41.恋バナは好きだけど、自分の事は恥ずかしくて言えないものだよね
ルカ先生の準備室は、この国にまつわる歴史書や古い地図が置かれた中に、8人が座れるテーブルと椅子が用意されていた。
君セナではこんな席が無く、ルカ先生の机にイスを用意してもらっていた。
「散らかっていますが、お好きなところに座ってください。今、珍しいお茶を用意しますから」
やった!
ルカ先生が珍しいって言うのなら、カフェに無いお茶ってことよね。
1人ワクワクしていると、みんなはイスに座ったようだった。
シャムエラは手伝わないの?
君セナだと、手伝うようなスチル絵があるのに。
まぁ、いっか。
「ルカ先生、お手伝い致しますわ」
私は、早く何のお茶か知りたくて、ミニキッチンにいるルカ先生のそばへ行って話しかける。
驚いた表情で振り向くルカ先生。
「そうですね。では、こちらのお菓子を運んでいただけますか?」
「わかりました」
お皿に1つ1つ丁寧に個装された和菓子が載ったお皿を受け取ると、私はみんなの前へ運ぶ。
「わぁ。かわいい!」
「見た事が無いお菓子ですね。全て見た目が違いますが、同じお菓子なのですか?」
「えっと」
メリッサの質問に、どう答えていいのか迷っていると、後ろから茶器とポットを持ったルカ先生が答えてくれた。
「これはですね。ソルーアから離れた所にある小さな島国のお菓子なんですよ。和菓子と言うのですが、セットの物を取り寄せたので色々な種類のお菓子が入っているんです」
「そういえば、マキシ様が用意してくださったお菓子と同じものがありますわ」
エイミーが三色団子を持って見せる。
もしかしてあの時、初めて見たのかな?
私は、和菓子について知らないフリをした方がいいのかな?
君セナでは和菓子やお茶の話を、ルカ先生が話すのよね。
ゲームの通りに進んでいないし、ゲームの様に進めなきゃいけない理由もないんだけれど。
「三色団子ですね。エイミーは食べたことがありましたか?」
「ええ。先日、カフェでいただきましたの」
「さすが、この学園のカフェともなると、色々なものが用意されていますからねぇ」
話しながら、ルカ先生が急須にお湯を入れる。
香ばしい香りが漂ってきた。
「わぁ。いい香りですね」
「そうですね。このお茶は、ほうじ茶と言うんですよ。熱いですから、気を付けて飲んでくださいね」
ルカ先生が注いだお茶を受け取って、みんなの前に並べていく。
急須に湯呑と、懐かしく感じるわ。
「変わった形のカップですわね」
「本当ですね。初めて見ますよ。まるでグラスを陶器で作ったみたいです」
メリッサとエイミーが不思議そうに湯呑を眺めている。
「わっ!熱い。リリアーナ、よく持てたわね。熱くなかったの?」
シャムエラが、やけどをしていないか、指先を見ながら聞いてきた。
「そうかしら? お茶が入っていない部分は、それほど熱くありませんのよ。底の部分で持てば熱くはないと思いますわ」
「そうね、他の部分を持つよりは熱くないかもね。」
私は自分のお茶を受け取って、エイミーの横に座る。
「変わった香りのお茶ですわね。リリアーナ様は、ほうじ茶をお飲みになったことがありますの?」
「ええ。カフェで飲んだグリーンティの親戚みたいなお茶よ」
「そうですの? 色がだいぶ、違うようですが」
「確かに、見た目は全然違うわよね。けれど、同じお茶なのよ。グリーンティは葉を蒸したもので、ほうじちゃは乾燥させた大きな葉や茎を焙じたものなのよ。」
「ほうじたとは、どういう意味なのでしょうか?」
「うーん。炒ったものってことなんだけれど。コーヒー豆みたくローストしたってことかしら?」
「へぇ。お茶に詳しいのね」
「そうかしら? それほどでもないと思いますわ」
以前は、毎食後に出されてたお茶だったから、知ってて当然なのよね。
香りを楽しむと言うよりは、包むように湯呑を持ったまま話していると、ルカ先生が私たちの方へ来ながら話しかけてくる。
「おや? リリアーナはこのようなお茶は苦手でしたか?」
「いいえ、大好きですわ。カフェでアイスグリーンティをいただくこともありますの。今は熱いので、冷めるのを待っているのですわ」
「そうでしたか。リリアーナはこの国のお茶を飲んだことがあるのですね。そう言えば、アレフレッド殿下もお飲みになったことがあるみたいですね」
話ながらルカ先生は、一番端にいたシャムエラの隣に座る。
私たちがいなければ、君セナのイベントを見ているようだわ。
「アレフレッド殿下も、こういうお茶を飲むんですね」
「言えてる。前に、カフェで食事したときは、ソーダを飲んでいたわ」
「王子様っぽくない、アレフレッド殿下らしいです」
どうやら華組のクラスでは、アレフ様は王子様らしくないってレッテルが貼られているみたいね。
クラウディオ様のような、既に王様みたいな風格を持った王子様がいたら、霞んでしまうから余計、仕方ないのかな。
程よく冷めたほうじ茶を一口飲み、私は久々のほうじ茶を堪能する。
やっぱり、これだよね。
ルカ先生のおかげで、新歓ダンパの話もうやむやになったし。
シャムエラとルカ先生を見ると、2人で何か楽し気に話している。
あー。
私はしがない教師の1人ですし、教師として教え子にこのような感情を持つことはいけないことなのですが。
それでも、この気持ちを抑えることはできませんでした。
愛してます。あなたを。
先生と生徒の禁断の恋。
周りにバレないように、注意しながらデートを重ねて。
卒業式の後にルカ先生からの告白がある。
勿論、その前に主人公からも告白できるんだけど、返事はもらえないのよね。
すれ違ったりもするけれど、好きな気持ちは止められないのよね。
1人、お茶をすすりながらニマニマとシャムエラたちを見ていると、予鈴が聞こえてきた。
「あら、もう、そんな時間ですの?」
エイミーが驚いたように言う。
「ランチタイムは短いですからねぇ」
「じゃ、教室に戻ろう。ルカ先生、ごちそうさまでした。」
「いえいえ。お粗末さまでした。また、いつでも遊びに来てくださいね」
「はい。」
「ルカ先生、それではまた後で」
シャムエラとメリッサが先に挨拶をして、準備室から出て行く。
エイミーも挨拶をしているので、私もご挨拶をして教室に戻らないと。
立ち上がって、ルカ先生のそばへ行く。
「ルカ先生、ごちそうさまでした。とてもおいしゅうございました」
「そう言ってもらえて、何よりですよ」
ルカ先生に退室の挨拶を続けようとしたら、
「あー、リリアーナ。あなたには感謝していますよ」
突然の言葉に驚いてしまう。
「感謝、でございますか? 私は、特に何もしていないと思いますが」
何のことか、見当が付かなかった。
「シャムエラのことですよ。彼女は、入学当初から一般生徒と言うこともあってか、中々クラスに馴染めずにいたのです。最初は暗い顔をしていることもあったのですが、最近はよく笑顔を見せるようになりましてね。リリアーナがシャムエラと話をしたり、一緒に食事をしたりしている姿を見て、あなたと言う友達ができて、シャムエラは落ち着いてきたのだと知りました。クラスにも馴染めたようで、メリッサと言う友達もできましたしね。それも、あなたのおかげですよ。ありがとうございます、リリアーナ」
「私は、そこまで考えて行動したわけではございませんわ。私がシャムエラ様とお話をするようになったのも、偶然ですし。お礼を言われるようなことはなにもしておりません」
「そうですか。ただ、あなたの何気ない行いが、1人の少女の心を救ったことには変わりありません。ですので、お礼を言わせてください。ありがとうございます、リリアーナ」
「そのようにおっしゃっていただけるとは、光栄ですわ。こちらこそ、ありがとうございます」
軽く会釈をして、私はルカ先生の準備室を出る。
やっぱり、この学園に一般入学をしていたシャムエラを気にしていたんだろうな。
私が見かけたときも、友達と一緒にいた様子は無かった。
そもそも、君セナでも2年生になってリリアーナが登場するまで、女子生徒の存在がほとんどない。
学校行事も大抵、攻略に関する内容だったし。
もしかしたら、アレフ様の騒動が起きなければ、2年生になるまで女友達はできなかったのかも。
主人公なのに、それはそれでかわいそうだよね。
アレフ様の騒動も役に立ったのかもしれないわ。
迷惑だったのかもしれないけれどね。
お読みいただきまして、ありがとうございます。




