〜Vampire’s Annui3〜
場所は変わって飲み会会場――…。
「さーて、皆さん、今日はこの辺でお開きにしますか〜」
「は〜い〜」
「ええ〜もうー?」
「はいはーい、皆さんまた仕事頑張ってくださいね〜」
「は〜い…」
人の声が騒がしい居酒屋で、ある会社のグループが今日の飲み会の終了を告げた。その中に明菜もいた…。
「…〜ありゃ〜…しまった〜お財布忘れら〜……」
バッグの中をゴソゴソとあさる明菜。その瞳はお酒が入っているのか、トロンとしている…。
「…明菜、アンタ、だいぶ飲んだわね……」
呆れたように黒髪ロングの美人系の女性が、明菜を見て言う。彼女は明菜の同期の同僚だ。学生の頃から付き合いがある。
「あ〜莉乃香(リノカ)ちゃんら……お財布忘れちゃったよー」
もはや、呂律も回っていない。同じことを何回も繰り返して言う。顔も赤い。ただ、本人は幸せそうだ…。
「はいはい、分かったから。今日のが会費で良かったわね。それより、帰りの電車賃が無いんじゃないの?バス代にタクシー代も。定期券もみんな忘れてきたんでしょ?」
莉乃香が明菜のカバンを覗き込んで言う。明菜は莉乃香を指さして言った。
「あやや、何と!莉乃香ひゃん、鋭ひ!!ずぇーんぶ入ってましぇ〜ん〜!!」
「馬鹿、イラっとするわ。ほら、お金貸してあげるから…いや、このまま返すのも心配ね。ちょっと待ってなさい」
ズバッと言い放った莉乃香は、側にいた男性社員を捕まえて尋ねる。
「山本くん、確か明菜と帰る方角一緒のほうだったわよね?この子頼めない?」
「…良いですけど、実は俺、この前引っ越したんですよ…西のタワーの近くに」
「いやだ、わたしと同じほうじゃない」
「マジっすか!春川(ハルカワ)先パイ、一緒に帰りませんか?」
「馬鹿。わたしは今、明菜のことを頼んでるのよ?」
「でしたね…すみません。いいっすよ、明菜さん俺が送って行きますよ」
「ありがとう、助かるわ…明菜、ってコトだから……って、明菜?」
莉乃香と山本の二人が振り返って明菜のほうを見た時、そこに明菜の姿は無かった………。
「ちょっと、明菜見なかった!?」
「え、楓さんならもうとっくに店出てましたけど……」
「ええーっ!?」
他の同僚に尋ねた莉乃香の声が、騒がしい店内に響いた……。




