目もそうなのか?」


「あ、ああ。詳しい説明をしよう。」


31作目の塔を攻略するにあたり、いくつかわからないことを質問する。


「今回のボスってのは誰だ?明確な『敵』ってのは存在しないのか?」


すると老人は白い髭を揺らしながら首を横に振る。


「敵と言っていいのかどうかは分からんが、戦うべき相手というのは居る。()()2()()と言っていただろう?もう1人の方じゃ。」


なるほど、やはり競走させられるのか。大方どちらが先に攻略するかだろう。


その予想を話すと、老人は静かに首を振った。


「いや、競走では無い。どちらかと言えば勝負じゃ。」


「勝負?」


老人は大きく頷くと、口を開き説明を続ける。


「わかりやすく言えば、『創造神』に選ばれた『勇者』に対し、『破壊神』に選ばれた『魔王』、先にお互いを倒した方に頂上への道が開かれる。そして、真の道を開いた者は、『絶対神』への挑戦権が与えられる。絶対神に勝てれば、『End』というゲーム、そして、この世界について全てを知ることが出来る。ファンのお前さんには魅力的な条件じゃろ?」


…当たり前だ。10年以上前から遊び続けてきたゲームの全てを知れるなんてゲーマーとして最高のご褒美じゃないか!


「そう言えば、両親は?」


俺はついでに思い出したことを聞く

Endにおける()()というのは、かなり重要な役割だ。どのシリーズにおいてもラスボスだったり裏ボスだったりと必要不可欠である。


「もちろん、血の繋がりのある訳では無いが、彼らこそが30作のゲーム全てを手がけた2人じゃぞ?ゲームのファンなら是非とも話を聞きたいんじゃないのか?」


なんとも驚く情報だが、俺は一番最初に気にするべき部分を的外れなタイミングで思いだす


「……なぁ、そもそもこれって本当に異世界なのか?死んでも生き返らないような危ない感じの世界?」


「いや、ある一定の時間内であれば魔法で復活させられるらしいの?」


真っ白な顎髭をゆっくりとさすりながら、老人は呑気に答える。

もちろん不安はあるがそれよりも高揚感が勝ってしまう自分は、本当にEndが好きなんだと痛感する。ここまで来れば腹を括るしかない。どうせこの空間にいる時点で今までの世界の俺は死んでいることになってるだろうから。


「はぁ、まぁいいや。この手のネット小説だとチートとか貰えそうだけど…要らないからな?初期装備品と、アイテム幾つか、お金も少し欲しいな。でも俺は、チートなんて別に無くても今から行くであろう塔を攻略できる。」


老人を指さしながら俺が叫ぶと、小さな声で「傲慢じゃのう…」と呟くのが聞こえた。

傲慢で何が悪い。その傲慢さで勝ってきた戦いもあるんだ。(まぁ、ゲームの話なんだが…)


「因みに、お前さんが絶対神に勝てば次の絶対神はワシになるからの…是非とも勝って欲しいものじゃよ。願わくばその傲慢さが『勇気』へと()()()()()()()ことを祈ろう。」


そして、俺の意識はどこかへ遠のいていく。


……To be continued


次回予告


今回セリフのほとんどなかった主人公だ!生憎まだ名前を出せないのがもどかしい。まぁ、ネーミングセンスなんてものは皆無だから、関係ないんだが…。


次回はいよいよ、塔内で初戦闘!

せっかく貰ったチートは使いにくい上、意外と敵は強くて早くもピンチ。

と言いたいところだが、敵の全てを知っている俺にとって、ほとんどの敵が雑魚だ。まぁ、チートが絶妙に使いにくいのは認めよう。

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