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エクリプス  作者: 元蔵
第2章 全身全霊をかけてあなたについていきます
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78.GWイベント第2弾 ~開催中3~ 特訓は人目の付かないところでやりましょう

「ああ、違うよ。リリアーナ、もっと集中して。こう、ぎゅぅ~っとしてぶわぁーってするんだ」



 私に見えるように、両手を広げて魔法を発動させるフェル様。

 ここは、魔法省の練習場。

 遅くに戻ってきた罰として、魔法の特訓をするように言い渡された私たちは、魔法を発動させる基本、魔力を練って精度を高める方法をしていた。



「ね? わかった?」



 素敵な笑顔を浮かべるフェル様。

 けれど、どうしたらそうなるのか全くわからない。

 プロテクトを外したからと言って、魔力に身体が蝕まれていくことは無かったけれど、自分自身の魔力を感じることはできなかった。

 目が覚めた時に魔力が感じられたのは、気のせいだったの?

 結局、外す前と何も変わっていないのよね。

 魔力がわからなければ、練ることも高めることもできない。



「申し訳ありません。魔力を動かすことができませんわ」


「魔力の感じ方や見え方は人によって違うとは言うけれど、リリアーナほどの魔力の持ち主なら魔力を視覚できそうなんだけどなぁ」


「ロイク様のようにですか?」


「ロイクの見え方は別物。前に聞いたらロイクは魔力の質や量を、色や形、数値に表して見れるみたいだから。更に、魔力を介して様々なことを情報として読み取れるんだって。僕だと、中心にもやのような炎が揺らめくように見えるんだ。それを引き出して練っていくんだよ」



 フェル様を見ても、もやの様な物は見えない。



「プロテクトを外す前は、プロテクトされた内側が嵐のように見えたのですが、今は何を見たら良いのか、どれが魔力なのかはわかりませんわ」


「うーん。魔法を使っていれば、少しずつわかるようになるかな? 風を起こすことはできるんでしょ? じゃあ、今度は違う魔法を使ってみようよ。何か発見があるかもしれないよ」


「ええ、わかりましたわ」



 深呼吸をして、右手を前に出す。



「エル・ディ・サージュ・カピン」


 私の力ある言葉に反応して、右手から茨の蔓が四方八方へと伸びていく。

 所々についているバラの蕾が次々と咲いていく。

 あれ?

 こんな魔法なの?

 茨は触れた物に巻き付いたりしたが、やがて消えていった。



「カピンで茨の蔓か。次はアークアを唱えてみて」


「はい。エル・ディ・サージュ・アークア」



 私を中心に直径5~15cmと大きさがバラバラな水球が具現する。

 数は20個位。



「こんなに出てくるのですね」



 エイミーが唱えた時は1つしか出なかったよね。

 一斉に水球が弾け、辺りに水をまき散らした。



「キャ! 冷たい!」


「大丈夫? リリアーナ」


「ええ。冷たかっただけですわ。まさか、消えないでかぶるとは思いもしませんでしたの」



 濡れて張り付いた前髪を軽く払う。

 シャボン玉が割れるように消えていたはずなのに。



「フェルナンド様はかかりませんでしか?」


「うん。僕はかかっていないよ。あと、わかったこともある。」


「え? わかったこと、ですか?」


「そう。リリアーナの魔法は、やっぱり精度が低いんだ。呪文を唱えることによって力技で魔法を発動させているんだよ。膨大な魔力とSPがあるからできるんだろうね。SPの量も、精度を高めたら今よりも少ない力で効果を大きくしたり弱くすることもできるようになるよ。」


「難しいですわ」


「まだ始めたばかりだし、気長にやればいいよ。こういうのは、積み重ねが大事なんだから」


「そうですわね。諦めずにこつこつとやりますわ」


「そうそう。じゃ、次はぺドラだ。今度は少し、先を意識して唱えてみよう。1メートル先に魔法が発動するようにね」



 頷いてから瞳を閉じた。

 右手の先、1メートル前を意識し、瞳を開ける。

 


「エル・ディ・サージュ・ぺドラ」



 右手を中心に小さな泥団子が5個程、現れるとすぐに砕け散った。

 泥だらけになった右腕を見たフェル様は、慌ててアークアを唱える。

 現れた水で私の腕を洗ってくれた。



「リリアーナ大丈夫?」


「ええ。汚れただけですわ。ありがとうございます」


「どういたしまして」



 思った場所に発動させられなかったのは仕方がないとしても、他の属性の時に比べて消えるのが早かったわ。



「誰にでも得意、不得意があるんだから、気にしなくていいよ。じゃ、次はフォーグいってみよう」


「はい」



 穏やかに時間が過ぎていく。

 きっと、一緒に特訓をしているのがフェル様だからなのね。

 

「エル・ディ・サージュ・フォーグ」



 私が呪文を唱えたのと、扉が開くのは同時だった。

 炎は開いたドアから入り込む空気を飲み込み、波が押し寄せる勢いで扉に向かって広がっていく。

 炎の向こうで、5人の騎士が悲鳴を上げた。


「いけない! ディサパレセ マジア」



 フェル様が私の魔法を打ち消した。

 騎士たちは怪我はしなかったみたいだったけれど。



「モンスター発見。至急、応援を要請する。モンスターは人型で2体。強力な魔法を使う!」


「あ、あの」


「人語を理解している模様。我々にコンタクトを図ろとしている」


「大丈夫ですか? お怪我は?」


「可憐な美少女の姿で、魅了のスキルを使用している模様。我々に気付き、先制攻撃としてマージフォーグを使用。状況から、レイドボスと認定します」



 5人の中で隊長挌の男性が、誰かに報告をしているみたい。

 他の4人も私たちを見て怯えているようにも見える。



「聞いてください。僕たちはモンスターじゃありません。ここで、魔法の特訓をしていただけです」


「うわぁぁ。しゃべった! 本当に人みたいだ」


「馬鹿! よく見ろ。あの魔力と人外な美しさ。魔性の者に決まっているだろう。高位なモンスターは人の姿を取ることも会話だってする。それに、今、魔法省の者たちは全員出払っているんだ。ここには誰もいない。ちゃんと精神を統一させていろ。油断するとコロッと操られるぞ!」


「隊長が応援を呼んでいる。応援が来るまで耐えるんだ」


「おお!」



 私たちをモンスター呼ばわりする割には、誰も攻撃を仕掛けてこない。

 私たちの言葉は精神攻撃と思われ、話も全く聞いてくれない。

 本当に私たちがモンスターなら、待ってくれないと思う。



「フェルナンド様、どうしたらいいのでしょう?」


「うーん。向こうから攻撃をしてくるつもりはないみたいだし、今は放っておくしかできないね。応援に来た人で僕らを知っている人に誤解を解いてもらうのがいいと思う」



 肩をすくめてフェル様が言う。



「そうですわね。誰がやって来るのかしら。ところで先程、あの方がおっしゃった『マージフォーグ』とはどんな魔法ですの?」


「マージフォーグとは、火の海を具現させる魔法だよ。さっきのがマージフォーグなら大やけどじゃ済まないダメージのはずなんだけど、彼らはそれもわかってないようだね」


「困りましたわ」


「ははは。本当だね」



 隊長は報告が終わったらしく、4人の元へ駆け寄った。



「喜べ、なんと第2王子とプライア元帥が駆けつけてくれるそうだ。レイドボス発見の功績に、この戦闘で活躍すれば、覚えもめでたい! 今が正念場だぞ!」


「はい、隊長!」



 5人の騎士は私たちに向かって身構えた。



「ん? 攻撃して来ないな?」


「はい。先程までは話しかけてきていたのですが、我々に状態異常のスキルが効かないことで、諦めたのでしょう。今は様子を見ています」



 ええ。

 諦めたのは確かよ。



「そうか。では、我々から行くぞ! フォーメーションA」


「はっ」



 さいころの5のように、赤い点の部分が隊長。

 その隊長を中心にして彼らは並んだ。



「フェルナンド様、どうしましょう?」



 何もしなければ私たちが倒されてしまうし、かと言って彼らを攻撃することもできない。



「大丈夫だよ。リリアーナは心配しないで。僕が何とかするから」



 フェル様はそう言って立ち上がる。

 どこに隠していたのか、手には水晶の宝玉が填め込まれたロッドを持って。

 宝玉には見たことが無い記号のような文字が記され、不思議な輝きを放つ。

 ロッドを構え、私を庇うように1歩前へ出た。



「ぎゃあーーーー!!」



 隊長が真っ先に悲鳴を上げた。

 耳をつんざくような悲鳴に私は身体がすくみあがる。

 フェル様も驚いた様子で言った。



「僕、まだ何もしてないよ!」


「おのれ、隊長を!」


「隊長、しっかり!」



 騎士の1人は隊長に駆け寄り、1人は剣を落とす。

 そして、2人は私たちに向かってきた。

 嘘!

 フェル様が静かに呪文の詠唱を始めた。



「大丈夫か!?」



 開いたままの扉からアレフ様が入ってきた。

 アレフ様の姿を見た騎士たちは勢いづいたのか、一気に私たちへ詰め寄って来る。



「リリー? フェルナンド? お前たち、止まれ!」



 アレフ様が叫んでも、騎士たちは止まらない。

 私は恐怖で動けないまま目を閉じた。


 一瞬の出来事だったんだと思う。

 優しく何かに包まれる感覚がし、乱暴に抱き寄せられる。

 ここからは、スローモーションのように聞こえた。



――――ガキーン!!



 金属同士が激しくぶつかり合う音がし、ドスっと何かが落ちる。



「なぜ?」



 騎士の1人が叫んだ。



「ルイス」


「うわ! 目がー!!」



 アレフ様の魔法の後、騎士の悲鳴と、アレフ様を呼ぶ沢山の声と足音が聞こえた。



「第2王子様? 元帥!?」


「我々は王国軍の騎士です。それなのに、なぜ?」



 隊長と騎士が怯えた声で言った。

 私を片手で抱き寄せたまま、アレフ様は振り返った。



「なぜ? それは、私のセリフだ。私の婚約者フィアンセに刃を向けるとは」



 瞳を開いた私の視界に入ったのは、マキシ様の後ろ姿と拘束された騎士たちだった。


 

前回から1カ月程も間が空いてしまいました。

大変遅くなってしまい申し訳ありません。

短編が中々書き終わらなかったのが一番の原因なのに、ホワイトデーとできれば卒業式の短編も書きたいなーと思っています。

書きたいと思っているだけで、内容は全く決まっていません。

またこちらの投稿が遅くなったらごめんなさい。

あとがきまで読んでくだる貴方に感謝を。


お読みいただきありがとうございます。

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