61.GWイベント 〜告知〜
初の主人公不在の話になります。
車から見える景色をアレフ様は眺めていた。
「本当に、よろしいのですか?」
バックミラー越しにマキシ様が問いかける。
「ああ。リリーを連れて行ったら、午前中に終わらないだろう。それに何が起こるかわからないからな。家にいてもらいたい」
「ですが」
「着いたな。すぐに戻る。マキシは車を停めて、そのまま待機だ」
アレフ様はまだ動いている車のドアを開ける。
「殿下!」
マキシ様が慌てて車をその場に停めると、アレフ様は車から降りて店内へと入って行った。
後を追うようにドアを開けた時、後続車からクラクションが鳴らされる。
店の前の通路に車を停めることはできない。
マキシ様は後を追うのを諦め、車を空いている駐車スペースに停めた。
探し物は、エリクサー。
大きな店でなら売っている、ポーションの一種だ。
そのはずだった。
「売っておりませんね」
「みたいだな」
王都のドラッグストアを全て回ったと言うのに、売っているどころか取り扱っているお店は無かった。
車は、ナビの指示では無く、アレフ様の指示する道を走る。
「アレフレッド殿下、こちらの道でよろしいのでしょうか?」
車は、道幅の狭い道路を走る。
道行く人々は王都に住む人々から、武器や防具を装備している冒険者の姿へと変わっていった。
同じ王都なのに、ここまで雰囲気が異なるのですね。
確かに、リリアーナ様のようなお嬢様を連れて歩くには不安になります。
運転をしながら、マキシ様は思った。
「そうだな。もう少し行った所に駐車場があるだろう? ナビに出ている、そこに停めよう。そこからは少し歩く」
「かしこまりました」
駐車場の入り口にある発券機から駐車券を取り、マキシ様は空いているスペースに車を停めた。
「殿下、やはり危険でございます」
「ここもソルシティだ。少し冒険者が多いだけのな。さすがに身分バレはしたく無いから、殿下とは呼ぶな。で、ん、か……。でんでんでいいや。俺のことは、でんでんと呼べ。ほら、剣持って行くぞ」
「は、はい」
マキシ様は緊張した面持ちで刀を腰に差す。
アレフ様はバスタードソードを背中に吊るし、フードの付いた外套を羽織ると車から降りた。
「殿下、お待ちください!」
マキシ様も同じように外套を羽織り、先に歩いていくアレフ様を追った。
従者であるマキシ様でさえ、躊躇する街中をアレフ様は迷うこと無く進んで行く。
時折すれ違う者たちが絡んでくるのではないかと、マキシ様は気が気では無かった。
「殿下」
「でんでんだ」
「失礼。でんでんは、以前にもここへお越しになられたことがおありでしょうか?」
「……いや、初めてだ」
「そう、ですよね」
殿下が出かけていたとなると、自分が知らないはずが無い。
どんなお忍びだろうと、自分だけは必ず随行してきた。
専属の従者であると言う、お互いの信頼の証と言える。
しかし。
公務で出かける以外で王宮からほとんど出たことが無い殿下の、まるで通い慣れた道を歩く姿に、マキシ様は不思議に思った。
アレフ様が1軒の店の前で足を止める。
「ここだ。入るぞ」
「はい、殿……でんでん」
アレフ様がドアを開けると、薬や香辛料のような刺激臭が漂ってくる。
「ひどい匂いだな」
アレフ様が顔をしかめて言うと、同意するようにマキシ様も頷いた。
曲がりなりにも一国の王子が、こんな店に用事があるとは思われないだろう。
アレフ様の後を警戒しながらマキシ様は歩く。
中は薄暗く、所狭しと薬やハーブが積み上げられていた。
「いらっしゃい。見ない顔ね」
店の奥から、老婆の声がする。
「ああ。最近始めたばかりなんだ」
「そう。何をお探し? あら。いい男ね。サービスするわよ」
奥から、しわがれた声からは想像できない美女が歩いてきた。
「エリクサーが欲しい。ギルドに入りたいなら、買ってこいってパシらされたんだ。ここで売ってるからってきいたんだけど」
「そうだったの。しかし、エリクサーは高価よ。お兄さんたちに買えるかしら?」
艶やかな笑みを浮かべ、美女は近くに吊るされたハーブを手に取る。
ふわりと林檎のような甘酸っぱい香りが広がった。
「ああ。金はもらってきたから心配ない。それより、あるなら出してよ」
「わかったわ。はい。これがエリクサーよ」
少しして、紫色の液体の入った瓶を前に置いた。
アレフ様はその瓶を品定めするように見てから、女を睨みつける。
「なぁ、ミーシャ。俺はエリクサーって言ったんだよ」
「あら。違いがわかるとはね」
「これくらいわかるだろう。赤ポと青ポを混ぜたものを出すなよな」
「初心者って言ったじゃない。騙されなさいよ。エリクサーね。今あるのは2個だけなのに。どうぞ」
ミーシャと呼ばれた女はアクアマリンのような薄い青い色をした瓶を2個取り出した。
今度はアレフ様も頷く。
「いくらだ?」
「闇に呑まれる前に小さき姫を救い出せ」
「は?」
ミーシャの唐突な言葉に、2人は驚く。
「ミーシャ?」
「エリクサーは1個10万。2個だから20万よ」
「あ、ああ」
支払いを済ませながら、気のせいだったのかとアレフ様は思案する。
ミーシャは話した素振りを見せない。
「気を付けてね。お兄さん」
「エリクサーは、今度いつ入荷するんだ?」
「冗談言わないでちょうだい。滅多にある物じゃないのよ。今だって、2個もあったのは幸運なんだから」
「そうなんだ。しかも結構高いな」
「当然よ。調合できる人もあまりいないし、材料だって知られていないんだから」
「そっか。また来るよ」
「ええ。今後もご贔屓に」
アレフ様とマキシ様が店を出ようとした時、また声が聞こえる。
「……タイムリミットまで24時間。店を出たところから開始致します」
「マキシ、聞こえたか?」
「姿は確認できませんでしたが、彼女以外の声がしました」
「タイムリミットまで24時間とか、聞こえたんだが」
「はい。私にも聞こえました。『闇に呑まれる前に小さき姫を救い出せ。タイムリミットまで24時間。店を出たところから開始致します』で、ございました。どういう意味なのでしょうか?」
「わからないな。何だか、嫌な予感がする。ベンフィカ邸に戻るぞ」
「かしこまりました」
2人は駐車場へと急ぎ歩きだした。
駐車場に面した広場のような所に、冒険者が集まっていた。
「殿下。あそこに集まってる冒険者たちは、何をしているのでしょうか?」
「掲示板があるから、それを見ているんだろう」
「掲示板ですか」
「ああ。その掲示板からクエストやシナリオを進めて、報酬を受け取ったりするんだよ。どこの街にもあるんだ。そうだ、掲示板。さっきの言葉は、新たなクエストだったのかもしれない。マキシ。俺、掲示板見てくる」
言うが早いか、アレフ様は掲示板のある、冒険者がいる方へ走って行く。
「アっと、でんでん。私も参ります」
マキシ様もアレフ様の後を追って走り出した。
アレフ様は不思議と冒険者の中に溶け込み、王族の特徴的なゴールデンブラウニッシュブロンドの髪もあまり目立たなかった。
クエスト、シナリオ、イベント、おおまかなページだけでも種類は3つ、それぞれのページにも沢山書き込まれていた。
「これは、どこを見たらいいかわかりませんね」
思わずマキシ様が呟くと、横にいた女性が声を掛けてきた。
「最初はわかりにくいわよね。慣れるとそうでもないんだけど。今日から始まるイベのページを探しているの? それだったら、イベントの3ページ目よ」
「ありがとうございます」
「いいのよ。最初は誰だって初心者なんだから。じゃ、頑張ってね!」
「はい。ご武運を」
女性が去り、マキシ様は教えてもらったページを見る。
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GWイベント第1弾!
称号を手に入れろ!
悲劇のお姫様、リリア。
彼女が持つ、魔晶石を作り出す不思議な力。
その高い魔力を狙って、闇の軍勢が彼女を連れ去ってしまった。
彼女が闇に落ちてしまう前に、闇の手より救い出せ。
報酬
魔晶石 5個
称号 姫の騎士 5月31日迄、全ステータス +5
※6月1日からは+2になります。
イベント期間、本日4月27日の正午より4月29日24時迄。
時間内にイベントマップに行かれた方までと致します。
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「GWイベントか。リリア……。リリアーナと関係があるのか?」
「リリア姫。少なくとも、近隣の姫君に同じ名前の方はいらっしゃいません。」
「貴族令嬢の中には、いるか?」
「貴族の中でも、いらっしゃいませんね。唯一、リリアーナ様のお名前が、似ているくらいでしょうか」
「そうか。関係ないといいんだが。そろそろ行くぞ」
2人は掲示板の前から足早に立ち去った。
PCが何とか復旧しました。
それは、とっても嬉しいのですが。
名前や、攻略キャラの公開していない決め台詞、誕生日などなど。
思い出せません。
没にしたので、一から考え直しってところでしょうか?(ノД`)・゜・。
時間割とか、選択授業とか、先生は……矛盾だらけになりそうで恐ろしいです。
寒くなってきました。
どうぞ、風邪など引かれませんよう、ご自愛ください。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




