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迷路のおはなし

 

 鬼がこっちに気づいて走り出した。

 さっきの狼なんて比べ物にならないスピードだ。

 

「小春っ! 逃げてっ!!」


 何を言っているんだ私は、私が喰い止めている間に小春を逃がす?

 無理だ。

 数分喰い止めた所で、このフィールドじゃすぐに追いつかれる。


「なんで逃げるの?」

「え?」


 まるで緊張感の無い小春の声に、一週回って頭が冷静になってくる。

 小春を見るとこっちに向かってくる鬼に対して、手をぶんぶんと振っている。

 その姿はまるで鬼にこっちの位置を伝えるように見える。


「お~い」

「え??」


 鬼が至近距離まで来た。

 おかしい、一目見て強敵だとわかったのに、まるで殺気が感じられない。

 鬼が口を開く。

 

「……無事か?」

「え???」


 その声はおじいちゃんの声だった。



「え????」







  ☆    ☆    ☆








「つまり、その姿はおじいちゃんのスキルってこと?」

「うむ」


 目の前の鬼はスキルで従魔のヤマトと「合体」したおじいちゃんだった。

 スキルの名前は『従魔融合』。

 前提条件として『従魔術』のスキルでモンスターをテイムしていないと使えないため、それだけでは何の意味も無いスキルだが、発動すると自らの従魔と合体して能力を向上させ、さらにその従魔のスキルも使用する事ができる強力なスキルだ。

 『従魔術』も『従魔融合』も見つかり難い希少なスキルのため、両方とも揃えているのは日本では3人くらいしかいないと聞いた事がある。


 『従魔融合』を発動したおじいちゃんを見る。

 身長180センチくらいの赤黒い肌の鬼だ。全身から立ち上るオーラが大袖や脇盾など日本甲冑の部位を再現していて、「オーガ」と言うより「鬼」と言ったほうがしっくり来る外見をしている。

 この姿に加えて、斬った相手に状態以上を与える刀を召喚する『妖刀召喚』スキルも合わさり、「刀鬼神(とうきじん)」の二つ名で呼ばれている。


 このスキルの存在は知っていたけど、おじいちゃんとヤマトの場合「合体」すると周囲を無条件に「威圧」してしまうため、ダンジョン外じゃ使用禁止にされていて、実際に見たのは今日が初めてだ。

 小春も私と同じで見た事なかったはずなのに、何でわかったんだろう?


「ねぇ小春。何であの鬼がおじいちゃんってわかったの?」

「なんとなく雰囲気が道和じぃに似てるなって」


 似てたっけ?

 私には悪鬼以外の何もにも見えなかったんだけど……。

 おじいちゃんを見る。


「怪我が無くなによりだ。帰るぞ、ワシの後ろについて来い」


 すでに階段に向けて歩き出していたので、急いで後ろをついていく。

 階段の途中の安全地帯で、おじいちゃんにこれからの事やスキルについて相談しようと思ったけど、「難しい事はわからん。政利(まさとし)か東雲の親御さんに相談しろ」と言われたので話せなかった。

 

 魔法の袋から菓子パンやおにぎり、ペットボトルを出してくれたので食べる。

 どうやら私達を助けに行くときに、途中のコンビニでありったけ買ってきたらしい。


 食べながら、おじいちゃんに上の階層についての話を聞く。

 上の階層は迷路タイプのダンジョンで、広く入り組んでいるけど浅い階層だから通路に罠はないらしい。そして地下2階になるそうだ。

 

「小春っ」

「うんっ」


 つまり残り2階層でこのダンジョンから脱出できる。

 自然と頬が緩む。

 

 その後は軽く仮眠を取ってか上層へ向かった。

 仮眠を取ったのは、上の階層は迷路でかなり広くて長時間歩く事になると聞いたからだ。


 上の階に出ると、人が5~6人くらい並んで歩けるほどの広い洞窟だった。

 遠くに幾つかの分かれ道が見える。


「こっちだ」


 おじいちゃんの後ろについていく。


 モンスターは大きな蜘蛛と角の生えたウサギ、後は下層と同じゴブリンが少数で出てきた。

 最初はおじいちゃんが1人で無双していたけど、私達もレベルを上げたいので少しまわしてもらった。

 小春のおかげでモンスターの死体やドロップアイテムの取り逃しもない。

 

 歩きながら新しく出てきたモンスターの魔石を食べる。

 手に入れたスキルは『大蜘蛛の粘糸』と『突撃兎の角』だ。ゴブリンは数が少ないだけで草原と同じだったので手に入らなかった。

 『大蜘蛛の粘糸』は指先からネバネバする糸を出すスキルで、相手にぶつけたり、地面に貼り付けて罠にしたりと使い道は多そうだ。

 『突撃兎の角』は殆ど『子鬼の角』と殆ど同じだった。こちらの方が長い代わりに凶暴化する効果がないだけで、今後使用する事はなさそう。

 

 モンスターを倒しながら迷路を進んでいくと、おじいちゃんが止まった。


「ふむ、ようやく来たか」

「どうしたの?」


 遅れて私達にもその理由がわかった。

 足音だ。

 モンスターのではなく、靴の音が響いて来る。それも何人もの足音だ。

 どんどん近づいてくる。

 

 前方の曲がり角から5人の人影が出てきた。

 全員藍色のボディーアーマーを装備している。胸のエンブレムで日本探索者協会に所属している事が分かった。


「隊長。救助者2名発見しましたっ!」

「よかった。2人とも無事だったのね」

「ダンジョン不法侵入の容疑者も一緒にいます」


 話を聞く限りは、どうやら私達を助けに来てくれたみたいだ。

 そのうちの1人がこちらに駆け寄ってきた。


「……お父さん」

「綾乃……小春ちゃん……無事でよかった……」


 安心したのか、その場に座り込むお父さん。


「うん、心配かけてごめん。助けに来てくれてありがとう」

「おじさん、ありがとう」

「いや、2人が無事ならそれだけでいい。こっちも助けに来るのが遅れてすまなかった」 


 みんなに囲まれて自然と笑顔になってしまう。

 色んな人たちが私達を助けるために尽力してくれた事実が、申し訳なくもあり、うれしくもある。

 

 でも真っ先に来たのが身内って、うちの家族アグレッシブすぎないかな。


 と言うか、おじいちゃんダンジョン不法侵入の容疑者って言われてたけど何したの?

 

 

申し訳ありませんが、ストックが尽きたので次回からは不定期更新になります。

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