第1話
3日前僕の父と母は亡くなった。
交通事故だった。
父の運転していた車で。
全く予想だにしない突然の出来事だった。
父は長年車を運転していてこれまでずっと無事故無違反だったのに…。
僕の妹、京香は父母が亡くなった日病室でわんわんと泣いていた。
父母は事故後救急車で手術室に運び込まれたが生き返ることはなかった。即死だった。
僕と妹は事故の知らせを警察から聞いた後、病院にタクシーを飛ばした。
病院のロビーで僕達が無事を祈っていると母の妹の節子さんが蒼白な表情で僕達のところに来た。
「道信君…。お父さんとお母さんは今…。」
「…手術室です…。」
僕は俯いたままそう言うのがやっとだった。
京香は俯いたまま両手を組んでシクシクシクと泣いている。
僕と京香と節子さんはうなだれたまま家に帰った。家の前には車が止まっていて節子さんの夫の義男さんが来てた。
「信雄君…。今…病院から戻ってきた…。大変なことに…。」
「…はい…。大丈夫です…。僕は…。」
と答えたが足下はフラフラしてた。京香は蒼白な表情をしたまま俯いてる…。
僕達は僕の家に入った。
「まさか英信君と由紀子さんが…。葬儀は後日執り行おう…。」
英信と由紀子というのは父と母の名前だ。
「はい…。」
節子さんは両手で顔を覆い涙を流している…。
京香は部屋の隅で膝を抱え顔を埋めて泣き続けている。
これは現実なのだろうか…。僕は信じられない信じたくない気持ちだった。
ーーー
次の日の朝。
僕は目を覚ますと台所からトントントンという音が聞こえてきた。
台所に行くと節子さんが朝食を作っている最中だった。
「おはようございます。」
「おはよう。道信君。昨日はよく眠れた?」
「は…はい。」
僕は答えた。正直そうではなかったが…。
庭に面した木造りの床に京香が腰を掛けてた。この家は木造の一軒家。
彼女は手を膝の上に置いて俯いたままだった。
「おはよう。京香。」
僕は声をかけた。
「…おはよう…。」
彼女はかすれたような声で呟いた。