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『吸血鬼の憂鬱記』  作者: 坂田クロキ
8/15

〜Vampire’s Annui7〜


「…目が冴えちまった……」


ひと通り明菜を絞ったカイルはもう寝付けそうにないことを悟る。明菜はカイルに説教されてしょんぼり…というわけもなく、ソファでゴロゴロしていた……。しかし、カイルの呟きを聞いてぴょこん!と、飛び起きる。


「じゃあさ、じゃあさ〜お買い物行かないー?秋冬の服買いに行こうよ〜」


にこにこ顔で、明菜がショッピングを提案した。


「…服、か……確かに要るな……」


カイルも実家に帰れば服は山ほどあるのだが、ちょっと堅くて古いイメージの服が多いというか、今の現代日本で着られそうな服は少なく感じた。今着回している服も日本で買ったものである。買う時にモデルにスカウトされそうになって、危うく逃げて来たのは余計な思い出ではあるが。


「ね〜、わたしも冬物もうちょっと買い足しておくよ〜。急に寒くなって来たからね〜」


『一応OLだし、社会人だし。女子だし!』と明菜がしっかり身繕いにも気を遣ってますよ〜アピールをするが、休日にヨレヨレの着古したパジャマもどきで一日をダラダラと過ごす時点で、大人としてどうなのかという所ではある。


「じゃあ、行きますか〜!」


「……今日は天気どうなんだろうな……」


お出かけ用の服に着替えて玄関に立つ明菜に、カイルが何気なく言う。


(……あまり陽射しがキツくないと良いが……)


吸血鬼が日光に弱いというのは半分正解で半分は誤解だとも言える。朝一番の陽の光や、直射日光を浴びても灰になることはないし、火傷を負うこともない。全然平気なヤツだっている。しかし、長い歴史の中で、人間から離れるように隠れるように生活してきたその背景から、必然的に“夜”を選ぶようになって現在に至る。人間でもずっと暗い所にいて、暗がりに慣れた目で急に明るい所に出たら眩しくて目が眩むのと同じように、吸血鬼も暗闇に“慣れて”しまったのだ……。


「どんなだろうねえ〜…確か昨日の予報では雨だったんだけど、も一回スマホでチェックしてみるね〜」


「…ああ、サンキュ……」


明菜がスマホを操作して、むむ、と眉をしかめる。


「う〜ん〜…今日は曇りからまた雨だって〜傘持って行こうかね〜」


「…そうか…そうだな……」


(…曇りなら助かる……)


吸血鬼らしく日光が苦手な部類に入るカイルとしては、今日の天気予報はありがたいものだったのだがー……。


「……熱い…いや、暑い………」


正確ではなかったらしい。もうすぐ十一月に入ろうというのに、日中は太陽が容赦なく降り注ぐ。今日のお天気は、快晴。玄関を出て、街まで行く間にカイルはもうバテ気味であった……。


「天気予報、外れたね〜。カイルくんだいじょうぶ〜?暑いの苦手だったよね〜」


しんどそうにしているカイルを心配して、明菜が下から顔を覗き込む。


(………可愛い……だが…弱ったな…)


その仕種に、密かに癒されるものの、肉体的ダメージが回復するわけでもない。今の状態が命に関わることも、急に倒れるということもないけれど、不必要に体力を消耗することは避けておきたかった…。そこにちょうどよく、気軽に入れそうなカフェがあった。明菜が目敏く見つけてカイルの腕を引っ張る。


「あ、あそこ入ろうよ〜!カイルくん!ちょっと休んでいこ〜」


「…そうだな……悪い……」


レッツゴー!!と、元気良くカイルを引きずっていった……。



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