93.言いにくい悩みごと、遠慮せずに話してよ
6月最初の月曜日。
食後のお茶をミセスブラウンが運びながら言った。
「お嬢様、明日はクリフトス様のお誕生日でございますが、プレゼントはこちらでご用意をいたしますか?」
「クリフ様の誕生日? 明日なの?」
「はい。こちらは、お嬢様のお誕生日プレゼントを下さった方でございます」
受け取った紙はリストになっていて、誰から何をいただいたのか記載されている。
あれ?
私、ルカ先生からいただいたこと、話していないのに書かれているわ。
ちょっと怖いよ。
って言うか、ほとんどが知らない人の名前だ。
お付き合いで送られてくるものなのね。
これ、いただいた方の誕生日に全部送り返すのかな?
「そうね。直接いただいたことですし、今年は私がプレゼントを選んでお渡しします」
「かしこまりました。アレフレッド殿下には昨年同様、テディーベアを作成しております」
「ええ、お願いします。それと、印をつけた方の誕生日を教えてください。私が直接お渡しいたしますわ」
「かしこまりました」
さて、攻略したとは言え、全キャラの誕生日は覚えていないし、プレゼントもシャムエラが渡す物と同じでいいはずがないよね。
どうしようか。
私は一気に紅茶を飲み干した。
「お嬢様! 何ですか、その品の無い飲み方は。もっと優雅にお飲みくださいませ」
「はーい。ごちそうさまでした。いってまいります!」
カップを置くと、私は慌てて部屋を飛び出す。
後ろからミセスブラウンが叫ぶ声が聞こえていたけれど、知ーらない。
歩きながら、プレゼントについて考えていた。
変な物は渡せないし、シャムエラのプレゼントと被ったらライバル令嬢っぽい。
毎月誰かの誕生日はあるし、やっぱりミセスブラウンに頼んじゃおうかな?
「おはよう! リリアーナ」
「おはようございます。シャムエラ様」
横道からシャムエラが顔を覗かせていた。
「どうかしたの? 悩んでいるように見えたよ」
「ええ。明日、クリフ様のお誕生日なのですが、プレゼントをまだ用意していませんでしたの。何をお渡ししようか、考えていたところですわ」
「クリフトス様って明日が誕生日なんだ」
「そうなんです。シャムエラ様はプレゼントされるのですか?」
「私? しないよ」
キョトンとした顔でシャムエラが言う。
クリフ様狙いじゃないから渡さないんだ。
「あのね、リリアーナ」
「はい」
「あの、ね……」
言いにくいの?
鞄を握りしめ、シャムエラは落ち着きなさげだ。
「どうかしましたか? シャムエラ様?」
「うん。あの……っく」
「く?」
「ああああ~と、アレフ様のお誕生日っていつなのかな?って思って。うん」
「6月28日ですわ」
「あ、そうなんだ。今月なんだね。あはは」
「ええ」
「はは……ははは、はぁぁぁ」
「シャムエラ様?」
大きくため息をつき、シャムエラは華組の教室のドアを開けた。
「何でもない。またね、リリアーナ」
「ええ。ごきげんよう」
教室に入って行くシャムエラを見送り、私も自分の教室に入る。
シャムエラ、違うことを聞きたかったのかな?
それとも本当にアレフ様の誕生日を知りたかっただけ?
授業が終わり寮に戻った私は、クリフ様の誕生日プレゼントはミセスブラウンに頼むことにした。
クリフ様には悪いけれど、アレフ様の誕生日プレゼント選びに専念しよう。
テディベアは毎年贈り合う約束になっているからいいとして、他に何かインパクトがある物はないかな?
アレフ様と言えばスポーツが好きだからスポーツに関連するグッズがいいんだけれど、実際のアレフ様はスポーツと言うより冒険好きよね。
冒険する時に役立つアイテムって何だろう?
「ねぇ、カナン。冒険のお役立ちアイテムって何かあるかしら?」
「冒険の、でございますか? 誰がお使いになるのでしょうか?」
「アレフ様よ。誕生日プレゼントにどうかと思って」
「アレフレッド殿下……。そうですね。護符なんていかがですか?」
「アミュレット?」
MSGにそんなアクセサリーがあった。
確か、ステータスが増減するのよね。
「お守りでございます。何個あってもいいと思いますよ。落としやすいので」
「それって、暗にいらないって言ってないかしら?」
「冗談でございます。種類も豊富でございますし、護符ならロナウド様かルーク様に頼むと良いアドバイスを頂けるでしょう」
嫌な笑顔でカナンは言うが、他にいいと思える物は無かった。
「ありがとう。後でお兄様に相談してみるわ」
お守りなら神様よね。
ロナウドお兄様に相談してみよう。
どんなものがあるのかな。
お読みいただき、ありがとうございます。




