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エクリプス  作者: 元蔵
第1章 全身全霊をかけてあなたに恋します
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4.ばあやさんはミセスと呼ばないと怒るのです

ちょっと短めです。

「つ、疲れたー」


 思わず、ベッドに倒れこむ。

 今日は色々なことがあり過ぎて、このまま眠ってしまいそうだ。



「なんですか、その姿は。はしたないですよ」


「ばあや……」


「何かおっしゃいましたか? お嬢様」


「なんでもございませんわ。ミセスブラウン」



 起き上がり姿勢を正すと、栗色の髪を頭のてっぺんでおだんごにした、年配の女性が立っていた。

 君セナでは『ばあや』と呼ばれていたハズの彼女。

 当然のように、ばあやと呼んだら子供みたいだと注意され、食事をすればマナーが悪いと注意され、歩いていたら立ち居振る舞いに品がないと注意され、話しかけたら言葉遣いが悪いと注意され、何をしても注意されと、お説教尽くしだったのだ。

ただでさえ自分の状況がよくわかっていないのに、こんなに怒られたら落ち込んじゃうよ。



「今日はもう、休むことにします。おやすみなさい、ミセスブラウン」


「左様でございますか。では、これでわたくしも下がらせていただきます。おやすみなさいませ」



 ミセスブラウンが部屋から出ていくのを見てから、用意されたワンピースに着替え、ベッドの中に潜り込む。

 そして、午後のことを思い出していた。


 あの後。

 恥を忍んでフォーセット嬢に名前を聞き、エイミーと呼ぶことにした。(茶色い髪の女子はエイミー・フォーセットと言うらしい。)

 シンクレア先生と別れて教室に戻った私は、次の授業の教科書を開いて軽く読む。

 数学は、中学1年生の問題内容で、これならわかるから大丈夫ね。

 問題はその他の科目だった。

 リリアーナは何でも卒なくできるパーフェクトな令嬢だったハズ。

 それなのに、私が理解できたのは数学だけで他の教科は何もわからなかった。

 そもそも、薬草学って教科なんてあったかな?

 日本の学習内容と全く違うし、魔法やスポーツなど、文化も違う。

 今までリリアーナがどのように過ごしてきたか等の記憶は私には一切無い。

 ここには、最初にあれこれ教えてくれるチュートリアルも無い。

 親切な協力者もいない。

 ゲームなの? それとも、現実なの?

 わからない。

 突然、説明も無しに連れてこられても、楽しむには無理がある。


 

 寮の部屋に行き、家探しをする勢いで服や持ち物を見てみたけど、元の世界に戻る方法がわかるものは何も無かった。

 ううん。

 そもそも、持ち物が全く無かった。

 豪華な部屋に、あるのは制服の色違いや私服が数着、ドレスとアクセサリーも5点ほど。

 あとは勉強道具が机の引き出しに入っているくらいだった。

 全部でこれだけ?

 たしか、侯爵令嬢よね?

 持ち物が少な過ぎるわ。

 これじゃ、何もわからないじゃない。



 これからどうしたらいいのだろう?

 それとも、朝起きたら元の世界に戻っているのかな?

 そう思って、早く眠ることにしたのだ。

 どうか、起きたら。


『いやー。変な夢見ちゃった!』


 って舞と笑い飛ばしていますように。

 そう、願いながら目を閉じると、あっという間に眠りに落ちた。

お読みいただきありがとうございます。

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