末永くよろしくされたおはなし
「綾乃~、小春ちゃ~ん。ばいば~い」
「また明日~」
学校の授業が終わり、友達と挨拶しながら迎えの車に乗る。
近くにダンジョンができたものの、探索者協会の初期対応がうまくいき、何の混乱もなく授業は行われている。
私達がダンジョンに飲み込まれたことは、探索者協会と小春のお父さんが色々してくれたおかげで誰にも知られていない。
学校では二人ともインフルエンザで休んだことになっている。二週間ぶりの学校と言う事で、快気祝いに友達が帰りに遊びに行こうって誘ってくれたけど、今日は用事があると断ってしまった。
「今日はゴメン。また誘ってね」
「またね」
私達が探索者協会に入った事は秘密なので、小春のお父さんに呼ばれているとごまかしてある。
嘘をついた事に良心が痛むが、さすがに本当の事は言えない。
「それでは探索者協会に向かいます」
小牧さんが車を出してくれる。
「それじゃ小春着替えるわよ」
「うん」
車内にあるボタンを押すと、運転席と後部座席の間に仕切りが現れ、窓ガラスに自動でカーテンが掛かった。
用意してあったケースを開け、中から迷宮探索隊のエンブレムが入ったボディーアーマーとヘッドギア、そして戦闘服を取り出す。
ボディーアーマーとヘッドギアは、私達用に協会から支給された物で隊員全員の共通装備だ。それ以外の服装に関しては、スキルや戦闘方法によって異なるため、規則を守れば各隊員が自由に選んで着る事ができる。
私と小春の戦闘服は、シノノメグループのトップである小春のお父さんと、現在自宅謹慎中の私のおじいちゃんが協力して、自重せずに作ってプレゼントしてくれたものだ。
金額は聞けなかったけど、正直聞かなくて正解だったと思う。
私はまだ着るのに慣れていない小春に、戦闘服を着せて行く。
「綾姉、これからダンジョン頑張ろうね」
「そうね、早くみんなに追いつきましょう」
小春がやる気を見せる。
そう、私達はこれからの連休を使って二週間ぶりにダンジョンに入る。
あの時とは違って自分の意思で。帰るためではなく、戦ってレベルを上げるためにダンジョンに挑む。
私はあの時のことを思い出す。
☆ ☆ ☆
「どういうことですか?」
「二人の持つスキルが狙われる可能性があるというのには私も同意します。なので、二人には自衛ができるようになるまでダンジョンでレベルを上げてもらうのがいいと思いまして。もちろん強制はしません、あくまでも選択肢の一つとして考えていただけないでしょうか」
「あの、探索者になれるのは18才以上のはずです。私も小春もまだ年齢に達していませんが」
会長さんの話はありがたいけど問題がある。私と小春はまだ未成年だ。探索者免許を取得できる年齢に達していない。
しかし、会長さんを見ると、私の質問を予想していたかのようにニコリと微笑んで話し出した。
「少し違いますね。正確には、一般人が「探索者免許試験」を受けるのに18歳以上の条件があるだけです」
何が違うんだろう?
免許が無ければ探索者として活動できないのだから同じだと思うんだけど……。
「多くの方が勘違いされていますが、本来はダンジョンで活動できるのは探索者協会の職員のみなのです。しかし例外として、探索者免許を所持する人のみ、協会が認めた外部協力者としてダンジョンに入ることを許可しているのです」
「つまり、協会の人は探索者免許がなくてもダンジョンに入れるのですか?」
「そうですね。協会の仕事でダンジョンで活動する際には必要ありません。もちろん私的にダンジョンに入るのなら探索者免許は必要になりますが」
ここまで聞けば私でもわかる。
「つまり私達も探索者協会の職員になれば、ダンジョンに入れるということですか?」
「そうなります。入っていただけるのであれば、できるだけ早く活動できるように取り計らいましょう。もちろん無理やり協会に縛り付ける気はありませんのでご安心を」
小春を見る。
「おぉぉぉぉ……」
目がキラキラしてる。
すっっっごい、やる気だ。
お父さんを見る。
「好きにしなさい」
頷いてくれた。
まあ、家族は私が探索者のなるのに賛成してたからね。
「どうしてここまでしてくれるんですか?」
「あなた達のスキルはとても危険で、とても有用です。他に取られないうちに抱え込むというのが本音で、私達を後ろ盾にしつつ、自分で身を守れるくらいにレベルを上げてほしいというのが建て前でしょうか」
「でも、探索者協会って公務員ですね。こういうコネ入社みたいなのってありなんですか?」
「ありですよ。今では優秀な探索者の方をこちらから勧誘させていただくこともあります」
本音を言えばすぐにでも入りたい。
手に入れたスキルとか、モンスターとの戦いとか、ドロップアイテムとか、思い返すとワクワクしてくる。
元々、18歳になったら探索者免許を取る予定だったし、探索者境界の後ろ盾と言うのは頼もしい。
「大事な事ですから、じっくりと考えて答えを出してください」
ニッコリ
会長さんが微笑んだ。
☆ ☆ ☆
あの後、一度家に帰って家族と相談した結果、私達は探索者協会に入る事にした。
会長さんに伝えるととても喜んでくれて、翌日には協会本部に呼ばれて様々な検査や研修を受けることになり、昨日正式に私達は協会の職員になった。
ただ、この事については硬く口止めもされていて、信頼できる人以外には話してはいけない事になっている。
「綾姉付いたよ」
気が付くと探索者協会に到着していた。
小春がクイクイと袖を引っ張ってくれる。早くダンジョンに入りたくて待ちきれないらしい。
車から降りると、小春に手を引かれながらとある部屋に向かう。
目の前に現れたのはダンジョン産の鉱石で作られたと思われる扉、探索者協会の地下に存在するダンジョンの入り口がある部屋だ。
ここは一般には開放されておらず、探索者協会の部隊のレベル上げなどに利用されているダンジョンで、私達は一般に開放されているダンジョンにはまだ入れないため、ここを利用させてもらう事になっている。
今日は。始めてこのダンジョンに入るので、協会が用意した案内人が同行してくれるらしい。
受付で社員証を見せると一瞬驚かれたものの、問題なく通る事ができた。
「東雲小春さんと西風田綾乃さんでしょうか」
中に入ると目の前に女の子が立っていた。
腰まである長い黒髪に、目尻の泣き黒子が特徴的で、年齢は私達と同じか少し上に見える。
私達の名前を呼んだという事は、案内人かな。
「はじめまして。私は川内千代と申します。これからお二人に同行させていただくことになっております。末永くよろしくお願いいたします」




