表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エクリプス  作者: 元蔵
第1章 全身全霊をかけてあなたに恋します
9/98

9.努力して頑張っても報われないときってツラいよね

 クラウディオ様はすぐに出て行ってしまい、私は何とも言えない空気の中にいた。

 何て言っていいのかわからないけれど、不安が募る。



「食べないの?」


「え?」



 気付けば、食事が用意されていて、既にアレフ様は食べ始めていた。



「いえ、いただきます」



 サラダのトマトをフォークで口へと運ぶ。

 中々食指が進まず、私はフォークを置いてアイスティーを手に取った。



「ああ。そう言えば婚約者フィアンセだもんな。ビックリした?」



 ふと、思い出したかのような言葉が来た。



「ええ。クラウディオ様もあんなにお怒りになっていましたし」


「兄上が怒るのはいつものことだよ。気にするな」


「気にしますわ。それに、冒険者ってご職業を初めて聞きましたし」



 アイスティーのグラスを置き、フォークでベビーコーンを突き刺す。



「リリーは、ソルシティから出たことが無いんだろう? ここら辺はあまりいないけど、山の近くや辺境に行くとモンスターがいるんだよ。小さい町や村の被害報告もあるんだ」



 ソルシティとはソルーア王国の首都であり、エストレイラ学園のあるこの街の名前だ。



「え? モンスター? ……被害って、人が襲われたりするの?」


「そうだよ、って食事中にする話じゃないか、悪いな」



 視線をずらし、コーヒーを飲むアレフ様はゲームで見るよりも大人びて見える。

 ベビーコーンの先を小さく齧った。

 かすかな塩味の後から仄かな甘さが広がる。



「そう言えば、何か話があるんじゃなかったか?」


「あ……」



 忘れてた。

 驚いた所為か、リリアーナを演じることも忘れてしまっていた。

 冒険者やモンスター、魔法と剣だなんて、まるでMSGみたいだ。

 

 

 フォークを置き、姿勢を正す。

 折角アレフ様から振ってくれたんだもの、頑張れリリー。



「あの、来週に行われる新入生歓迎ダンスパーティのエスコートをまだ頼んでいなかったのを思い出したのです。お願いできますか?」



 そして、柔らかく微笑む。

 今朝、何度も練習した『令嬢の微笑み』だ。

 スッとアレフ様の頬が朱色に染まる。

 効果は抜群だ!

 

しかし。



「ダンス……。俺、パーティ欠席するから他当たってくれ。」


「ありが、え? 今、なんて?」



 断られたの?

 婚約者なのに、なぜ断るの?

 もしかして、もう主人公と?



「ダンスなんて踊るの恥ずかしいじゃないか。俺は無理。クリフにでも頼めよ」


「ええ? こ、困ります! それに、ダンスパーティは新入生全員参加ですのよ。欠席なんてできないのですよ?!」


「俺は病人になるからいいんだ!」


「そんなこと、許されるハズありません!」


「とにかく、俺は絶対休むからな。話がこれだけなら俺、教室戻るから」



 そう言い捨ててアレフ様はカフェから出て行ってしまった。



「え?」



 1人残された私は状況が呑み込めず、しばらくそのまま呆然としていた。

お読みいただきましてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ