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『吸血鬼の憂鬱記』  作者: 坂田クロキ
3/15

〜Vampire’s Annui3〜


場所は変わって飲み会会場――…。



「さーて、皆さん、今日はこの辺でお開きにしますか〜」


「は〜い〜」


「ええ〜もうー?」


「はいはーい、皆さんまた仕事頑張ってくださいね〜」


「は〜い…」


人の声が騒がしい居酒屋で、ある会社のグループが今日の飲み会の終了を告げた。その中に明菜もいた…。


「…〜ありゃ〜…しまった〜お財布忘れら〜……」


バッグの中をゴソゴソとあさる明菜。その瞳はお酒が入っているのか、トロンとしている…。


「…明菜、アンタ、だいぶ飲んだわね……」


呆れたように黒髪ロングの美人系の女性が、明菜を見て言う。彼女は明菜の同期の同僚だ。学生の頃から付き合いがある。


「あ〜莉乃香(リノカ)ちゃんら……お財布忘れちゃったよー」


もはや、呂律も回っていない。同じことを何回も繰り返して言う。顔も赤い。ただ、本人は幸せそうだ…。


「はいはい、分かったから。今日のが会費で良かったわね。それより、帰りの電車賃が無いんじゃないの?バス代にタクシー代も。定期券もみんな忘れてきたんでしょ?」


莉乃香が明菜のカバンを覗き込んで言う。明菜は莉乃香を指さして言った。


「あやや、何と!莉乃香ひゃん、鋭ひ!!ずぇーんぶ入ってましぇ〜ん〜!!」


「馬鹿、イラっとするわ。ほら、お金貸してあげるから…いや、このまま返すのも心配ね。ちょっと待ってなさい」


ズバッと言い放った莉乃香は、側にいた男性社員を捕まえて尋ねる。


「山本くん、確か明菜と帰る方角一緒のほうだったわよね?この子頼めない?」


「…良いですけど、実は俺、この前引っ越したんですよ…西のタワーの近くに」


「いやだ、わたしと同じほうじゃない」


「マジっすか!春川(ハルカワ)先パイ、一緒に帰りませんか?」


「馬鹿。わたしは今、明菜のことを頼んでるのよ?」


「でしたね…すみません。いいっすよ、明菜さん俺が送って行きますよ」


「ありがとう、助かるわ…明菜、ってコトだから……って、明菜?」


莉乃香と山本の二人が振り返って明菜のほうを見た時、そこに明菜の姿は無かった………。


「ちょっと、明菜見なかった!?」


「え、楓さんならもうとっくに店出てましたけど……」


「ええーっ!?」


他の同僚に尋ねた莉乃香の声が、騒がしい店内に響いた……。




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