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(11)先制点

<第30話>


 児玉が激しくタックルされ、フィールドに叩きつけられた。今まさに投げようとしていたボールは、児玉の手からこぼれ落ち、地面を転がった。フリーボールだ。ボールを確保した方が、攻撃権を得るが、運よく転がったボールは高橋が押さえた。7ヤードのロス。

「おい、大丈夫か?」高橋、そして朝長が児玉に駆け寄る。

「だ、大丈夫です・・・」声を絞り出し、児玉はなんとか立ち上がろうとする。

「無理に立ち上がるな。時間切れで反則になる。倒れたままでいろ。」高橋が命令する。

 児玉はフィールドに横たわったままでいると、審判が笛を吹く。

「レフリータイムアウト」負傷者のためのタイムアウトだ。

 ベンチにいた柏木リーダーの指示で、僕達1年生とマネージャーが児玉に駆け寄る。児玉は自分で立ち上がり、僕の肩に持たれかけながらゆっくりとベンチに歩き出す。

「宮脇、ゆっくりとフィールドを出ていけ。ゆっくりだぞ。時間をかせげ。」高橋が僕にささやく。

 児玉が無理に立ち上がると、40秒ルールが開始されるため、高橋は児玉を無理に立ち上がらせずに、審判に時計を止めてもらうことを選んだ。そして、動揺する朝長を落ち着かせ、自分もQBとして次からのプレーの組み立てを頭の中で整理するため、ゆっくりと時間をかけるよう指示を出した。高橋は冷静だ。

 ボールは自陣に戻され、2ndダウン17ヤード。

「パスコースはガラ空きだ。左スロットIから、5ドロップのパス。右からポスト、アウト、ポスト、コール1。レディ」高橋の指示に全員で応える。

「ブレイク」

 高橋は、相手チームがパスカバー出来ていないのを見て、先のプレーと左右反対の同じプレーを選択した。


 朝長は、「対面の選手に気を取られ過ぎた。あの外側への膨らみは、内側を開けるための連携プレーだったんだな。ただパワーが強いだけじゃダメだ。もっと視野を広く、もっと週中しろ!」自分に喝を入れる。


 児玉はセンターからボールを受け、5歩ドロップバックで下がり、相手DBの3人の動きを見極める。相手FSは過剰に動かず身構えている。

「よし、空いた」

 高橋の目には、通すべきパスコースが見えていた。パスを投げる体勢を取ろうとした時、今度は左サイドのLBがオープンからブリッツをしかけていた。 



<第31話>


 2ndダウンロングのパスシチュエーション。オープンからのブリッツは、十分予測出来ていた。高橋は、パスを投げる体勢に入るその瞬間、自分に迫りくる守備選手はいないか確認した。自分の死角となるブラインドサイド(左側)からLBが突き進んでくるのが見えた。OL陣は崩されていない。スクランブル(緊急発進)だ。外側からブリッツしてくるLBをRBが外側に弾くようにブロックしたのを見た高橋は、朝長とRBの間のスペースを確認し、自ら駆け上がる。

 スクリメージラインを越えてトップスピードに乗った高橋は止められない。左サイドライン沿いを縦に走り抜け、相手DB陣にサイドアウトに追いやられるまで、25ヤードのロングゲイン。敵陣30ヤード地点まで切り込んだ。

 サイドラインに追いやられた高橋のもとにベンチで休んでいた児玉が駆け寄る。

「ナイスランです!」

「児玉、いけるか?」高橋が確認する。

「いけます!」児玉がフィールドに戻る。


 高橋は熱くなりかけた頭を冷やし、落ち着きを取り戻す。中央の遅いランプレーで5ヤード、WRへのショートのパスで5ヤード進み、リズムよく新たな攻撃権を獲得。敵陣20ヤードに迫る。

 「さっきのスクランブルもあり、ここでブリッツはない。右スロットIから、5ドロップのパス。右からポスト、イン、ストレート、コール1。レディ」「ブレイク!」

 右WRとSB、FSがカバーに来ない方がターゲット。児玉はセンターからボールを受け、5歩ドロップバックで下がり、相手DBの3人の動きを見極める。FSの動きが中途半端だ。右WR、SBともにどちらもカバー出来ていないようであり、カバー出来そうでもある。迷いが生じる。第3ターゲットの左WRを見ると、CBのカバーが甘い。今までポストパターンが続いており、今回は一瞬のポストへのフェイントに相手CBは大きくひっかかり、結果としてカバーが甘くなったものだ。


 自分に迫りくる守備陣はいない。仲間達のパスプロテクションは完璧だ。児玉は持ち前の肩の強さと投力を発揮し、エンドゾーン(相手ゴールエリア)目がけてこの試合初のロングパスを投げ込む。相手守備陣の迫りくるプレッシャーがなければ、パスには自信がある児玉だ。20ヤードのパスが成功し、児玉は人生初のタッチダウンパスを経験した。

 決める時は決める。決定力を感じさせるパスだった。しかし、見た目は華やかなロングパスだったが、第1、第2ターゲットへ投げられず迷いが生じていたこと、迷いながらも味方のパスプロテクションが完璧だったから投げられただけであって、もっと判断力を速めなければいけないことを痛感していた。


 児玉の顔に、大きな笑みは浮かばなかった。



<登場人物>

・宮脇拓哉/みやわきたくや

 …主人公(僕)。1年生。LB(守備)。

・児玉悠斗/こだまはると

 …1年生。アスリートで自信家。QB(攻撃)

・朝長幹男/ともながみきお

 …1年生。巨漢。AKB好き。OL(攻撃)兼DL(守備)

・高橋湊斗/たかはしみなと

 …アメフト部主将兼オフェンスリーダー。4年生。RB(攻撃)。

・柏木行雄/かしわぎゆきお

 …アメフト部副将兼ディフェンスリーダー。4年生。LB(守備)

・前田奈津子/まえだなつこ

 …4年生。主務兼女子マネージャー。

・大島陽子/おおしまようこ

 …1年生。女子マネージャー。


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