脱線したおはなし
「協会でも正確には解明できていませんが、おそらくグレムリンの持つ銃火器や機器を誤作動させる能力は、魔法の一種のため、【魔断装衣】の魔法抵抗能力で限定的に無力化できていると考えられています。とは言っても、効果は私の身体の周囲1メートル位なので、実質恩恵を受けられるのは私一人ですけどね」
「だが、現在このスキルを会長以外が獲得できたと言う情報は無い。もしかしたら我々のように、スキル所持者を隠しているかもしれないが、協会では【魔断装衣】を会長のユニークスキルと認定している」
会長さんの言葉をお父さんが補足する。
ユニークスキルとは、希少性が高く世界で一つしか見つかっていないスキルの総称のことで、【獲得経験値増加】や【限界突破】、【空間転移】、【ねこねこアーマー】などが有名だ。もしかしたら私と小春のスキルもユニークスキルになるかもしれない。
「綾乃や小春ちゃんが倒したオークやソルジャービーも、普通の探索者なら苦戦する相手なんだ。でも、銃火器が使えれば、それらのモンスターを苦労せずに倒すことができる。それだけこのスキルの与える影響は大きいんだ。すまないがこのスキルの存在はまだ公表できる段階に来ていない。こちらから一方的に話しておいて申し訳ないが、綾乃、小春ちゃん、それと龍盛、この件は他言無用で頼む」
お父さんが頭を下げる。
「もちろん言わないよ。お父さんに迷惑かけたくないし」
「私も」
「当然だな。俺も探索者協会に敵対はしたくない」
私と小春、それと小春のお父さんも同意する。
私達もこれから同じくらい危ないスキルについて相談するんだから、他人にばらしたりなんてするわけ無いよ。会長さんだってきっと――
ん? 会長さんの顔を見ると、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
「あの、すいません。今このお二人がオークとソルジャービーを倒したと聞こえたのですが……」
「はい、倒しましたが……」
会長さんの視線が、私と小春に向く。
「お二人は何の準備もして無い状況で、ダンジョンに飲み込まれたのですよね? 逃げたのではなく、本当に倒したのですか?」
なんだろ? 会長さんの表情が険しくなっていく。
さっきは「ポカーン」だったのに、今は「ムムッ」になってる。
「どうやって倒したのですか?」
あっ! もしかして普段から小太刀を持ち歩いている事がばれた?
どうしようっ!
お父さんと小春のお父さんを見る。
お願い、目を逸らさないでっ!
「すいませんでしたっ!普段から護身用に小太刀を持ち歩いていましたっ!でも犯罪とかには使ってません。本当ですっ!信じてくださいっ!」
「私もしてません」
小春と一緒に頭を下げる。
誤魔化して心象を悪くするよりは、ここは正直に謝ろう。
「いや、あなた達が刀を持ち歩いていた事は知っています。そうではなく、本当にレベル0なのに刀だけでオークを倒せたんですか」
えっ? どういう事? もしかして武器の事?
確かに、途中からオーク刀と毒針だけで戦ってたし、その事かな?
「はい、最初は3匹が相手だったので、さすがに不意打ちで仕留めましたが、その後は――」
「3匹?!」
「そ、そうです。それで、その後は、私は魔物から得た武器で戦いましたが、小春はずっと小太刀で戦っていました」
「そうですか……」
何かいけなかったのかな?
お父さん達は会長の取り乱し具合に驚いている。
小春はさっきから何もしゃべっていないが、少しだけ驚いて見える。
会長さんは少し考え込んだ後口を開いた。
「少し取り乱した事をお詫びします。少し驚いてしまいまして」
「あの、何かしてしまったんでしょうか?」
「オークは本来、個人で戦う場合の推奨レベルが10です。それはレベル10相当の身体能力に加え、2つのスキルを所有していてようやく倒せるという事です。そのオーク3匹をレベル0の女の子が2人で、スキルを使わずに倒してしまったという事実に、頭が付いていきませんでした」
隣で小春のお父さんが、「なぁ、小春ってそんなに強くなったのか?」と私のお父さんに小声で聞いている。
「いえ、気にしないでください」
私も自分の家庭環境がほんの少し普通と違う事は自覚してますので。
でも推奨レベルが10か……、奇襲した事を加味してもそこまで強くはなかったような。
ダンジョン内で殆ど無傷だった事は言わない方がいいかな。
「さて。少し脱線してしまい申し訳ありません。本題に入らせていただきます」
会長さんはコホンと一呼吸置いて話し出す。
「西風田綾乃さん。東雲小春さん。探索者協会に入りませんか?」




