表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エクリプス  作者: 元蔵
第1章 全身全霊をかけてあなたに恋します
7/98

7.隠しキャラ設定なのに、存在感あり過ぎて隠れてない人っているよね

「ところで、リリー。何の用だ?」



 そう言うと、アレフ様はまた机に突っ伏してしまった。

 アレフ様の様子に少し動揺するが、愛称である『リリー』と呼ばれたことでモチベーションが上がる。

 そうよ、さっき『コイツが?』って言ってた気もするけど、大丈夫よね。

 まだ婚約者フィアンセなのだし、今日はまだ入学直後の4月10日。

 主人公との仲もまだ完全ではないハズよ。



 「はい。お話ししたいことがありまして、良かったらランチの時間ですし、カフェで聞いていただけませんか?」


「カフェ? ああ。いいぞ」



 そう言うとアレフ様は颯爽と、……さっそうと言うよりは、何ともダルそうに立ち上がる。

 教室のドアまで行き、付いて行かなかった私を不思議に思ったのか、振り返る。



「どうした? 行かないのか?」


「いえ。今、参りますわ」



 私は速足でアレフ様の横に並ぶと、一緒に教室を出た。

 


 おかしい。 

 リリアーナの体力が無い所為なのか、 並んで廊下を歩いているハズなのに、どんどん距離が離れていく。

 時々、目立たないように小走りで追いついても、すぐに引き離されてしまう。

 ダルそうに歩いているのにアレフ様はとても速い。 

 


「アレ、フさま。少し、お待ち、に、なって、ください」



 息も絶え絶えになって言う私。

 大した距離を歩いていないのに、こんなにツライ思いをするなんて。



「何やってんだ、お前?」



 不思議そうな表情でアレフ様は言った。

 そうよね。気付いていたら、こんなことしないわよね。



 ゆっくり歩いてもらってカフェに着いた私たちは、当然の様に2階に上がり、アレフ様の生徒手帳を読み取って個室に入る。

 個室に入ると、エレベーターがあった。

 ゲームでは『ここからは内緒ですよ』とアレフ様が言った瞬間、3階に到着していたのはエレベーターだったからなのね。

 


 3階は王族専用スペースだ。

 ゲームだと、かなり好感度を上げないと一緒に入れてくれなかった所で、ちょっとワクワクする。

 


 吹き抜けの近くには植物が置かれ、階下からは見えないように工夫されていた。

 3階も使用可能だと知らない生徒からは植物を飾っているようにしか見えないだろう。

 1階や2階と同じテーブル席が5席、ソファーでくつろげる席も3席ある。

 キョロキョロ見てると、他にも利用者がいた。



 アレフ様と同じ、ゴールデン・ブラウニッシュ・ブロンドの髪を肩くらいまで長く伸ばし、意志の強いラピスラズリの瞳、齢17歳にして荘厳な雰囲気を醸し出す、第1王子様。

 クラウディオ・ソルーア殿下だ。

 クラウディオ様はエストレイラ学園の3年生で生徒会長を務めている。

 私が今、攻略のために進めていた隠しキャラの1人。

 取説にはシルエットでしかお姿は無く、声優の名前だけがスタッフの所に出ているのよね。

 ただ、もう1人の隠しキャラとは違って、入学式の生徒会長挨拶とシルエットがピッタリ同じだから、すぐわかるの。

 既に攻略サイトにも、専用ページで攻略方法が載っていたしね。


 

 ん?

 アレフ様、もしかしてクラウディオ様の方に歩いてる?

 私、話があるって言ったよね?

 クラウディオ様と会うなんて、急に難易度が上がっているんですけど!!



「あの、アレフ様」



 私の言葉を待っていたかのように、



「あそこに兄上がいるから一緒に食べよう。会うの久しぶりだろ?」


 

 何事もなく、さも当然のこととばかりにアレフ様は言うと、クラウディオ様の元へ近づいて行く。

 クラウディオ様も私たちに気が付いたらしく、食事の手を止めた。

 グラスの水がまるで高貴なワインかのように優雅にお飲みになる。

 うわぁ。

 髪が差し込む日差しをキラキラ反射して、周りが光輝いて見えます。

 クラウディオ様の雰囲気と合わさり、もう神々しいばかりでございますぅ。

 はっ。

 私の言葉まで変わってしまったわ。

 恐るべし。

 さすが、クラウディオ様だわ。

 グラスを置いて、コッチ見てるよ。

 私たちが来るのを待ってるよ!



 私たちがクラウディオ様の席まで行くと、



「アレフたちも食事か?」


「はい。兄上、ご一緒しても?」


「ああ。座るがいい。」



 うわ。

 許可取っちゃったよ。


 

 クラウディオ様の正面にアレフ様が座るのを眺めながら、このまま逃げようか? なんて思っていたら



「久しいな、リリアーナ。」



 と、お声がかかった。

 逃げ道は無さそう。

 難易度が上がっても頑張るのよ、リリー!



「ご無沙汰しております。クラウディオ殿下」



 スカートの裾を摘み、頭を下げる。



「うむ。ここは王宮では無く、学園内だ。形式ばったものは必要無い。リリアーナも座りなさい」


 その言葉を聞き、私は顔を上げ、



「ありがとうございます。では、失礼いたします」



 そう言って、私はアレフ様の隣の席に座る。

 アレフ様は私たちのやり取りを気にせず、メニューを選んでいた。


お読みいただきましてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ