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エクリプス  作者: 元蔵
第2章 全身全霊をかけてあなたについていきます
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76.GWイベント第2弾 ~開催中1~ イベントやってるなんて聞いてません!

 案内された場所は、宮廷魔術師テェゼーナの私室だった。

 テェゼーナ師本人は不在で、ナザリト先生が留守を預かっているらしい。

 室内は魔法で明るく照らされ、所々に色とりどりの植物が飾られてあった。

 古そうな巻物や分厚い本がギッシリ詰まった本棚が並ぶ、部屋を想像していたのだけれど。

 入り口近くにあった、20cm位の高さの木に綺麗な実が成っていて、私は、思わず手を伸ばす。


「ギャ――――!!!」

「きゃぁぁぁああああ!」



 木は、綺麗な見た目とは裏腹に、耳をつんざく様な叫び声を上げた。

 驚いた私も、つられて叫ぶ。



「リリアーナお嬢様、騒々しいです。淑女(レディー)らしからぬ行為でございます」



 カナンに口元を押えられた私の悲鳴は収まっても、木はまだ叫び続けていた。



「……何をやっているのだ、リリアーナ・ベンフィカ」



 部屋の奥から、ナザリト先生のぼやきが聞こえた。



「驚いた? この木は、マジアールボリって言うんだよ。リリアーナ嬢」


「マジアールボリですか?」



 フェル様の言葉を、私は繰り返す。



「そう、マジアールボリ。その名の通り、魔法植物なんだ。近くに生物が来ると、叫んで相手を追い払うんだよ。大きい物になると、叫び声で死に至らせることもあるんだ」


「恐ろしいですわね。とても、綺麗ですのに」


「これは小さいし近付かないと反応しないから、研究材料として置いてあるんだ。他の植物も魔法植物だよ」



 笑って話すフェル様に、私はバツ悪く苦笑いを浮かべた。



「さて、リリアーナ・ベンフィカ」


「は、はい。ナザリト先生」


「適当なものを用意したから、好きに食べるといい。お前たちもこっちへ来るがよい」



 私がソファーに座り、ロイク様とフェル様もソファーに座る。

 カナンだけは、マジアールボリのある入り口に立っていた。



「カナン? どうかしましたの?」


「リリアーナお嬢様。大変不本意ですが、ご主人様に呼ばれましたので、しばらくお傍を離れます」


「え? お父様に何かあったの?」



 私の言葉には答えず、カナンはナザリト先生たちに頭を下げる。



「リリアーナお嬢様を、どうかよろしくお願い致します」


「……早く向かうが良かろう。ここは大丈夫だ」



 ナザリト先生の言葉に、カナンが頷く。



「お嬢様。旦那様がお飲みになる、コーヒー豆が切れてしまったそうです。これから急いで買い出しに行ってきます」



 カナンはそれだけ言うと、部屋から出て行った。

 ロイク様が小さく笑っていた。



 ……家に何かあったのかしら?

 カナンが変なのはいつものことだけれど、 いつもより変だわ。

 それに、今の連絡はいつ着たの?



「そう言えば。……先程、フェルナンド様は『私は無事だよ』とおっしゃってましたよね? 隣の部屋の方たちはどうされましたの?」



 私の質問に、フェル様が表情を曇らせた。



「リリアーナ嬢の護衛として控えていた者たちが、何者かに倒されていました。おそらく、今、ソルシティ周辺に現れたモンスターだと思われます。ドロップアイテムが落ちていたので、モンスターは誰かが倒したのでしょう」



 フェル様の代わりに、ロイク様が答えてくれる。



「モンスターが、王城内に現れたのですか?」


「ええ。王城内に現れたのは10体程でしたが、市街地にはかなりの数のモンスターが現れて、あちこちで戦闘が開始しています。なんでも、冒険者掲示板に今回の事が書かれていたとか」


「え? それは、イベントなのでしょうか?」



 忘れていたわ。

 この前のイベントは、GWイベントの第1弾だったことに。

 第1弾と書くなら、第2、第3があってもおかしくない。



「そうですよ。よく、ご存じですね」


「ええ、兄たちが冒険者証を持っておりますの」



 もしかして、昨日、アレフ様が忙しそうにしていたのは、この為だったのかもしれない。



「それで、王城内の警備が手薄になっているから、僕たちがリリアーナ嬢を護りに来たんだよ」


「ありがとうございます」



 未来の司教様と魔術師様に護っていただけるとは、とても心強い。



「まさか、王城内や神殿にまでモンスターが入り込むとは思わなかったよね」


「そうですね。建国以来、初めての事ですよ」


「まだ、モンスターは王城内にいますの?」



 まだ、いるとしたら、先程出て行ったカナンは大丈夫かしら?



「聞いた話ですと、王城内にいるのは、後、1体だけです。それもまもなく討伐完了すると思われます」


「そうですか。ところで、今、アレフ様がどこにいらっしゃるか、ご存知ですか?」



 曲がりなりにも婚約者なのだし、知っていたのならこういう時こそ傍にいてほしい。

 フェル様とロイク様が顔を見合わせた。

 2人は知らなかったのか、ナザリト先生が口を開く。



「アレフレッド殿下は、王族として先陣に立って戦われている。騎士たちの士気を高めるには、一番の方法ゆえ」



 やっぱり。

 私はソファーから降りる。



「行ってはならんぞ。殿下が戦っているのは、レイドボスと呼ばれる、通常より特別に強いモンスターらしい。リリアーナ・ベンフィカがその場に行っても、邪魔なだけだ」


「邪魔にならないよう、気を付けますわ」



 役に立つなんて思っていない。

 けれど、傍にいたいって、傍にいてほしいって思うことも許されないの?



 ―――わぁぁぁああああああ!!!―――



 遠くから歓声が聞こえてきた。



「掲示板によるとレイドボスは何度か現れるらしい。向こうへ行くのは危険だ」


「掲示板に書かれているページを見せてもらえませんか?」


「これが、その情報ページを印刷したものだ」



 ナザリト先生から受け取り、記載内容を見る。

 思った通り、レイドボスの出現時間が書いてあるわ。



「ナザリト先生。こちらによりますと、 次のレイドボス出現時間まで1時間以上ありますわ。また王城内に出現するとも書かれておりません。お願いですわ。アレフ様がいらっしゃる所へ行ってもよろしいかしら?」



 ナザリト先生は無言で首を横に振る。



「レイドボス、倒したのかな? チラッと見たら、大きな蛇みたいな敵だったんだ。ナザリト、僕見てきたいな。リリアーナ、一緒に行こうよ。それならいいでしょう?」


「私は負傷者の手当てをしなければなりません。リリアーナ嬢、よろしければお手伝い願えませんか?」


「ええ。喜んでお手伝いいたしますわ」



 ナザリト先生は、諦めたように頷いた。




 近付くにつれ、歓声が大きくなってきた。



「フェルナンド様、ロイク様。ありがとうございます」



 王城内を急ぎながら、お礼を言う。



「リリアーナの為じゃないよ。僕が気になっただけだもの」



 レイドボス出現場所は、ホール脇のテラスだ。

 ホールは臨時の病院のようになっている。



「フェルナンド、女性を呼び捨てにしてはいけませんよ。やはり、癒し手の数が足りないようですね。リリアーナ嬢、お礼は働いて返していただきますよ」


「はい。私ができることなら何でも致しますわ」



 怪我の程度により、回復魔法を掛けるグループや薬等で手当てを受けているグループに分かれているみたい。

 怪我の程度が酷いグループを、直視することはできなかった。




「さすが、レイドボス。まだ姿が残っているよ。」



 フェル様の指差す方を見ると、青緑色の大蛇が見えた。

 丸太の様な太い胴周りに、10m位はありそうな胴体。

 こんな敵と戦っていたのね。

 バルコニーの近くに、アレフ様の姿が見えた。

 この前とは違い、白く輝く鎧を着たアレフ様は、同じ鎧を着た男性たちと話をしている。

 少し険しい表情で話しているけれど、怪我はされていないみたい。

 良かった。



「リリアーナ嬢、こちらへ来ていただけますか?」


「はい、ただいま参りますわ」



 それだけ確認すると、私はロイク様のお手伝いに専念した。



お読みいただき、ありがとうございます。


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