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3騎 聖スクイレル教会

 白銀の守護者としては2年前が最盛期で、騎士を始めとして60人のプレイヤーが参加していた一大勢力であった。

 しかし、過疎化や派閥抗争などで、一人抜け二人抜けしている内に、今ではその栄光も過去のものとなりつつあった。


 アインツは、そのような中でも、初期メンバーとしてパーティの歴史を知ることや、騎士の中でも抜きん出た戦闘力から、次第にパーティを取りまとめるポジションとなり、パーティの最後の崩壊を防ぐべく、三代目リーダーとして統括する立場となった。


 ちなみに、初代リーダーのタケマルは、海外出張中で無期限隠居。二代目リーダーには五九郎丸という戦士がいたが、現実世界の結婚を機に引退している。


 当時の賑やかな感じとまではいかないものの、それでもこんな風に、笑い合って冒険ができるようになったことは、アインツの喜びの一つといえた。


「皆さん、そろそろフィールドに到着します。てろてろさん、エレベーターの出口は、最初のリスポーンポイントとなる、聖スクイレル教会とつながっています。はぐれたりした時には、教会がセーフティエリアになっているので、そこで待っていてくださいね」

 

 下りのエレベーターの中、アインツの説明に、初心者のてろてろが頷く。

 

「教会の中で、冒険の準備をするので、今はそんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」

「は、はい! ちょっと、頑張ります!」

「てろてろさん、リラ~ックス、リラ~ックスっスよ~」

 

 念のため、アインツはてろてろのステータスを確認する。

 

 個体名 てろてろ(てろてろ)

 レベル 1

 種族 人間(女)

 ギルド ローテフェザー(ゲスト)

 パーティ 白銀の守護者

 階級 戦士

 身長 153センチ

 HP 51(極小クラス)

 MP 0(極小クラス)

 SP 20(極小クラス)

 攻撃力 21(極小クラス)

 防御力 18(極小クラス)

 敏捷力 15(極小クラス)

 属性 なし

 特殊能力 武器扱い。

 

 ローテフェザーのゲストプレイヤー。

 称号:白銀の守護者(スリード王国)

  攻撃力+(パーティ)

  防御力++(パーティ)

  聖属性効果+(パーティ)

  王家との親交+(スリード王国)

  国民影響+(スリード王国)

 

(なるほど、特化はしていないステータス配分か。

 この間のアップデートで、性別と説明文が追加されたからなぁ、便利になったものだ)

 

 併せて、アインツ自身のステータスも確認した。

 

 個体名 アインツ(アインツ・ヴァイ・ドライ)

 レベル 97

 種族 人間(男)

 ギルド ローテフェザー

 パーティ 白銀の守護者

 階級 聖騎士

 身長 176センチ

 HP 20,541(極大クラス)

 MP 11,298(極大クラス)

 SP 18,220(極大クラス)

 攻撃力 15,919(極大クラス)

 防御力 22,300(極大クラス)

 敏捷力 12,433(極大クラス)

 属性 聖、光

 特殊能力 チャージ(槍)、完全防御、魔法耐性、回復(聖)、統率。

 

 白銀の守護者リーダー(三代目)。

 称号:白銀の守護者(スリード王国)

  攻撃力+(パーティ)

  防御力++(パーティ)

  聖属性効果+(パーティ)

  王家との親交+(スリード王国)

  国民影響+(スリード王国)

 

(タケマルさんと一緒にプレイしていたころに比べたら、だいぶ成長したかもしれないなぁ)

(レベルも、100までもう少しか)

 

 アインツが物思いにふけっていると、かすかな振動とともにエレベーターの浮遊感がなくなる。

 ドアが開くと、そこにはロマネスク様式を模した、石造りの、剛健でかつ荘厳な雰囲気のエントランスホールが広がっていた。


 天井が高く、広さも十分なエントランスには、数チームのパーティがそれぞれ準備や休憩を行っていた。


 冒険者仲間において、腐っても鯛。白銀の守護者は今でもそれなりの認知度のあるパーティである。

 親しく挨拶をする者、ライバル心を燃やす者、憧憬の念を向ける者と、それぞれの視線と想いが、アインツたちに向けられる。


「いよぅ、アインツ。今日はこれからか?」


 筋骨たくましい姿を自慢するかのように、申し訳程度にしか防具をつけていない重量級の戦士が、アインツに話しかけた。


「ガンツさん、どもです。一戦やってきたんですか?」

「いやー、もう三戦してきて、今インターバルだ」

「それはハイペースですね」

「だろー? 来月にはボディビルの大会があるしな、今は筋肉をいじめて追い込む段階だから、気合い入れねえとな」

 ガンツの大胸筋が、ヒクヒクと波打つ。


「プロは大変ですね」

「趣味だよ、趣味。そういやあ、見ねえ顔がいるな。新人か?」

「体験で参加した、てろてろさんです。今日は、第1階層でのんびりするつもりです」

 てろてろが軽く会釈をし、ガンツが右手を上げてそれに応える。


「そっか、新人さんは、大事にしねえとな。ま、昔みたいにイベントででもなけりゃ、高レベル魔神なんて上層では出てこねぇだろうからな、頑張んな、お嬢さん」

「は、はいっ、頑張ります!」

 ムキムキの筋肉ダルマに声を掛けられ、返す声も裏返ってしまう。


「ガンツさん、あまり気負わせないでくださいよ」

「ハッハハハ! すまねすまね」


 ガンツは豪快に笑うと、他のメンバーにも軽く挨拶し、自分のパーティが集まっている場所へ戻って、身支度を再開した。


「あの方とは、仲良いんですか?」


 てろてろが、少し緊張した面持ちで、クーネルに質問する。


「白銀の守護者の、初期メンバーの一人だったんです。ぼくも昔はよくお世話になりました。ボディビルの大会で何回も賞を取っている凄い人なんですけど、護衛任務をメインにしているウチでは、方向性が違うということで、もっと厳しい、討伐任務をメインにしたパーティを作って、独立されたんです。

 確か、暁の殲滅者って言っていたかな」

「今でもたまに、ギルド戦とかで一緒のチームになるので、その時は頼れる戦力ですよ」


「でもちょっと、ここのフィットネスって、最近ですよね。そんなに昔から?」

「あー、そうですね。フィットネスに看板を架け替えたのが、半年前くらいですかね。

 元々、リアビューシステムを使ったサバイバルゲーム仲間が集まる居酒屋だったんですけど、地下放水路をフィールドとして使えるようになってから、ファンタジーRPGの世界で冒険できるようにも改修したんです。

 それも、正式リリースとしたら、4年くらい前ですかねー。ベータ版も入れれば、5年はプレイしてるでしょうか」


 クーネルの説明に、白衣のヒーラーが割り込んでくる。


「リアビューシステムも、当時は革新的なゲームといわれたもんじゃがの。かなりバージョンアップが進んでリアルさが増したとはいえ、生き死にの戦場を、フィットネスとは笑わせよるわい」

「エレーナさんみたいに古株の人からしたら、フィットネスクラブより、昔の体感ゲーセンみたいな雰囲気が良かったのかもしれませんけどね。

 まあ、フィットネスと言っておけば、健康志向の高いターゲットにリーチする、なんてことをギルドマスターが言ってましたから」

「打算であるが、それもヒジネスゆえじゃ。これも時世の流れゆえかの……」


 ギルドは、アビスクロニクルの運営拠点のようなもので、フィールドに入るための入り口をそのまま酒場にしており、そこがプレイヤーの本拠地となる。

 他に、都内だけでも数か所ギルドが存在し、それぞれの地域からフィールドにプレイヤーを送り込んでいる。


 プレイヤーは利用する入り口によって、所属するギルドが決定し、アインツは、この街のギルドローテフェザーの一員として、アビスクロニクルに参加している。

 

 当然、同じギルドに所属せず、いろいろなギルドからアビスクロニクルに参加することはできるが、ギルドが定まらないプレイヤーは、ゲストプレイヤーとして参加することになる。


 プレイに参加する際、ローテフェザーはこの聖スクイレル教会が、出発のベースとなる。


 基本的な装備は、ギルド内で準備できるが、ここでは、冒険に役立つアイテムや、様々な説明をまとめた本などが置いてあり、地上行きエレベーターを使わずに、ある程度の準備ができるようになっている。

 

 ガンツたちのパーティが、冒険と補給を繰り返せるのも、教会の設備があってのことだ。


 教会内は、中央にエントランスロビーがあり、ここを集合場所にするパーティが多い。


 教会にはシステム上、アビスクロニクルのNPCやモンスターは入れないようになっており、たとえモンスターに追われていたとしても、絶対不可侵のセーフティエリアとして機能する。


 特に、ゲーム上HPが無くなり、ゲームオーバーとなったプレイヤーは、セーフティエリアに戻ることで、ゲームが再開。再び生を得ることができるようになっている。


 セーフティエリア外でも、HPの自動回復はできるが、一度死んだ者扱いされたままでは、その自動回復も機能しないため、リスポーンポイントとなる教会へ戻ってくる必要がある。


 リスポーンポイントは、このスタート地点の聖スクイレル教会以外にも、王城や、階層横断地点の町などに設置されているので、フィールド奥深くまで進んだプレイヤーは、最寄りのポイントを使えるようにはなっている。


 教会内の他の部屋では、冒険用装備の予備として、バックパックや水袋、ランタン、たいまつやロープなどの雑貨、回復薬や解毒薬などのポーション類や、簡易的に魔法を封じ込めたスクロール、当然、人が傷つかないような加工をしているものだが、補充用の矢や投げナイフなども売買している。


 これらの品々は、プレイ中にゲットできる報酬や、モンスターがドロップするアイテムから換金して、そのお金で買うことになる。


「さて、こちらも準備ができたら、そろそろ行きましょうか」


 装備の確認をし、準備が整ったことをお互いが認識しあい、パーティの5人が揃う。

 教会の正門、両開きの正面扉を押し開ける。


 冒険が、始まる。

 次回、ついに冒険が始まるというお話です。

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