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エクリプス  作者: 元蔵
第2章 全身全霊をかけてあなたについていきます
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74.プロテクト解除

 私は細心の注意を払って、ゆっくりと移動する。

 魔の手を退け、ベッドから降りた。

 もう!

 寝相が悪いんだから、私のベッドに潜り込んでこないでよ。

 ずり落ちていた肩ひもを直すと、私は寝ているアレフ様を置いてリビングへ向かった。



「おはようございます、リリアーナ様。お目覚めの所、申し訳ございませんが、時間がございません。このままバスルームへおいでください」


「ええ」



 メイドたちの手によって、オイルが塗られ、着替えや儀式用の装身具が次々と付けられていく。

 連れられるまま泉で禊を済ませ、気付けば神殿の祭壇の前。

 メイドが神殿を出て行くと、広い神殿に私1人となった。

 そう言えばどうやってプロテクトを外すの?

 どのようなことをするのか何も聞いていないことに、私は今になって気付いた。



 誰もいない神殿。

 神々しさも相まって、畏怖の念を覚える。

 不安に思いだした頃、扉が開き、誰かが入ってきた。



「おはようございます。リリアーナ嬢。昨日は、よく眠られましたか?」



 入ってきたのは、ロイク様だった。

 君セナのイベントで着ていた、白を基調とした神官服姿。



「おはようございます、ロイク様。緊張して、中々寝付けませんでしたわ」


「そうでしたか。何も緊張されることはありませんよ。リラックスしてください」


「無理な相談ですわ」


「確かに、そうですね」



 2人で笑っていると、次々と神殿の関係者だろう服装の人が5人入ってきた。

 その中に、ロナウドお兄様の姿もある。

 私に気付くと、二コリと微笑んだ。

 続いて、宮廷魔術師たちが入って来る。

 魔法省に席を置く、父とルークお兄様の姿も見える。

 5人の魔術師と、フェル様、ナザリト先生が入り、扉が閉まった。




「おはよう、リリアーナ嬢。今日は僕、頑張るからね!」



 フェル様が笑顔で近寄ってくる。



「おはようございます。フェルナンド様。今日はよろしくお願い致します」


「うん。任せておいて!」

 

「皆が集まったようですね。フェルナンド、私たちも所定の位置に戻りましょう。それでは、リリアーナ嬢」


「またね! リリアーナ嬢」


「はい。ロイク様、フェルナンド様、よろしくお願い致します」



 そう言うと、2人は私を中心に挟む形で杖を構える。

 アレフ様もいらっしゃると思っていたのに、神殿にアレフ様の姿は無かった。



「リリアーナ・ベンフィカ。そなたにかけたプロテクトの解除を始める。用意はいいか?」



 ナザリト先生の言葉に私は頷く。



「無理だとは思うが、緊張する必要はない。掛けることに成功したのだ。解くことも必ず成功する。ただそこで、立っているだけで終わる」



 ナザリト先生は、なお続けて話す。



「アレフレッド殿下がいないと不安か」


「いいえ、そんなこと」


「殿下の魔力は強すぎる。この場に居れば、光属性が強すぎてバランスを崩してしまう為、儀式の見学も辞退していただいたのだ」


「そうでしたの」



 アレフ様に何か起きたわけではない。

 私は、ナザリト先生の言葉を信じた。

 私の言葉に頷くと、ナザリト先生は離れて行った。



「それでは、始める。皆様、よろしくお願い致します」



 シャン。



 鈴の様な音が鳴り響いた。



 シャンッシャンッシャンッ!



 司祭が持つ杖の動きに合わせて杖に付けられた金属の輪が、曲のようにリズムを刻む。

 ロイク様とフェル様が舞を舞い始める。

 そして、厳かな声で呪文を唱える。


     イスペランサ メリト コン イグオーダージン アプリカー

     イクスリダオ マジア サラド プロテジー

     ルァンサミアント


     ――魔法を封印するプロテクトよ! 解除せよ!



 私の全身に、魔法で生じた光がプリズムのように輝きながら降り注ぐ。

 綺麗。

 輝く光を見つめ、私は目を閉じた。

 走馬灯のようにリリアーナの幼い頃の映像が流れてくる。



 魔晶石とぬいぐるみと共に過ごす日々。

 時折、入って来る幼いルークお兄様と、扉の所で私たちを見つめる幼いロナウドお兄様。


 同じ年代の子供たちが集められたパーティには、幼いエイミー、クリフ様、アレフ様がいた。


 そして、婚約発表。

 揃いの指輪を付け、誓いのキスを交わす。



「ふぅ」



 誰かのため息が聞こえ、過去の記憶はそこで消えてしまった。

 私は閉じていた目を開く。



「これが、リリアーナ嬢の本当の姿なのですね」



 ロイク様の言葉に、フェル様が続ける。



「弱々しく、それでいて膨大な量の魔力。おじい様がたが危険だと言うのが、僕にもわかる」


「気分はどうだ? リリアーナ・ベンフィカ」


「ナザリト先生」



 私自身には、別段、何か変わったような気はしない。



「特に、何もございませんわ。あの、儀式は?」


「成功だ。魔力は制御されているとは言いにくいが、時と共に馴染んでいくだろう」


「ありがとうございます。皆様」



 お礼を言って頭を下げる。



「役割を果たしただけです。リリアーナ嬢」


「そうだよ! リリアーナ嬢。お礼だというなら、笑顔を見せて。僕、リリアーナ嬢の笑顔が好きだよ。なんだかとっても心が安らぐんだ」



 フェル様の言葉に私は笑った。

 そして、糸が切れたように崩れ落ちた。



「わ! リリアーナ嬢? おじい様、リリアーナ嬢はどうしてしまったのですか?」



 リリアーナを腕に抱き止めたフェルナンド様が、テェゼーナ師に尋ねる。



「反動が出ただけじゃ。令嬢の魂の輝きは強い、おそらくは、緊張が解けて意識を失われただけじゃろう。」


「そう。良かった」


「ベンフィカ侯爵令嬢を治療室へお連れしなさい」



 チェルシー大司教の言葉に、父がフェルナンド様の元へ駆け寄って行く。

 遅れて、お兄様2人も駆け寄る。



「あ……」


「フェルナンド様、娘をお渡しください。私が運びます」


「あ、はい。お願い致します」



 父が差し出した腕に、フェルナンド様はリリアーナを移す。



「ロイク、案内を頼みます」


「はい。ベンフィカ侯爵、こちらへ」


「お願い致します」



 ロイク様とフェルナンド様、リリアーナを抱きかかえた父が神殿を出て行った。

 残った者たちが片付けを始め、2人の兄も片付けに加わる。



「アイツは、何をやっているんだよ」


「止さないか、ルーク。アレフレッド殿下はレイドボスと冒険者の対応に行かれている。今のリリアーナに不安を覚えさせるようなことはあってはならないと、説明があっただろう」


「それは、わかっている。けれど」


「クラウディオ殿下も学園から生徒会を招集して、対応に当たられているのだ。我々だって、今は兄としてリリアーナの傍にいられたが、レイドボスや冒険者の対応に苦戦を強いられたら、現場に向かわないといけない」


「わかっているよ。今は、リリアーナ自身の強さに祈るしかないことも。僕たちは、何の力になることもできないことも」



 2人の兄の元にテェゼーナ師がやって来た。



「ルーク、ロナウド殿、妹君の事は心配する必要はないじゃろう。妹君の魂の輝きは強く美しい。きっと、すぐに目覚めるじゃろうて」


「はい。ありがとうございます。テェゼーナ師」


「ここは、もう片付くよって。自分の師の元へ報告に行くと良い。カシアスも気を揉んでいる頃じゃろうに」


「お気遣い感謝いたします。それでは、失礼致します」



 ルークお兄様が神殿を去って行く。



「皆の者、プロテクトの解除は成功しました。ベンフィカ公爵令嬢の魂の輝きは強い。すぐに目覚めることでしょう。それより、今は冒険者ギルドからの報告が問題です。報告の通りなら、ソルシティ周辺に風の谷のモンスターが押し寄せてくるでしょう。既に集まっている冒険者たちのトラブルの対応に衛兵だけでは手が足りないようです。本来なら休日のところですが、皆、心してかかるように。」


「はっ」



 残っていた神殿関係者や魔術師たちが去り、広い神殿にテェゼーナ師とチェルシー大司教の2人になった。



「見たか、あの色を」


「ああ。プロテクトを掛けた時は、弱々しい鈍い銀色だったのう」


「月光の様なプラチナブルーの輝き。膨大な魔力。容姿の美しさ。建国の女神の生まれ変わりだと言う者も少なくありません。今まで以上に次代の王妃にと願う者が増えるでしょう」


「願わくは、彼女に女神の加護があらんことを」



 神殿に飾られた女神像を仰ぎ見る。

 女神からの啓示は無い。

 王国随一の大魔術師と大司教は、ゆっくりと扉を閉めた。


お読みいただきましてありがとうございます。

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