第12話 奴隷達のチート
ちょいちょい矛盾するところがあったので直しました。
「さて、こういうのは、俺から話すべきだろうなぁ。」
俺が手を叩き、2人を席に促す。その向かい側に腰をかけようとするが、飲み物を用意した方がいいと思い、もう一度立ち上がる。
「あ…お茶でもお作り致しますか?」
「ああ、お願い。道具はキッチンに全部あるから、適当に作ってくれ。」
カップやお茶の道具は、創造神が作ってくれたのか、マグカップが5個ほど最初からキッチンに置かれていた。
3分程待つと、2つのお茶がイヴによって運ばれてくる。流れるような手つきで、俺とレイの前にカップを置く。
「…えっと?2つ…だけ?イヴの分は?」
「奴隷が、ご主人様と同じ飲み物をいただくわけにはいきません。」
なら、なんでレイの分があるのかはわからんが、彼女の歪な優しさなのだろうか?
「あー、じゃ、俺と同じものを飲んでいいよ。あと、ご主人様じゃなくてクエイフって呼んでくれて構わない。」
別に2人を、奴隷扱いする気は無い。きちんとした仲間と見ている。それはこの手のラノベ特有の綺麗事ではなく、あの塔を攻略するには、くだらない主従関係や、訳の分からない恋愛物語をやってる暇はないというだけだ。
出来る限り効率的に、合理的に、確実に、攻略を目指す。
そのためにこの2人を切り捨てるかもしれないし、自分が危険な目にあっても2人を助けるかもしれない。
それが、ゲームクリアのためになるならば…。
「さて、たかがお茶汲みで、面倒な一悶着があった所で話を進めようか。」
俺の責めるような口調に、イヴが恐縮しながら小さく謝罪する。
「えーと…俺のチートは、『全スキル取得可能』『ジョブ変更』『謎の声』っていう、この3つだな。呪い子の特徴のハーフってのは満たしてないが、チートはいわゆる神様から直接もらったタイプだ。」
厳密に言えば呪い子ではなく、ただチートを持ってるだけの人だな。
「あ、私はエルフと人のハーフだったんですけど、産まれてすぐに奴隷商に売られて、どこかの研究所に買われた時に人体実験されたらしく、特殊な方法で魔力を体に入れたみたいです…。
そのせいで今は魔法生命体って呼ばれてます。
ステータス画面には『呪い子』と書いてあるので、多分そうなんだと思います。
ただ、研究所に買われる前から魔法は使えてたし、ステータス画面に呪い子の表記はありました。
研究所の人達になにか隠されていると思います。
チートは『全魔法スキル取得可能』『究極魔法』の2つで、ジョブはアルティメットワイズマンです。」
アルティメットワイズマン─究極職と呼ばれており、ゲーム中では最終進化みたいな強さだ。
ただイヴの場合、チートのおかげでこのジョブについているため、実際のステータスは低いらしい。(それでも魔力関係のステータスは高いが…。)
「……私は…獣のハーフらしい。よく覚えてない…から…全部…あのおじさんから聞いた話…だけど…」
言葉をいちいち途切らせながら小さな声で話すので、聞いているこっちとしてはイライラしてくる。
「チートは、『肉体変形』だけ。あと、チートかどうかはわかんないけど、人よりインベントリの容量が大きくて、最大所持数の制限が無い。…です。ジョブはハンター。です。」
レイは、隣に座るイヴに小突かれ、小さく『ですます調』を付ける。
最大所持数の制限がないというのは、それもチートだと思われるが、ステータスのチート欄に書かれていないということは、種族の特徴なのだろうか?
そういえば、ゲームでも一部の獣系モンスターは、アイテムなどを使うことがあるが、同じ種類のアイテムをほぼ無限に使い続ける。とあるモンスターは1匹しかいないのに、最高で83個ぐらいの『回復薬』をつかった。
ちなみに、今の俺の回復薬の最大所持数は40個だといえば、その異常性が分かるだろう。
インベントリが大きいのも、種族ということでいいだろう。
お互いのチートについて一通り情報を纏めたあと、少し大きな声で言う。
「改めて言うが、俺は神様になるために〈End〉をクリアしようとしてる。明日からあの塔に向かうから用意しといて。装備とかは、基本的には揃ってる。何か必要なものがあれば、朝早くに買っておこう。」
適当な激励の言葉をかけて、次回からまた、あのスライムばかりいる、ジメジメとした塔に入っていくことにする。
「夕食にもいい時間だな。どっちか、料理出来る?」
外食でもいいが、出来る限り安く抑えたいので、2人に声をかけてみる。
「簡単なものであれば…」
「…」
イヴは、答えてくれたが、彼女に任せると二人分しか出てこなさそうだ。
レイは、またそっぽを向いて知らんぷりか…。
「じゃあ、イヴ。3人分の夕食を頼む。」
「…かしこまりました。クエイフ様」
はぁ。……様付けまで止めさせるのは難しそうだ。
30分程待つと、3人分の無難な夕食が食卓に並んだ。
そこそこに色とりどりで、美味そうな見た目をしているので、イヴは家事が得意なのかもしれない。
その後、俺が風呂に入り、寝支度を整える。
2人は、昼に入っているので入らなくても大丈夫らしい。
ダメだ…。俺の女の子のイメージがドラ○もんの『しずかちゃん』が基準だったため、日に何度も風呂に入るものだと思ってしまった。
「あの…クエイフ様。夜伽に参りました…。」
次の日の装備やアイテムを整えていると、イヴがやってくる。
「…?お前、そういうことをされてそうになった時に魔法で抵抗したって話を聞いたが?」
「クエイフ様になら…いいかなと思いまして…。レイも助けてくださいましたし…。」
別にレイは助けたわけじゃない。たまたま取得したスキルで対応出来る範囲の『呪い』だったから、その『呪い』を解消しただけだ。
というか呪いの正体は、肉体を変形させる時に過剰にエネルギーを使うからだろうと謎の声は言っていたため、呪いの解決は簡単だった。
「そーゆーの興味無い。今は塔の攻略が出来ればそれでいい。ま、訳の分からない恋愛ごっこは、塔の攻略が完了したらするかもしれないけどな…。」
「そう…ですか。」
そのまま、彼女を部屋に戻して、俺もベットに潜るが、イヴの寂しそうな表情が頭から離れなかった。
……To be continued
次回予告
レイです
次回予告を頼まれたけど、めんどくさいなぁ…。
なんか、塔の中で戦ったりする。
…ゴブリンは初めて見た。
次回
3人での塔
クエイフ…カッコイイ!