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エクリプス  作者: 元蔵
第2章 全身全霊をかけてあなたについていきます
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71.GWイベント第2弾 ~告知前1~

「明日からは4連休ですわね。リリアーナ様はご自宅に戻られるのですか?」


「用事があって、今日から王宮に行くのよ」


「まぁ。王宮にですか? では、アレフレッド殿下もご一緒にですか?」


「うん。さすがに私、1人で王宮に行くのは不安だもの」



 話しながら教室のドアを開ける。

 まだ、薬草学の生徒は誰も来ていない。

 ガランっとした教室に私たちは入って行く。

 窓の外は,、すがすがしい程に晴れ渡っている。

 イベントでも起きない限り、天気が悪い日なんて無さそうね。



「何だよ、ソレ。ロイクが行くなんて、オレ聞いてないぜ」


「ですから、おじい様に頼まれただけですよ。今後、大掛かりな魔法を掛けることがあった時の為に後継を作っておきたいようです。魔術師側も同じく後継者を連れてくるようですから」



 教室に入ってきたクリフ様とロイク様が私たちに気付く。



「おい、リリー。プロテクトを外して大丈夫なのか?」


「ええ。多分」


「多分? 大丈夫になったから外すんじゃねーのかよ?」



 クリフ様が顔を顰めた。



「外す理由は、プロテクトが古くなって効果が弱まったからですわ」


「それじゃ、外しちゃいけないだろう。アブネーじゃん」


「外さないままでいますと、小さな切っ掛けで魔力暴走を起こしますの。余計に危険なのですわ」


「なんでリリーがそんな目に遭わなきゃいけねーんだよ」


「ベンフィカ家に生まれた者の宿命かしら。時々、そういう子供が生まれるらしいですから」


「そんなんで、納得いくかよ」


「そうですわね。けれど、受け入れるしか選択肢はありませんもの。何かあったら、エスタディオに引きこもりますわ」



 嫌だと泣いて済めばどんなに楽なのかな?

 けれど、リリアのようになるわけにはいかない。



「どのような結果になっても、覚悟はできていますわ」


「納得いかねー」



 私の言葉に、クリフ様は呟くように言った。






「え? カナンだけですか?」


「はい。申し訳ございませんが、ハメス様から付き添いは1人にするよう連絡が参りました。その場合はカナンに任せるようにと侯爵から指示でございます」



 困ったようにミセスブラウンが、カナンを見た。



「ベンフィカ候爵からの指示ですから、致し方ありません」


「リリアーナお嬢様はご自分でほとんどのことをされますし、王宮からメイドや執事が付くそうですよ」


「カナンの悪戯がすごかったので、できればミセスブラウンかケイティに付いてきてもらいたいですけれど」



 私はカナンを見ながら言うと、ミセスブラウンは更に困った表情を浮かべる。



「お嬢様、カナンの付き添いも王城までとなります。王宮でのご宿泊はお嬢様、お1人でございます」


「え? なんで?」


「お嬢様、言葉が悪いですわ。今回は内密にとのことで、お嬢様はアレフレッド殿下のお部屋にご宿泊となるそうです。私どもは、王族の私室に入室することは許されておりません。ご理解してくださいませ」


「何とかなりませんの?」


「警備のことなど踏まえての結果でございます。ご安心を、お嬢様。王族はご自分の私室に客室がございます。城内の客室ですと誰でも入れてしまうので、警備も厳重にしないといけません。それゆえ、王宮内でも限られた者しか入れない場所にお部屋を用意されただけの違いでございます」


「そう」


 ベンフィカ邸では私のベッドで寝ていたけれど、さすがにご自分の部屋では別々よね。婚約者って言っても、まだ学生なんだし。


「では、カナン。お嬢様のこと、くれぐれも頼みますよ」


「かしこまりました、ミセスブラウン。さぁ、リリアーナお嬢様行きますよ」



 カナンが鞄を持って、私を促す。



「ミセスブラウン、ケイティ、いってきます」



「いってらっしゃいませ」



 いつもと変わら無い様子の2人。

 ありがとう。

 心の中でお礼を言って、寮の部屋から出た。



 まだアレフ様は来ていなかったので、私はエントランスで紅茶を飲むことにした。



「カナンも紅茶はいかがかしら?」


「ええ。いただきます」



 備え付けのティーセットで紅茶を淹れると、私はカナンの分と2客のティーカップを持ってソファーに座った。



「まさか、1人だなんて思わなかったわ」



 ただでさえ、不安なのに。



「1人? アレフレッド殿下がいらっしゃいますよ」


「そうですけれど。身の回りのことを王宮に勤める方に手伝っていただくことになるのよ。せめて1人だけでも、許可が下りないかしら?」


「入室できませんから、諦めてください」


「わかっているわよ。言ってみただけ」



 プロテクトを外すことも、外した後のことも不安なのに、身の回りのことも知らない人にやってもらうなんて、落ち着けないわ。

 でも、無理なことをカナンに話したところで何の解決もできないのはわかっている。

 カナンが慰めの言葉を言ってくれる人では無いことも。

 沈んだ気分のまま紅茶を一口飲む。



「わかりました。リリアーナお嬢様、今回限りですよ。どうしても困ったことがありましたら、私の名前をお呼びください。必ず、駆けつけます」



 カナンが珍しく真面目な顔で言った。

 入れない場所なのに、できる訳ない。

 けれど、カナンが私を気遣って言ってくれたことがすごく嬉しい。

 もしかしたら、本当に来てくれるようにも思えた。



「ありがとう、カナン。必ずよ。呼んだら、すぐに来てね」


「かしこまりました。さて、アレフレッド殿下がいらっしゃたようです。参りましょう」


「ええ」



 私たちが外へ出ると、丁度1台の車が寮の前で停まった。

 運転席からマキシ様が、助手席からはハメスさんが降りる。



「お待たせいたしました。リリアーナ様」


「いいえ。私たちも、今出てきたばかりですわ」


「左様でございましたか。失礼致します。殿下」



 マキシ様が後部席のドアを開けると、ムスッとした様子のアレフ様が降りてきた。



「マキシ、なぜ、この車のドアは開かないんだ?」


「王侯貴族がご自分でドアを開けるなんて、あってはなりません。


「それはケースバイケースで対応してほしいな」


「停まっていない車から降りることが無ければ、そのように致します」



 15歳にもなってチャイルドロックを掛けられてるなんて。

 くすくす笑っていると、バツが悪そうにアレフ様が私の手を引いた。



「あんまり笑うなよ」


「ごめんなさい、おかしくて」



 車は海外セレブが乗っているようなリムジンカーで、当然のごとく初めてだった。



「どうかした?」



 キョロキョロと物珍しそうに見ている私の行動は不自然だったみたい。



「すみません、珍しくて。今回は内密にって聞きましたけれど、このような車で行ったら簡単にバレてしまうのではないでしょうか?」


「あー。城だと、普通の車の方が目立つんだよ」



 そっか。

 みんながこういう車で来るなら、同じような車じゃないと逆に目立つわよね。



「そうでしたか。車の中ですのに広くて、不思議な感じですわ」


「そうか。城までしばらくかかるし、何か飲むか?」



 アレフ様が立ち上がったので、私も慌てて立ち上がる。



「私がご用意いたしますわ」



 アレフ様が向かった方へ私が歩いて行くと、車がゆっくりと曲がった。



「いいよ。リリーは、うわっ!」



「ご、ごめんなさい」


「一応、車は走っているから、リリーは座っていたらいい。」



 バランスを崩した私を抱きと止めながらアレフ様が言う。



「わかりました」


「飲み物はもう少し、後でもいいか?」


「ええ」



 私を横に抱きかかえ直すと、アレフ様はまた席に座り直す。

 私の背に回した腕がきつくなった。



「緊張してる?」


「当然ですわ」



 アレフ様の膝に座ったまま抱きしめられて、緊張しない人なんていないわ。



「そうだよな。リリーはプロテクトの事も忘れていたみたいだったし、外す儀式をする為に城に行くって言われたら戸惑って当然だよな」


「えっ? あ、プロテクトの話でしたのね」



 やだ、勘違い。



「何のことだと思ったんだ?」



 腕を緩めて私の顔を見たアレフ様は、不思議そうな表情をしていたのに、直ぐに察したのだろう。

 ニヤッと笑った。



「降ろしてください」



 顔を俯かせて小声で頼む。



「リリー、耳まで真っ赤になってる」


「私には見えません」



 膝から降りようともぞもぞと動いていると、耳に何かが触れた。



「ひゃあ!」



 思わず出た声に私が一番驚いてしまった。



「りりー。飲み物は城に着いてからでいいよな?」


「……はい。 あの、耳は止めてください」


「俯いているから、耳になったんだよ……」



 アレフ様の言葉の最後の方はうまく言葉になっていなかった。

 今度は声が出ないように耐えたつもりだったけれど、思いっきりしがみついていたことに、私は気付かなかった。

お読みいただきありがとうございました。

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