79.GWイベント第2弾 ~開催中4~ 小休止
「フェルナンド、何があった? レイドボスはどこだ?」
「レイドボスなんていないよ。彼らが僕たちのことをレイドボスと報告しただけ。魔法の特訓をしていたら誤解されたんだよ」
「どういうことだ?」
アレフ様が再度聞き返し、フェル様が順を追って説明を始める。
騎士たちも拘束を解かれ、マキシ様や元帥と呼んでいた黒髪の騎士と話をしていた。
「なるほどな。あの騎士たちはモンスターを見たことも無かったのだろう。聞いた話だけで誤解したのか。ナザリトとロイクはどうした?」
「ロイクは癒し手として街の神殿に行っちゃったよ。ナザリトは、……実は、ナザリトを怒らせちゃって。罰として魔法の練習をやらされていたんだ」
「何をやらかしたんだよ」
口調を和らげ、アレフ様は私の髪を撫でる。
そろそろ、離してほしいわ。
トンと鎧を叩く。
私の髪を撫で続けるアレフ様は、何もおっしゃってくださらなかった。
「殿下、この者たちの処分はいかがいたしますか?」
少し離れたところからマキシ様の声が聞こえる。
「必要なのか? ミスは誰にでもあるだろう」
「それでは、陛下が許されるかどうか」
「仕方ないよ。ボス並みの魔力に、人外な美しさの美少女2人だぞ。ククッ。リリーはともかく、美し過ぎるフェルナンドがいけない。ハハハ……。」
「な! アレフレッド殿下! 僕だって、女の子に間違われるのは不本意なんですからね!」
「ハハハッ。無事で良かったよ。レイドボスじゃなくってさ」
「もう、笑って誤魔化さないでよ」
「ハハッ。悪い悪い」
2人とも、普通に会話をしているけれど、私がいることに違和感はないの?
マキシ様も「わかりました」と言って、向こうへ行ってしまわれた。
トントン。
鎧も硬くて地味に痛いのよ?
「さっきからどうしたんだ?」
「離してください。大勢の人の前ですのに、恥ずかしいですわ」
「誰も気にしていないよ」
それは、十分にわかってます。
「私が気になりますの」
「わかったよ」
背中に回された腕はそのままに、ゆっくりと座らされる。
ようやく人心地付く。
「ありがとうございます」
「ああ、大丈夫か?」
「ええ。アレフ様も大丈夫ですか? お顔の色が優れないようですけれど」
健康的な肌の色をしているのに、今日は疲れの為か少し青黒かった。
「大丈夫だよ。リリーに刀を向けられていたから驚いただけだ。……間に合って良かった」
「お助けいただきありがとうございました。あの、アレフ様」
「ん?」
「今回のイベントの事、なぜ、教えてくださらなかったのですか?」
「プロテクトを外すことに専念してほしかったからさ」
「心配し過ぎですわ」
「そんなことないよ」
レイドボスが時間湧きするイベント。
私に関することは一切書かれていなかったし、プロテクトもあっさりと解かれた。
それでもダメなの?
マキシ様がこちらへ歩いて来るのが見える。
私の視線の先を追ったアレフ様が立ち上がった。
「どうした?」
「失礼致します、殿下。新たなレイドボス発見の報告が入りました。プライア元帥は軍を率いて向かわれるそうですが、殿下はいかがなさいますか?」
「俺も行く。場所はどこだ?」
「ソルシティの大聖堂の広場です。発見は遅れましたが人通りが無かったため、被害も出ておりません」
「そうか。市街地なら移動するのに時間がかかるな。元帥と冒険者ギルドに報告を。俺たちは先に行くぞ」
「承知致しました」
マキシ様が報告の為、立ち去って行く。
「しばらくは会議とレイドボス戦で戻れないと思う。」
「私もいっ」
「それはダメだ!」
「えっ? どうして、ですの?」
「リリーを守りながらでは俺がレイドボスと戦えない。それに、危険な場所に連れて行ったら何を言われるか。」
「それでは、私はどうしたらいいですか?」
「リリーは婚約者であって、まだ王族じゃない。何もしなくていいよ。矢面に立つのは俺だけで十分なんだ。退屈だと思うけれど、城の中にいてくれ。」
何もしなくていい。
私を気遣っての言葉だろうけれど、その言葉はズシリと重く私の心にのしかかった。
「どうしたんだ? 最近までモンスターを知らなかったお嬢様だったじゃないか。心配しなくていいんだよ」
確かにモンスターがいることを知ったのは先月だったわ。
君セナにモンスターはいなかったもの。
「ふふ。そうでしたわね」
プロテクトを外しても何事も無かったから、気持ちも大きくなっていた。
何もできないままなのに、私にも何かできるような気がしていたわ。
何、勘違いしているのよ。
おかしくなって笑うと、アレフ様も微笑んだ。
「それじゃあ、行ってくる」
アレフ様は私に腕を伸ばした。
頷いて抱きしめられるのを待つ私に聞こえてきたのは、フェル様の声だった。
「はいはい。早く行ってきてください。マキシがさっきから待っていますよ」
「フェルナンド……」
「アレフ様……?」
アレフ様の腕はフェル様に伸びていた。
え?
もしかして、実はそういう趣味だったりするの?
「リリー、これは違う。フェルナンド、どけ」
アレフ様はフェル様を横にどかそうとするけれども、フェル様は抵抗して動かない。
「リリアーナのことは僕に任せて。邪魔者は、さっさとレイドボス討伐に行ってきてくださいよ」
「邪魔はどっちだ。間に入って来るな!」
「殿下、急ぎませんと、軍より遅れを取ってしまいます」
練習場に集まっていた王国軍の騎士たちは、既に出発しようとしているところだった。
暫し、軍の様子を眺めていたアレフ様が振り返る。
「くっ! 仕方ない。行くぞ、マキシ」
「リリアーナ様。何かございましたら、祖父に何なりとお申し付けくださいませ。必ずや、殿下より役に立つはずです」
「まぁ、ふふふ。お気遣い、ありがとうございます。マキシ様」
「当然の事です。リリアーナ様」
「あっ……」
振り返ったアレフ様と目が合ったのは、丁度、マキシ様が私の手の甲に口付けた時だった。
「マキシ? 何をしている?」
「女神から祝福を受けていました。参りましょう、殿下」
「お2人とも、お気を付けて」
何か言いたげにしていたが、アレフ様は私たちに背を向け走って行く。
騎士たちが進みだした横を走り、2人は練習場から去って行った。
しばらくして騎士たちもいなくなり、また私とフェル様の2人きり。
「なんか、練習って気分でもなくなっちゃったね。一度戻ろうか?」
「そうですわね。また遅いと怒られてしまいますわ」
私たちは練習場の扉を静かに閉め、テェゼーナ師の私室へと戻った。
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