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少し未来のおはなし



「ねぇ、綾姉(あやねぇ)、それ美味しい?」


「う~ん。……微妙?」


 ぽりぽりと口の中で魔石を噛み砕く。

 形容しがたい味が舌に広がる。なんだろ? 今回は辛苦い感じかな……

 あんまり美味しくは無いので、小春(こはる)から出してもらったお茶で流し込む。


「んんっ! ふぅぅぅ……」


 喉を通ってお腹に入った瞬間、火傷しそうなほどの熱さが全身に広がってそのまま抜けるように消えていった。

 毎回寒くなったり、痺れたりで、一貫しないこの感覚は好きになれない。

さて、今回は何のスキルが手に入るかな?


「綾姉」

「ちょっと待ってね。『ステータス』」


 小春が急かして来るので、自分のステータスを開いて確認する。多くのスキルが並んだリストに『火竜の炎弾』と言うスキルが増えていた。

 そのまま集中すると、いつも通りスキルの使い方が頭に浮かんできた。


 ……なるほど、予想通りのスキルみたいね。


「『火竜の炎弾』だって。あの赤ドラゴンのブレスと同じヤツ吐けるみたい」


 小春にスキルを教えると「見たいっ」と目を輝かせていたので、実演するために後ろに下がってもらう。

 この子に遠距離攻撃が効くとは思えないけど念のためだ。


「今から、10秒後に大きいの撃ち込むからどいて~」


 ダンジョン内でのフレンドリーファイヤは怖いので、離れた場所で残りの赤ドラゴンと戦っているメンバーに警告を出す。

 戦闘中でもちゃんと声が聞こえるように『鬼の咆哮』を弱く発動しながら叫んだ。

 乃々香(ののか)ちゃんが気付いて、ピョンピョン跳ねながら大きく手を振ってくれた。

 ()()()()した影響で長くなった耳も一緒にピョコピョコ動いていて可愛らしい。

 その後ろでは赤ドラゴンが千代(ちよ)さんの魔法で後ろに吹き飛ばされていた。

 それに気付いた乃々香ちゃんが千代さんと一緒に散開してくれる。


 これでよしっ!


 スキルを発動する。

 大きく息を吸って、勢い良く吐く。

 誕生日ケーキの蝋燭を息で吹き消すような感覚だけど、実際に出たのは50cm以上ある大きな火の玉だ。

 それが、すごい速さで赤ドラゴンに直撃して爆発を起こした。


「おぉぉ……」


 私の隣で小春が感動している。周りにキラキラ光るエフェクトが見えそう。

 姉のような幼馴染が口から火の玉を吐く、この状況のどこに感動する余地があるのかは疑問だけど、わざわざ水をさす必要も無いのでこのままにしておこう。


「せんぱ~いっ!へるぷみ~っ!」


 緊張感の無い声がしたので乃々香ちゃんの方を見ると、赤ドラゴンが追加で5匹こっちに向かって飛んで来ているのが見えた。

 助けを呼んでいる割には、顔に緊張感が見られない。

 たぶん「赤ドラゴンに勝てないから助けて」ではなく、「千代さんと一緒だと間が持たないから助けて」なんだと思う。

 私が行かなくても問題ないけど、かわいい後輩の頼みだから助けに行くことにしよう。


 それにドラゴン系のお肉は美味しい。すごく美味しい。

 ここで、できるだけ確保しておきたい。

 余ったらシノノメで買い取ってくれるだろうし、いくらあっても困らないよね。

 と考えていたら、赤ドラゴンが一斉にこっちに向けてブレスを吐いてきた。

 同スキルで相殺しても良い行けど、ここは小春の()()を増やしておこう。


「小春も行こう。頑張ったら今日の晩御飯増やしてあげる」

「……行く」


 前方から飛来していた無数のブレスが、小春が手を前に出すと一瞬で消失する。


「それじゃ一緒に行こう。晩御飯のメニュー何が良い?」

「から揚げ食べたい」


 私は『飛竜の翼』『牛魔の怪力』『雷獣の双角』『銀狼の俊足』を発動させ、赤ドラゴンに向かいながら決意する。


「今夜は赤ドラゴンのから揚げにしよう」



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