誕生日には天使を
はじめまして
初投稿の日端ないるです!ノートに書きだめていた小説を、デジタル化している今日この頃。受験から全力で逃走中(笑)
暖かい目で読んでいただければ幸いです!
「おめでとうございます!」
その時初めて、今日が誕生日だと思い出しました。………でも、なんだか複雑な気分です。
目を覚ますと自分の部屋の天井に、『真っ白な服を着た超絶美形の羽が生えたヒト』が、浮かんでいました。
髪と瞳は黒色で、肌の色は透けとおるような白。顔はどっかのイケメン俳優さんを五割ほど美化したかんじ。我ながら、自分の想像力に舌を巻きます。
私、九条テルマはごくごく普通の高校生です。そこそこの進学校に入って、まあまあの成績。一つ違う点と言えば、親がいないこともあって、若くして一人暮らしの身。数年前に親が事故で亡くなって以来、祖父母の家でお世話になりましたが、高校に通うにあたって、仕方なく一人暮らしを始めました。祖父母の家は4月になっても雪が残る山奥なので仕方がありません。
「アナタは私の108番目のマスターに選ばれました」
『超絶美形の羽が生えたヒト』(以下:天使様)は、私に向かって輝かんばかりの笑顔を向けながら言いました。……何ですかその、ちょっとありがちなセリフは。
一人暮らしをするにあたって注意するべきことは、家の鍵をかけて寝ること。おじいちゃんから何度も念を押されました。不審者が入ってこないように、鍵はかけていた自信があります。と、なると………
リアルな夢ですね。
今日は休日。少しくらいゆっくり寝よう。顔はカッコいいけど、言ってることが危ないヒトだし。ここは、スルーしていい夢を見直すのが得策!
「お休みなさい」
「寝るな、小娘。」
周囲の気温を下げるような、冷たい声に思わず被ろうとした布団をおろしました。……今の、一体誰が言ったんですか?!目があっても天使様は、天使様スマイルを崩しません。え、でも今の怖い声、絶対このヒトだよね?
「あのぅ…、失礼ですが。」
「はい?」
「……夢ですよね?」
天使様は笑顔を崩さず首をかしげました。
「どこらへんが?」
え、どこらへん?
「と、飛んでますし」
「ええ。」
「凄くイケメンですし」
「趣味が良いですね。ありがとうございます」
「………」
会話が通じない………。
「あの、不法侵入って言うんですよ?」
「私は不法に侵入なんてしてませんが?」
ダメだ………日本語が通じていない。
「とにかく、警察に通報しますからっ!」
枕元にあったスマホを手に取ろうとしたとたん、スマホはふわりと宙に浮きました。そのままふわふわと漂って天使様の手の中に………
バキィッーーー
見るも無惨に砕け散りました。
「あぁぁぁ!!!何てことしてくれるんですかぁ!?」
祖父母が年金で買ってくれたのに!!
「没収です。」
没収って言わないですよね?!破壊ですよね?!いくらすると思ってるんですかぁぁ!!
「アナタ、ほんとに天使様ですかっ!?」
怒りのあまり、私はベッドの上に立ち上がりました。真正面から対峙すると、本当に整ったお顔で………いやいや。
「天使様??俺がいつ天使だなんて言いましたか?」
……は?
「俺は、“精霊”ですよ。」
そういって、天使様もとい精霊様は天使様スマイルを私になげかけました。
「………今度は人間の小娘か。」
ボソッと呟かれている言葉と、笑顔のギャップが怖すぎるんですけど!思わず再び座り込みます。
恐怖と混乱とスマホを壊された怒りで睨み付けている私を見て、精霊様から笑顔がスパッと消えました。
「あぁ、悪い。もうめんどくさくて。自己紹介しなきゃいけないことをすっかり忘れていた。許せ。」
キャラが崩壊してませんか?
身の危険も感じて、私はベッドから這い出ると、ドアに向かってジリジリと後退しました。精霊様は首をかしげます。
「……足が不自由なのか?」
………アナタのせいで腰が抜けたんです。
いくらか同情を含んだ声色にフルフルと頭をふります。
まあ、いい。………と、精霊様は咳払いをしました。次の瞬間、顔をあげた私の目に飛び込んできたのは再び出現した天使様スマイル。器用なヒトです。
「おめでとうございます。お嬢様は私の108番目のマスターに選ばれました」
………それさっきも聞きましたし、一人称変わってませんか?
精霊様は私の視線に気づいているのかいないのか、そのまま続けます。
「よって、アナタの願いを3つまで叶えて差し上げましょう」
しばらく部屋の中に沈黙が広がります。
……。
……。
「うさんくさすぎます!警察呼びます!」
頭の上のドアノブに飛び付いて、引っ張りました。……が、
「あれ……開かない??」
そうだ……鍵がかかってたんだった。
「ほんとにどこから入ってきたんですかっ!?」
「逃げるな、小娘。鍵を使ったところで、このドアは開かんぞ。」
……なんですと。
「俺と契約して願いを叶えさせるまで、お前はここから出られない。出ても良いが、後悔するぞ。」
精霊様は綺麗なお顔から一瞬で笑顔を消し去りました。
「やっぱり、信じられません!失礼しますっ!!」
鍵を開けて、勢いよくドアを開けたその先に広がっていたのは……
「……だから、言っただろう」
いつものアパートの廊下ではなく、うっそうと繁った森の中でした。バッサバッサと上空を飛んでいる影は……ドラゴン?
私は無言でドアを閉めます。
何ですか?この、ガッツリファンタジー感の溢れる景色は。
「ここはどこですかッ!」
精霊様は涼しい顔で浮いたまま、ごろりと横になります。
「お前が幼い頃に遊んだ、乙女ゲームとやらの中……」
「遊んでません。」
即答すると、『冗談も通じないのか頭の固い小娘が』と、聞こえたような気がしました。無視です無視。
「……俺の生きてた世界だ。」
読んでいただいた方、本当にありがとうございました!もちろん続きは有りますよ!(打ち込む時間がないだけで) 初めてでしたので、読みにくかったかも知れません。続きはちょこちょこ進めようかと思いますが………本当は、この前にプロローグが存在したのですが、携帯小説では向かなさそうですので、間に挟みたいと思います♥