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3白 白銀の守護者

 お互い致命傷には至らないものの、徐々にダメージを蓄積させていく。

 タケマルもアインツも身体中に乳酸がたまっていくのを感じ、ダメージ以上に疲労度が上がっていく。

 汗は滝のように流れ、荒らげた息も治まる気配がない。腕が重い。脚が上がらない。

 

 それでも戦闘の緊張感と、実際に身体を動かしている事が充実感を高めていく。

 日頃の社会では感じられない、ぎりぎりの戦いに身を委ねている高揚感がそこにはあった。

 

 リバーモアが角を振り回し、アインツがそれを防ぐ。

 その隙にタケマルが拳を当てていく。

 

 そんな攻撃が延々と続くかに思われたその時。

 

「アローシュート!!」

 

 アインツたちの後背から、複数の矢がリバーモアめがけて飛んできて魔神に突き刺さる。

 

「待たせたな、リーダー!」

 

 豪放磊落ごうほうらいらくな笑い声と共に、筋骨隆々とした男がバトルアックスを構えて突進してきた。

 その後ろから矢を放ったシューターらが加わる。


 アインツは彼我の戦力差を確認するため、ガンツのステータスをチェックする。

 

 個体名 ガンツ(ガンツ・ブロット)

 レベル 90

 種族 人間

 ギルド ローテフェザー

 パーティ 白の護衛隊

 階級 剣闘士

 身長 190センチ

 HP 18,121(極大クラス)

 MP 589(小クラス)

 SP 3,588(中クラス)

 攻撃力 15,301(極大クラス)

 防御力 12,316(極大クラス)

 敏捷力 8,201(大クラス)

 属性 なし

 特殊能力 武器強化(斧)、斬撃強化、防具強化、唐竹割り。

 

「ガンツさんたちお待ちしてました! 最後チャチャっとやっちゃってください!」

「おうよ、つってもやっこさんももうヘロヘロじゃぁねぇか。だいぶスタミナが切れてるみたいだぜ」

「それはこちらもですけどね、結構ギリギリでした」

「あともう少し頑張りましょう!」

 

 ガンツが両刃のバトルアックスを横薙ぎに払うと、リバーモアの右側の角が宙に舞った。

 

 後は一方的な戦いだった。


 リバーモアの攻撃は、徹底的に防御に徹したアインツがことごとく防ぎガンツのバトルアックスが反撃を加える。

 タケマルの攻撃がリバーモアの集中を切らせ、ターゲットを定まらせないようにする。

 ガンツと同じくして合流したメンバーや戻ってきたメルクリウスの間接攻撃が、リバーモアの動きを封じる。

 

 最後にガンツが唐竹割りを一閃。勝負がついた。


 アビスクロニクルでは、倒したモンスターや達成したミッションから得られる経験値から、プレイヤーレベルが上昇する仕組みになっている。


 レベル1から20までは、見習いプレイヤー。

 あとは20ごとに、21から40は初級、60までで中級、80までが上級、81から100が超級クラスとなっている。

 

 単純に、レベルが高いほど強いという訳ではなく、5レベル差くらいでは勝敗もひっくり返ることがあるが、おおよその目安として、強弱を測るのには適している。

 

 ただ、各クラスにはそれなりに強さの壁があり、見習いプレイヤーだけでは、10人いても初級モンスターに太刀打ちできないが、そのパーティーに初級プレイヤーが一人でもいれば、互角に戦えるくらいのゲームバランスになっている。

 

 逆に言えば、自分と同等かそれ以下のレベルのモンスターを相手にしていれば、そうそう負けたりしないように調整されているし、出現エリアや出現シナリオが特定されているため、危険地帯や深い階層に行かなければ強いモンスターは出てこないようになっている。


 そのため、リバーモアのレベル76はモンスターとしては強力ではあったが、ランクとしては上級に当たる。

 アインツたちは80オーバーの超級クラスが3人もいるので、単純な戦闘ではリバーモアに負ける理由がなかった。

 ただ、令嬢を護衛するという任務とそのNPCたちの戦闘レベルが低かったため、一種の縛りプレイのようなものになった点は否めない。

 

 当然これらはゲーム内でのステータスであり、攻撃時や防御時のダメージ計算に係数がかけられることにより強さが表現されるのであって、リアルでの筋力が反映されるものではない。

 リアルでは格闘家をしている筋骨隆々のレベル1ファイターが、虫に襲われてあっさりゲームオーバーになって教会送りになることもある。

 

 しかしながらプレイがリアルに影響しないかといえばそうでもなく、太刀筋や回避のステップワークなどは剣技や武術の動きを取り入れたものだったりするし、長距離を走破することもあり、トレッキングに近い運動で心肺機能を高めることもできる。戦闘では動体視力を鍛えることもでき、集中力を高めることもできる。

 

 現実に近い戦闘体験は、命がけに等しい緊張感を持たせ精神的にも肉体的にも大きく成長することができる、と公式サイトには書いてあった。

 

 プレイヤーの中には、野球の試合で打率が上がった、ボウリングでターキーを取れたなどという者もいたので、なかなかどうして、効果が期待できるかもしれない。

 

 尚、システム上レベル100が最大値であり、それ以上経験を積んでもレベルの上昇は無い。


「さてと、ご令嬢は無事お送りできましたか?」

 アインツに尋ねられたメルクリウスが、オーケーサインを出す。

「では、こちらのイベントは事後受注ということで処理してもらいましょうかね」

 アインツたちは、ひとまず休憩を取るためにモロボの町へ向かった。



 数日後、アインツたち白の護衛隊のメンバーが王都に召集された。


「なんでも今回のご令嬢が王家に関係する重要なキャラだったみたいで、護衛したことに加え魔神を撃破したということも併せて国王から報奨が出るみたいですね」

「へえそれはすごい。国王陛下をまだ見たことがありませんからね」


 王都ケイティパレスの目抜き通りの喧騒けんそうをかき分け、アインツたちは王城へと向かった。


「白の護衛隊の皆様でございますか」


 城の門には武骨な門兵の他に、華美ではないものの身なりを整えた老人が立っており、アインツたちを迎えた。


「謁見の間にて陛下が報奨を下賜くださいますので、皆さまはこちらにてお支度をお願い致します」


 控えの間で身なりを整えたアインツたちが案内されると、そこは豪華な装飾が品よく施された広い部屋に通される。


「奥に見えるのが、王様かな」

 タケマルがアインツに話しかけるが、私語を大臣にたしなめられる。


「国王陛下にあられられましては、ご機嫌麗しゅう存じます」

 聖騎士ということで、アインツが代表として挨拶あいさつを行う。

 パーティのリーダーはタケマルだが、対外的な交渉事などではアインツが表に立って対応することが多かった。


直答じきとうを許す。ちこう寄れ」


 国王がアインツたちに声をかける。

 国王という身分の者に一介の冒険者が言葉を交わすことはm常識的に考えてあまり考えられないことではあった。


「今回はかの娘の命を救い、また村を滅ぼすほどの強力な魔神を退治したこと、まことに見事」

 国王が話す間、アインツたちは片膝をついて下を向いている。


「スリード国王ブラッカ・ランドルス・ダム・クリング三世より、そなたらに称号を与える。

 これよりは、白銀の守護者と名乗るがよい」


 アインツたちがかしこまっていると、ステータス画面に称号追加の表示が現れる。


 アビスクロニクルのベータテストでは、パーティ名や称号といった副次的なステータスがアップデートで実装されたこともあり、こういったミッションが増えていた背景もあった。

 

 称号を得ることによってドロップアイテムの質が上がったり、呪文の効果が数%上乗せになったりといったボーナスがあり、無印のパーティとの差別化が始まっていた。

 

 アインツら白銀の守護者の他にも、超級を擁するパーティは数チームあり、ローテフェザーの中にも、全部で5チームあった。


 また、お約束ではあるが、イベントや課金によってレベルを上げることも可能であるため、剣の扱いがいまいちな高レベルプレイヤーがいてもゲームそのものには影響はなかった。

 そのため、ドロップアイテム狙いや経験値稼ぎなどで、高レベルプレイヤーのいるパーティが人気となるのも他のゲームと同様である。

 

 そうして、強力なパーティが数多く出てきたものであった。

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