超顔認証システム
彼は笑みを浮かべた。
彼は水槽の見つめていたが、
グッピーを見ているわけではなかった。
彼の視線はもっと遠い所にあった。
これからのことを思うと笑みがこぼれたのだ。
彼は、超・顔認証システムが完成したのだった。
認証率は99.99999%。
ただ顔認証と称しているが、体格、歩き方など、
あらゆる手段を認証に利用していた。
彼から笑みが、またこぼれた。
「これで、家賃の支払いが・・・」
彼は絶句した。
彼は天才科学者だった。
が、・・・
このシステムを販売するツテがなかった。
彼は目をつむり、頭を垂れる。
30分が経ち、パソコンに向かう。
『私はセ〇ムさんより、凄い顔認証システムを開発しました。
5倍の認証率があると思います。
今ならお安くします』
と彼は台本を書いた。
彼は勇気を振り絞って、セ〇ムに電話した。
人見知りの彼は、たどたどしく台本通りに話した。
当然、相手にもされなかった。
セ〇ム者が、失礼極まりない、素性もよく分からない研究者の顔認証システムなど購入するわけもない。
「家賃が・・・」
彼はぼう然と呟いた。
「しょうがない、藤崎に頼もう・・・」
藤崎とは自称名探偵の藤崎誠。
これまでいつくもの事件?
いやトラブルを解決している。
彼も何度も助けられていた。
社会不適合者と言われたので、今回自分で頑張ってみようと思ったのだが・・・
「・・・凄い顔認証システムができたんだ」
彼は力説した。
藤崎は怪訝な顔をする。
彼の実力は知っているが、
警備会社が胡散臭い科学者のシステムを購入するとは思えなかった。
それでも、藤崎なりにいい方法がないか、頭脳をフル回転させていた。
東京オリンピックに一枚噛めないか・・・
親友の国会議員太田の顔を浮かべた。
「本当に凄いのか?」
藤崎は眉間にシワを作ったまま聞いた。
「これを付けてくれ」
彼は藤崎にゴーグルを渡す。
「これがモニタになっている。
個体認証すると、その対象に名前とか年齢とか表示される」
藤崎はゴーグルかけた。
「マジかーッ」
藤崎は声を上げた。
「これなら、すぐに売れる。
名探偵にお任せあれ、だ」
彼の顔認証システムは、すぐにある場所に話題になった。
『モモちゃん、かわいいー』
『華ーッ』手を振る。
『タローッ、こっち』エサを差し出す。
猿山の前で、ゴーグルをかけた子供や大人たちが声を上げる。
愛知県のモンキーパークからのテレビ中継。
「天才に」と言い、
藤崎はテレビを見ながら、一人で祝杯を掲げた。
藤崎は彼の顔認証システムを動物園に売り込んだのだった。
「これなら、東京オリンピックにも使える」
猿をも個体識別できるなら、人間など簡単だろう、と藤崎は考え、
政府機関や警備会社に売り込む前、話題作りで動物園に提供したのだった。
「グッピーさえできるんだ」
藤崎は、彼の家でゴーグルをかけた時、
水槽のグッピー一匹一匹に名前が表示された驚きを今でも持ち続けていた。




