75.GWイベント第2弾 ~開始~
「アレフレッド殿下、リリアーナ様のプロテクトは無事解除されたと報告が入りました」
マキシ様の報告にアレフ様は口元をほころばせる。
「そうか。皆の者にご苦労だったと労いの言葉を伝えてくれ。して、リリーは今、どうしているんだ?」
「魔力の急激な変化に対応できず、意識を失われたそうです。神殿の治療室に運ばれています」
「それは、大丈夫なのか?」
アレフ様の口調が少し険しくなる。
「緊張が解けた為、眠っているそうです。チェルシー大司教の見立てでは、1時間程も眠ったら目を覚ますでしょうと」
「そうか、そっちは一安心だな。リリーが目覚めたら教えてくれ」
「かしこまりました」
マキシ様はアレフ様の執務室を出ていく。
残されたアレフ様は窓の外に目を向けた。
快晴だった空は一変して、真冬に戻ったかのような猛吹雪だった。
「GWに猛吹雪って、ここは北海道かよ」
アレフ様は1人、悪態をついた。
「ん……」
目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋だった。
シンっと静まり返った部屋。
寝ぼけた私は、寮の自室のようにミセスブラウンを呼んだ。
「ミセスブラウン、こちらに来てくださる? いないのかしら? ミセスブラウン? ケイティ? カナン? 誰もいないの? あれ? ここ、どこだったかしら?」
右側にある扉を見ていた私は、窓のある左側を向いた。
ベッドの端に音もなく、カナンが立っている。
「お呼びでしょうか? リリアーナお嬢様」
「え? カナン、そこにいたの?」
「お呼びになられたので、約束通り参りました」
約束。
その言葉に、自分が王城でプロテクトを解除したことを思い出す。
「寝ぼけていたわ。ここ、王城よね。カナン、なぜいるの? 帰ったのではなかったの?」
「ルーク様に連れてきていただきました」
「そう、お兄様に。知らなかったわ。ねぇ、紅茶を淹れてくださる? 朝から何も食べていないし、何だか眩暈がするの」
「かしこまりました。少々お待ちください」
カナンが出て行き、時計を見ると13時になろうとしていた。
朝も食べていないのに、お昼まで過ぎちゃってるわ。
お腹空いたなー。
1人ごちていた私は、ようやく外の異変に気付く。
吹雪いてる。
季節外れの雪だなんて、君セナには無かったのに。
ザァァアアアアーーー!
カナンが行った方向から、突如として大きな音が鳴り響く。
何の音かな?
ベッドから降りてドアの前まで行くと、カナンが申し訳なさそうに部屋に入ってきた。
「カナン、今の音は何かしら?」
「リリアーナお嬢様、大変申し訳ございません。紅茶の葉をすべて落としてしまいました。代わりの茶葉を頂いて参りますので、くれぐれもこの部屋から出ないでお待ちいただけますようお願いします」
「ええ。わかったわ」
私が答えると、カナンはすぐに出て行った。
カナンって、メイドらしくないわよね。
私たちに対する態度も悪いし、茶葉をこぼしてしまうなんて。
ベッドに座り、カナンが戻ってくるのを待った。
これが魔力。
プロテクトが無くなった今、身体中から魔力が溢れ出て、私を包んでいるのがわかる。
プロテクトを内側から破りかけていた力。
あれ?
もしかして、内側に留めておかないといけない魔力を辺りにまき散らしてる?
ナザリト先生が魔力のコントロールをするように言っていたのは、魔力を辺りに放出させない為?
考えていると、何やらドアの向こう側が騒がしくなってきた。
「リリアーナ嬢!」
ドアが開き、血相を変えたフェル様が入って来る。
「はい!」
思わず返事をした私を見て、フェル様は安堵の表情を浮かべた。
「ロイク、リリアーナ嬢は無事だよ。そっちの人達は?」
「手の施しようがありません。既にこと切れています。彼らを別の部屋へ」
「は」
バタバタと音がする。
他にも何人か一緒にいたのね。
「リリアーナ嬢、何か変わったことはありませんでしたか?」
話しながらロイク様が部屋に入ってきた。
「変わったことですか? そう言えば、私のメイドがお茶の準備をしようとそちらの部屋に行きましたわ。そのとき、大きな音がしましたの」
「メイド? その部屋にですか?」
ロイク様の綺麗な眉がピクリと動いた。
「ええ。今、替わりの葉を頂きに行ってますから、すぐに戻ってきますわ。ああ、カナン。おかえりなさい」
「お待たせいたしました。リリアーナお嬢様、こちらの方々は?」
「ロイク様とフェルナンド様よ。プロテクトを解除する儀式でご尽力いただきましたのよ」
紅茶を受け取り、軽く会釈をしてから私はカナンを紹介した。
「私のメイドのカナンです。紅茶の葉を零してしまったので、今取りに行ってもらっていましたの。カナン、お2人にもお茶をお出しして」
なぜか、ロイク様はとても驚いたご様子だった。
「カナン、僕はフェルナンド・テェゼーナ。よろしくね」
驚くロイク様を他所にフェル様がかわいらしく挨拶をする。
1歳しか違わないのに、何故か、癒されるのよね。
「か……」
「カナンでございます。ベンフィカ公爵家のメイドをさせていただいております。以後お見知りおきを」
ロイク様が言いかけた言葉に被せるように、カナンが自己紹介をした。
フェル様にはにこやかな笑顔を。
ロイク様には凄みを効かせるように。
カナンがお茶を淹れに部屋を出たので、私はさっそくロイク様に謝った。
「もう、カナンったら! ロイク様、申し訳ありません。メイドなのに、態度が悪くて」
「気にしませんよ」
そこへ、カナンが2人の紅茶を運んできた。
笑顔で受け取るフェル様に対し、ロイク様は顔を引き攣らせながら受け取っていた。
帰ったら、ミセスブラウンにみっちりしつけ直してもらわないとね。
ようやく紅茶に口付けて、私は思った。
「リリアーナ嬢、ナザリト先生がお呼びなので、飲み終わりましたらご案内致します」
「わかりました。案内、よろしくお願い致しますね」
「リリアーナ嬢が無事で良かった。ナザリトは凄いんだよ。僕のお父様やお母様よりも強いし、使える魔法も沢山あるんだ。だから、何が起きても心配いらないよ」
「プロテクトが外れた後も、別段何か変わった感じはしませんし、皆様のおかげですわ」
私はティーカップをサイドテーブルに置くと、見計らったようにロイク様が言った。
「さて、では参りましょうか」
お読みいただきありがとうございました。
年内最後の投稿です。
拙い文をお読みいただき、本当にありがとうございます。
来年も宜しければお付き合いください。
来年も皆様にとって良い1年になりますように。




