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エクリプス  作者: 元蔵
第2章 全身全霊をかけてあなたについていきます
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79.GWイベント第2弾 ~開催中4~ 小休止

「フェルナンド、何があった? レイドボスはどこだ?」


「レイドボスなんていないよ。彼らが僕たちのことをレイドボスと報告しただけ。魔法の特訓をしていたら誤解されたんだよ」


「どういうことだ?」



 アレフ様が再度聞き返し、フェル様が順を追って説明を始める。

 騎士たちも拘束を解かれ、マキシ様や元帥と呼んでいた黒髪の騎士と話をしていた。

 


「なるほどな。あの騎士たちはモンスターを見たことも無かったのだろう。聞いた話だけで誤解したのか。ナザリトとロイクはどうした?」


「ロイクは癒し手として街の神殿に行っちゃったよ。ナザリトは、……実は、ナザリトを怒らせちゃって。罰として魔法の練習をやらされていたんだ」


「何をやらかしたんだよ」



 口調を和らげ、アレフ様は私の髪を撫でる。

 そろそろ、離してほしいわ。

 トンと鎧を叩く。

 私の髪を撫で続けるアレフ様は、何もおっしゃってくださらなかった。



「殿下、この者たちの処分はいかがいたしますか?」



 少し離れたところからマキシ様の声が聞こえる。



「必要なのか? ミスは誰にでもあるだろう」


「それでは、陛下が許されるかどうか」


「仕方ないよ。ボス並みの魔力に、人外な美しさの美少女2人だぞ。ククッ。リリーはともかく、美し過ぎるフェルナンドがいけない。ハハハ……。」


「な! アレフレッド殿下! 僕だって、女の子に間違われるのは不本意なんですからね!」


「ハハハッ。無事で良かったよ。レイドボスじゃなくってさ」


「もう、笑って誤魔化さないでよ」


「ハハッ。悪い悪い」



 2人とも、普通に会話をしているけれど、私がいることに違和感はないの?

 マキシ様も「わかりました」と言って、向こうへ行ってしまわれた。

 トントン。

 鎧も硬くて地味に痛いのよ?

 


「さっきからどうしたんだ?」


「離してください。大勢の人の前ですのに、恥ずかしいですわ」


「誰も気にしていないよ」



 それは、十分にわかってます。



「私が気になりますの」


「わかったよ」



 背中に回された腕はそのままに、ゆっくりと座らされる。

 ようやく人心地付く。



「ありがとうございます」


「ああ、大丈夫か?」


「ええ。アレフ様も大丈夫ですか? お顔の色が優れないようですけれど」


 健康的な肌の色をしているのに、今日は疲れの為か少し青黒かった。



「大丈夫だよ。リリーに刀を向けられていたから驚いただけだ。……間に合って良かった」


「お助けいただきありがとうございました。あの、アレフ様」


「ん?」


「今回のイベントの事、なぜ、教えてくださらなかったのですか?」


「プロテクトを外すことに専念してほしかったからさ」


「心配し過ぎですわ」


「そんなことないよ」



 レイドボスが時間湧きするイベント。

 私に関することは一切書かれていなかったし、プロテクトもあっさりと解かれた。

 それでもダメなの?

 マキシ様がこちらへ歩いて来るのが見える。

 私の視線の先を追ったアレフ様が立ち上がった。



「どうした?」


「失礼致します、殿下。新たなレイドボス発見の報告が入りました。プライア元帥は軍を率いて向かわれるそうですが、殿下はいかがなさいますか?」


「俺も行く。場所はどこだ?」


「ソルシティの大聖堂の広場です。発見は遅れましたが人通りが無かったため、被害も出ておりません」


「そうか。市街地なら移動するのに時間がかかるな。元帥と冒険者ギルドに報告を。俺たちは先に行くぞ」



「承知致しました」



 マキシ様が報告の為、立ち去って行く。



「しばらくは会議とレイドボス戦で戻れないと思う。」


「私もいっ」

「それはダメだ!」


「えっ? どうして、ですの?」


「リリーを守りながらでは俺がレイドボスと戦えない。それに、危険な場所に連れて行ったら何を言われるか。」


「それでは、私はどうしたらいいですか?」


「リリーは婚約者であって、まだ王族じゃない。何もしなくていいよ。矢面に立つのは俺だけで十分なんだ。退屈だと思うけれど、城の中にいてくれ。」



 何もしなくていい。

 私を気遣っての言葉だろうけれど、その言葉はズシリと重く私の心にのしかかった。




「どうしたんだ? 最近までモンスターを知らなかったお嬢様だったじゃないか。心配しなくていいんだよ」



 確かにモンスターがいることを知ったのは先月だったわ。

 君セナにモンスターはいなかったもの。



「ふふ。そうでしたわね」



 プロテクトを外しても何事も無かったから、気持ちも大きくなっていた。

 何もできないままなのに、私にも何かできるような気がしていたわ。

 何、勘違いしているのよ。

 おかしくなって笑うと、アレフ様も微笑んだ。



「それじゃあ、行ってくる」



 アレフ様は私に腕を伸ばした。

 頷いて抱きしめられるのを待つ私に聞こえてきたのは、フェル様の声だった。



「はいはい。早く行ってきてください。マキシがさっきから待っていますよ」


「フェルナンド……」


「アレフ様……?」



 アレフ様の腕はフェル様に伸びていた。

 え?

 もしかして、実はそういう趣味だったりするの?



「リリー、これは違う。フェルナンド、どけ」



 アレフ様はフェル様を横にどかそうとするけれども、フェル様は抵抗して動かない。



「リリアーナのことは僕に任せて。邪魔者は、さっさとレイドボス討伐に行ってきてくださいよ」


「邪魔はどっちだ。間に入って来るな!」


「殿下、急ぎませんと、軍より遅れを取ってしまいます」



 練習場に集まっていた王国軍の騎士たちは、既に出発しようとしているところだった。

 暫し、軍の様子を眺めていたアレフ様が振り返る。



「くっ! 仕方ない。行くぞ、マキシ」


「リリアーナ様。何かございましたら、祖父に何なりとお申し付けくださいませ。必ずや、殿下より役に立つはずです」


「まぁ、ふふふ。お気遣い、ありがとうございます。マキシ様」


「当然の事です。リリアーナ様」


「あっ……」



 振り返ったアレフ様と目が合ったのは、丁度、マキシ様が私の手の甲に口付けた時だった。



「マキシ? 何をしている?」


「女神から祝福を受けていました。参りましょう、殿下」


「お2人とも、お気を付けて」



 何か言いたげにしていたが、アレフ様は私たちに背を向け走って行く。

 騎士たちが進みだした横を走り、2人は練習場から去って行った。

 しばらくして騎士たちもいなくなり、また私とフェル様の2人きり。



「なんか、練習って気分でもなくなっちゃったね。一度戻ろうか?」


「そうですわね。また遅いと怒られてしまいますわ」



 私たちは練習場の扉を静かに閉め、テェゼーナ師の私室へと戻った。


お読みいただきありがとうございました。

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