(16)仲間の存在
<第44話>
夏の合宿も終わり、開幕戦まで残り2週間。秋季リーグ戦は、2か月の日程で行われる。計6チームでのリーグ戦であり、2か月の間に各チームは5試合を行う。通常のリーグ戦であれば、順列(昨年成績)1位のチームは、開幕戦で順列6位のチームと対戦した後、順列5位、順列4位と順番に対戦し、最終節は順列2位のチームと対戦する。徐々に相手が強くなっていくイメージだ。そのため。開幕戦にピークを持っていくのではなく、最終節にチームが完全に仕上がるよう調整する。
逆に、昨年最下位で順列6位のうちのチームは、開幕戦で順列1位のチームと対戦し、徐々に上位チームから下位チームへの対戦へと移っていく。したがって、開幕戦にピークを迎えるようチームを仕上げる。そのため、夏合宿でいったんチームは仕上がり、後の2週間はシステムやプレーの再確認が中心となる。もう実戦形式のフルタックルの練習はなく、ハードヒットなしの練習メニューも増えてくる。
「北都大は、2部リーグが終わった後の1部リーグ入替戦を照準にしているはずだ。今頃は、まだ激しく鍛える練習をしているかもな。開幕戦まで、どこまでチームを仕上げてくるか。そして、通過点に過ぎないうちのチームについて、どこまで対策してきているか、楽しみだな。」柏木リーダーが話しかける。
「油断してくれるとありがたいが、一応春のオープン戦は1勝1分で去年とは見違えるチームになっているから、それなりに対策してくるだろう。1部復帰のためOBや学生コーチも本気みたいだから、相当スカウティングされていると思った方がいい。」主将の高橋が返す。
「正直、去年のシーズンが終わった時は絶対に借りを返してやると誓ったものの、ここまでのチームになるとは想像出来なかったよな。」柏木が続ける。
「そうだな、児玉、朝長、多田を中心に、チームに欠かせない存在になった。大学生活のこの夏休み、旅行だったりバイトだったりと大学生活を謳歌しているやつも多い中、愚痴も文句も言わずに、俺達の夢に向かってついてきてくれる仲間達、そして後輩達のおかげだよ。すごいと思わないか?金のためでもなく、義務でもなく、ただチームの勝利のために、己の成長のために、毎日こんなに一生懸命頑張ってくれる仲間達がこんなにいるんだ。」
高橋は熱くなる。
「そうだよ。だから、こんな俺たちについて来てくれる仲間達のためにも、絶対に勝たなければならない。そのためには、俺達が戦術を、プレー選択を、状況判断を絶対に誤っていけない。正しく導かなければならないんだ。みんなが犠牲にしている全てのものを、俺達は背負わなければならない。責任は重大だ。」柏木も熱くなる。
「その責任を負う覚悟があるからこそ、このチームを作ったんだろ?俺達は。だから、最後までその重みを背負って、戦おうじゃないか。」高橋と児玉は笑みを浮かべる。
「今日は、部室で夜9時から戦術ミーティングを行う。幹部以外は自由参加だ。夜飯をしっかり食べてから、参加するやつは集まってくれ。」
高橋の声が、練習後のグラウンドに響きわたる。
<第45話>
夏休み期間中なので、練習は16時には終了した。夜21時からの戦術ミーティングに参加しようと、早めに帰宅した。シャワーを浴びて、夕食を食べてからまた部室に戻る予定だ。帰宅途中、僕の携帯電話がなる。
「お、宮脇。良かった。つながった。」高校時代の同級生だ。高校時代まではサッカー部に所属していたが、今はテニス系のサークルとバイト中心の生活らしい。高校時代はそれなりに仲は良かったが、大学に入ってからは少し疎遠になった。
「今日20時からさ、女子短大と合コンなんだけど、急に男が1人足りなくなってさ、急で悪いけど、今日来られないか?」合コンの誘いだ。
「今日?悪い、部活のミーティングがあるんだ。」僕が答える。
「夜にミーティング?そんなわけないだろ。頼むから来てくれよ。」相手が食い下がる。
「いやいや、試合が近いからマジでミーティングだよ。」僕がさらに答える。
「じゃあさ、今週末にも大学生と合コンあるんだけどどうだ?アメフトもいいけど、たまには息抜きしようぜ。」さらに僕を誘ってくる。
「来週から試合が始まるから、当分は遠慮しておくよ。悪いけど、他を誘ってくれ。ごめんな。」僕が断る。
「おいおい、冷たいなー。なんだよそれ。もっと友達を大切にしろよ。友達いなくなったら寂しいだろう?」嫌味なやつだ。
「だから悪いなって。ホントごめん。でも俺、大事な時期なんだ。だから、また誘ってくれ。じゃあな。」これ以上構われたくない僕は、一方的に電話を切った。
「俺、友達がいなくなるのかな・・・」
一方的な相手の言いぶりにカチンと来たものの、そういえば、アメフト部員以外の人との触れ合いが減ってきているし、高校時代の友達とも全然連絡とっていないことに気がつく。
「そうだよな。俺が大学に入る前に描いていた生活のイメージと、実際の今の生活のイメージ、全く違うもんな。」しみじみと想いを巡らす自分がいた。
少しやさぐれかけた僕だが、21時のミーティングに間に合うように部室に集まった。1年生を含めて、多くの部員達が集まっていた。
「おっ、宮脇。お前も来てくれたか。ちゃんと飯食ってきたか?」高橋が笑顔で迎える。
「はい。腹いっぱい食ってきました。」僕が答える。
部室に漂うこの雰囲気。悪くない。いや、最高だ。
俺には、大学に入ってから、遊ぶ友達はあまり増えていないかもしれない。でも、同じ目標に向かって、わかり合え、分かち合える、素晴らしい仲間と戦友がたくさん増えた。
これが俺の青春だ。




