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エクリプス  作者: 元蔵
第2章 全身全霊をかけてあなたについていきます
43/98

43.ベタな出会いイベントなんて、発動しないでよ!

 マキシ様の後に付いて、3階へ向かう。

 チラリと見える横顔は、とても真剣で硬い表情をしている。

 話しかけていいものか迷っているうちに、3階へ着いてしまった。



「アレフレッド殿下。リリアーナ様がご到着でございます」


「ああ。ありがとう、マキシ。下がっていいよ」


「はい、失礼いたします」



 マキシ様は、アレフ様と私に一礼をして、このフロアーから出て行ってしまった。

 いつものマキシ様らしくない。

 そう思ったけれど、私の知っているマキシ様は、カフェでの様子しか知らないのよね。



「リリー、どうした? そんなところに立っていないで、座ったらいい」


「はい。失礼いたしますわ」



 アレフ様の正面の席に座ると、すぐに紅茶が運ばれてきた。

 紅茶を運ぶマキシ様の横顔を見ても、なぜか余所余所しい。

 いつもは、笑顔で運んでくれるのに。

 私、何かしたかな?



「友達と一緒だったんだろう? 呼び出して悪いな」


「いえ、大丈夫でしたわ。それより、どのようなご用ですの?」



 紅茶を飲みながら尋ねた。



「うん。ナザリトが、今日の放課後に魔力を確認すると言っててね。リリアーナの都合はどうかと思ってさ」


「そうでしたか。私は今日で構いませんわ」


「そうか。次の選択は、リリーは美術か?」


「ええ。アレフ様は音楽でしたわね。3時間目の選択科目も違いますわよね」


「せめて選択科目くらい、同じ教科だったらいいのにな」


「本当ですわね。次回は、同じものを選びましょう」


「そうだな。呼び出してすぐで悪いが準備もあるし、そろそろ行くか」



 3階には時計がなく、授業の開始や終了を告げる鐘の音も聞こえにくい。


 

「そうですわね」



 私たちは席を立ち、並んで歩きだした。



「音楽の授業では、どのようなことをしていますの?」


「ただ曲を聞いてることが多いな。午後だし、昼寝にはピッタリだよ」


「まぁ。先生に注意されませんの?」


「リラックスすることが大事だって、ほとんどの生徒が寝ていても注意されないよ。先生も目を閉じていて、寝てるみたいだよ」


「先生も、ですか。美術は、毎回絵を描いていますのよ。今日は外で写生をするので楽しみです」


「へぇ。全然違うな」


「ただ、先生も一緒に絵を描いていますわ。指導をされないと言う点では、同じかもしれませんわね」


「ハハ。そうか」


「それでは、放課後ですわね」


「ああ、後でな」



 アレフ様が華組の教室に入るのを見届けてから、私は雪組の教室に入った。

 まだ何人か生徒が残っており、エイミーとメリッサの姿が見える。



「あら? シャムエラ様は一緒じゃありませんの?」


「おかえりなさいませ、リリアーナ様。シャムエラ様は音楽の授業だそうで、別々ですわ」


「そうだったの」


「私は、美術なので、写生を一緒にしようと思います」


「ふふ。メリッサ様、完成したら見せてくださいね」


「いいですよ。リリアーナ様もエイミー様も見せてくださいです」


「ええ」


「わかりましたわ。さて、そろそろ参りましょうか?早く行かないと、いい場所が無くなってしまいますわ」



 エイミーの言葉に、慌てて私はスケッチブックと鉛筆を用意する。



「いつも待たせてごめんね、エイミー」


「とんでもないですわ」



 笑って答えたエイミーは、既に歩き始めていたメリッサの方へ歩いて行く。

 スケッチブックとペンケースを両手で抱え、廊下へ出てしまった2人を追い駆ける。



「あ!」

「リリアーナ様!」



 珍しく2人が大きな声を出したと思ったら、私は思いっきり誰かにぶつかっていた。



「きゃあ!」

「うわ!」



 大きな音がしたと思ったけれど、それ程痛くない?



「リリアーナ様、大丈夫ですか?」



 エイミーとメリッサの心配そうな声がする。

 大丈夫、と言おうとして、先に声がかかる。


「早く、降りてくれませんか?」



 この声は!

 目を開けると、私はロイク・チェルシー様を押し倒していた。



「キャッ! すみません!」



 慌てて後ろに下がると、ゴチンとドアに後頭部をぶつけてしまった。

 痛い。

 毎度のことながら、そそっかしいな、私って。


「申し訳ありません。その、大丈夫でしょうか?」



「ああ。私は平気ですよ。怪我なら治せますからね。それよりも。今、頭をぶつけたでしょう。見せてください」



「いえ、丈夫ですわ」


「大丈夫な音じゃありませんでしたよ。ここら辺かな?」



 私の頭に、手を伸ばすロイク様。



「いたっ」


「ここですね。」



 ロイク様が、何か歌のような言葉を言うと、私の後頭部が温かく感じ、痛みが引いていく。



「痛く、ない、ですわ」


「はい。完了です」


「ありがとうございます」


「どういたしまして」


 ロイク様は立ち上がると、どうぞと、私に手を差し伸べ、立ち上がらせてくれた。

 (リリアーナ)はロイク様と知り合いなのかな?



「あの、ご自身の怪我は治さないのですか?」


「私は男ですので、これくらいは平気です。次から、教室を出る時は気を付けてくださいよ」


「はい。気を付けますわ。あ、あの……」


「ん? ああ。私はロイク・チェルシーです」


「私は、リリアーナ・ベンフィカでございます。治していただきまして、ありがとうございました。ロイク様」


「お安い御用ですよ。では、私はこれで」



 音楽室へ向かうロイク様にお辞儀をして、ホッと溜息をつく。

 治癒魔法かぁ。

 今の呪文、聞いたような覚えがあるわ。

 ヒール? なんだったかな?



「大丈夫でしたか? リリアーナ様」


「ええ。癒し魔法ってすごいのね。本当に、一瞬で痛みが消えたわ」


「不幸中の幸いですね」


「そうですわね。さあ、行きましょう」



 美術の授業は、今日は下書きで、来週に色塗りをして提出となった。

 先生は指導することも無く、私たちと一緒に絵を描いている。

 この先生は攻略キャラじゃないけれど、眉目秀麗で、筆よりも重い物なんか持ったことが無さそうな、繊細なイメージだ。

 美男美女ばかりだわ。

 もし、杉本和香のままの姿でこの世界に来ていたら、浮いた存在になること間違いないわね。


あらすじを短くしてみました。

最後の3行を付けるか付けないかで、迷いました。

後悔は、

多分しません。


お読みいただき、ありがとうございました。

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