73.GWイベント第2弾 ~告知~
ひっそりと静まり返った王城の中にある神殿。
空に昇った下弦の月と星の明かりを頼りに、奥にある泉へと歩いた。
羽織っていたショールを置き、白いキャミワンピ姿になった私はゆっくりと泉に足を入れる。
冷たい。
女神の涙と言われるこの泉には、様々な浄化作用があるそうで、明日の儀式の前に禊をする必要があるらしい。
こんなに冷たいのに、どれだけ入っていればいいの?
ゆっくりと深くなるにつれて水温も低くなっていくようだった。
明日になったら、風邪をひいて儀式なんてできないんじゃ?
私は思い切って水の中に潜り込んだ。
しばらく水の中にいると、水の冷たさにも慣れてくる。
静まり返った神殿に、水しぶきの音が響いた。
バシャッ。
水面を割って顔を出した。
来た時から比べて、月の位置が移動している。
もういいよね?
禊をするように言われたけれど、実際に何をしていればいいのかわからなかった。
額に張り付いた前髪を払い、立ち上がる。
「君は誰? ここで何をしているの?」
私しかいないはずの神殿に、声が響いた。
声がした後ろを振り返ると、フェルナンド・テェゼーナ様が立っていた。
「水の中から失礼致します。私は、ベンフィカ公爵家長女、リリアーナ・ベンフィカでございます。禊をしておりました」
「君がリリアーナ・ベンフィカ……。初めまして。僕はフェルナンド・テェゼーナ。儀式のお手伝いをする為に、お城に来たんだ。よろしくね、リリアーナ嬢」
屈託なく笑うフェル様の笑顔。
私も自然と笑みがこぼれる。
「よろしくお願い致します。フェルナンド様。」
「うん。もしかして、僕、邪魔しちゃった?」
「いいえ。もう出ようと思っていたところですわ」
フェル様が立っている近くに置いたショールの所へ歩いて行くと、少し照れた風にフェル様が顔を逸らした。
「月の姫リリアーナ……。本当に泉の精か、女神様かと思っちゃった。良かったらコレ着て」
フェル様は、着ていた上着を脱いで私に差し出す。
「お気持ちだけいただきますわ。濡れてしまいますもの。それに、ショールがありますから」
私は泉から上がると、ショールを羽織った。
歩きにくいと思ったら、Aラインのスカートがピッタリと体にくっついている。
当然のように、上半身も体のラインにピッタリと張り付いていた。
「お見苦しい姿を晒して申し訳ありません。私はこれで。ごきげんよう、フェルナンド様」
泉から離れると、私の身体や服が乾いていく。
身体に張り付いていたスカートは、元のふんわりとした綺麗なラインになっていた。
不思議な泉ね。
「あ、おやすみなさい。リリアーナ嬢!」
フェル様のかわいらしい声が、後ろから聞こえる。
振り返ると、フェル様が手を振っていた。
「おやすみなさいませ。フェルナンド様」
静まり返った神殿を通り、王宮のアレフ様の私室に戻った。
もう遅い時間だと言うのに、アレフ様とマキシ様の姿が見えない。
広いリビングでお茶をいただいていると、部屋にいたメイドの1人が近付いてきた。
「リリアーナ様。アレフレッド殿下より連絡がございました。今、王城にいらっしゃるそうで、しばらくお時間が掛かるそうにございます。リリアーナ様は先に休まれるようにと。バスルームにご案内致します。こちらへお越しください」
メイドの言葉に私はソファーから立ち上がった。
「アレフレッド様はこんな時間に何をなさっておいでなの?」
「執務室にいらっしゃるそうです。詳しくはわかりかねます」
「そうですか。その執務室に行くことはできないかしら?」
「確認して参ります。少々お待ちください」
「お願いします」
職務に忠実そうなメイドは他の執事に伝え、すぐ戻って来た。
「申し訳ありません。ハメス様に伝えましたが、殿下からのお返事はすぐにいただけないかと。さぁ、お返事を待っている間にバスルームへ参りましょう。出る頃には、殿下から連絡があるはずですわ」
「ええ。わかりました」
一緒に入ろうとしていたメイドを断り、1人でバスルームに入る。
早く上がるつもりだったけれど、禊で冷えた身体は中々温まらなかった。
用意されたキャミワンピースに着替え、バスルームを出たがアレフ様は戻ってなく、ハメスさんが部屋に来ていた。
「リリアーナ様。殿下はただいま、書類と格闘しております。手伝えることも少のうございますし、見ていてもおもしろいものではございません。どうか、お先にお休みになってくださいませ」
「書類ですか?」
「はい。本来なら夏季休暇の時に行うことなのですが、殿下の公務に関する書類を確認されておいでです。やり始めますと、途中で止められない性格なのでございます。明日は儀式の為、朝早くに起きなくてはなりません。リリアーナ様はお先にお休みしてほしいとおっしゃっておいででした」
「わかりました。皆様、おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
納得したわけではないけれど、何を言っても無駄なことはわかった。
私は寝室に入ると扉を閉め、奥の寝室へ入る。
何かあったの?
禊に行く前は、アレフ様は執務室に行くとも言っていなかった。
私はベッドに横たわると、2人のテディベアを抱いて部屋の電気を消す。
普段ならとっくに寝ている時間だったけれど、気になって中々寝付けない。
しばらくゴロゴロとしていた私は、ベッドから降りた。
リビングへ歩いて行くと、私に気付いたハメスさんが驚いた声で話す。
「リリアーナ様。まだ起きていらっしゃったのですか?」
「ええ、眠れなくて。カモミールティーをいただけますか?」
「かしこまりました。すぐにお持ち致します」
「お願いしますわ」
ハメスさんがお茶の用意をしに行き、私はソファーに座った。
程なくして、ハメスさんがカモミールティーを運んできた。
「どうぞ」
「ありがとう」
カモミールティーを受け取ると、私はすぐに口を付けた。
「ハメスさん。アレフ様はまだお戻りではないの?」
「はい。殿下も困ったものです。お戻りになられましたら、きつく言っておきます」
「その必要はありませんわ。私のわがままですもの」
にわかに部屋の外が騒がしくなり、リビングの扉が勢いよく開く。
「まだ、起きていたのか」
少し息の上がった様子でアレフ様が言った。
「おかえりなさい。眠れなくてお茶を淹れていただきましたの」
「ただいま。コーヒーをくれ」
「かしこまりました」
ハメスさんが用意の為キッチンへ行くと、アレフ様は私の隣に座る。
「悪かったな。1人にして」
「私こそ、ごめんなさい。忙しいのでしょう?」
「いや。せっかく城に戻ってきたからと思って、書類を見たのが間違いだったよ。急ぎのものではないのにな」
笑って話すアレフ様は、どことなく無理をしているようにも見える。
「お待たせいたしました」
「ああ、ありがとう。リリー、先に寝てていいからな? シャワー浴びてくる」
コーヒーを一気に飲み干すと、アレフ様はバスルームに向かった。
カモミールティーを飲んだからか、アレフ様が戻られたからなのか、急に眠気が襲ってきたので、私はベッドに戻ると、すぐに眠りについた。
「ハメス、リリーは?」
「寝室に戻られました」
アレフ様は寝室に行って、再びリビングに戻る。
「全く、ぬいぐるみのベッドで寝ていたよ」
「リリアーナ様らしくて、よろしいではありませんか」
ハメスさんが笑いながら話す。
「良くないよ」
アレフ様はポツリと呟く。
先週に起きたウサギの家での出来事を思い出したようだった。
「マキシ、悪いが俺も寝る。どうせ、ギルドからの返事も今日は来ないだろう。明日の朝、一番に、国王とプライア元帥、兄上に報告だ。なんで、こんな時に限って……。マキシも休めるうちに休んでくれ。何が起こるかわからないんだから」
「かしこまりました。おやすみなさいませ」
「ああ。おやすみ」
アレフ様が寝室に入ると、ハメスさんはマキシ様に尋ねた。
「マキシ、アレフレッド殿下がおっしゃる、イベントとは一体、何のことだ? リリアーナ様に関係するかもしれないとおっしゃっておいでだが?」
「私も詳しくは理解できていませんが、ギルドシステムによると、明日の午後から強いボスがソルシティ周辺に現れるそうです。おじい様、これがイベントの詳細です」
マキシ様が持っていたタブレットを見せる。
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春の嵐が吹きすさぶ!?
GWイベント第2弾 メイストーム
四季の移ろいが美しい、ソルーア王国王都ソルシテイ。
快晴の行楽日和から一転して、突如発生した暴風雪が猛威を振るいだす。
王国の調査・研究の結果、風の谷に住むモンスターが原因だと判明。
モンスターたちは何かを探し求めて、王都に接近しているようだが?
さあ。
今こそ、冒険者諸君の出番だ!
突如現れた、モンスターの軍団を一掃せよ!
イベント実施期間
5月3日金曜日正午~5月6日月曜日24時迄
更に強力な新レイドボスが登場!!
レイドボス出現時間
13:00
15:00
17:00
19:00
21:00
23:00
時間帯によって、出現するボスが異なります。
パーティーを組んで敵に挑め!!
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