28.誰だって王子様って響きに憧れるよね
「ねぇ、リリアーナ。昨日の方はどなた?」
「昨日のかた?」
シャムエラの突然の質問に、私は思わず聞き返す。
「そうよ。昨日、上級生の男子生徒と一緒にどこかへ行ったでしょ?」
ああ、そっか。
「クラウディオ殿下とジョナス様のことね。彼らは、生徒会長と副会長ですのよ」
「殿下?」
「クラウディオ殿下は、この国の第1王子様ですわ。シャムエラ様のクラスメイトのアレフレッド殿下のお兄様ですわ。」
エイミーの説明に驚いているシャムエラ。
え?
知らなかったの? この国の王子様なのに。
「アレフレッド殿下とはあまり似てないわね。あ、髪の色とか瞳の色は似てるけど、それ以外が」
「そ、そうかしら? お2人とも優しいところとかは、同じですけれど」
「ううん。全然違うわよ! 何て言うか、アレフレッド殿下は王子様って感じがしないのよね。オーラが感じられないって言うか。すっごく普通なのよね」
「普通、ですか? 親しみやすいってことかしら」
君セナ主人公からの感想が、普通かぁ。
確かに、アレフ様はゲームの設定みたいな王子様っぽくはないけれど、普通はないんじゃないかな?
「まぁ、クリフトス様よりは親しみやすいけど、なんか、違うのよね!」
そ、そうかな?
苦笑いをしていると、エイミーが窘めてくれた。
「シャムエラ様、そう思っていたとしても、リリアーナ様の前でおっしゃるのは、リリアーナ様がおかわいそうですわ」
「え? なんで? なんで、リリアーナがかわいそうになるの?」
エイミーの言葉に、私を見て驚くシャムエラ。
驚くところ、ソコなの?
「ご存じじゃないのですか? リリアーナ様はアレフレッド殿下のご婚約者ですのよ」
「ええー?! 婚約者なの?」
「はい。その、知らなかったようですのね」
ちょっぴり苦笑いを浮かべると、申し訳なさそうにシャムエラが謝ってくる。
「ごめんね。ウチってあまり王族とかって知らないのよね。ニュースくらいは観てるんだけど」
「小さい頃の出来事ですもの。仕方ありませんわ。実は私も婚約者になったのは覚えているけれど、どんな発表だったのかも覚えていませんもの」
ゲームでさらっとしか語られなかったから。
「そうよね。小さい頃のことなんて、覚えてないわよね! あれ? じゃ、婚約者がいるのにいいのかな?」
「何のことですか?」
私が質問すると、シャムエラは少し言いにくそうに話してくれた。
「ほら、今週末に新入生歓迎ダンスパーティがあるじゃない?」
「ええ。」
「殿下にエスコートや、ダンスのお約束をしに来ている女子が、沢山いるのよ。昨日、休まれていたからか、休み時間中、絶えず申込みに来ているわ。私、席が近いから、うるさくてたまらないの」
「そ、そうなのね、あはは」
笑いながらエイミーを見る。
「失礼ですわ! 婚約発表パーティの時もとても盛大で、わたくしは、とても憧れましたのよ。その女子たちもリリアーナ様に断りもせずに殿下へ申し込むなんて、あってはならないことですわ!」
「落ち着いて、エイミー。もし、私に許可を求めてきたら、私には断ることができないわ。結果として後押しすることになるから、私のところには来なくていいのよ。騒動に巻き込まれるだけだもの」
「それは、そうかもしれませんが。ですけど、リリアーナ様はよろしいのですか?」
よくはないけど。
でも、そこに私が行って、何て言うの?
私の婚約者に手を出さないで!!
って、叫ぶ?
そんなことしたら恥ずかしいわ。
「よくはありませんので、後で、アレフ様とお話をしてきますわ」
会うのが恥ずかしいとか言ってる場合じゃない。
わかっているけれど、今すぐ行く勇気は出なかった。
「まぁ、大丈夫だとは思うよ」
「何がですの?」
まだ、エイミーは納得が行っていないみたいだわ。
怒った様子のエイミーを見るのは少し意外だった。
エイミーの様子に動じることなく、話を続けるシャムエラ。
「アレフレッド殿下は、ほとんど聞かずに断っているから」
なんか、ありえそう。
面倒そうに適当にあしらっている姿が浮かび、ふっと笑ってしまう。
笑った私を見て、シャムエラが
「笑っているけどねぇ、近くの席に座る私とクリフトス様は、すごい迷惑しているんだからね!」
と、ちょっと怒ったように言った。
「申し訳ありませんわ。アレフ様の代わりに謝ります」
「もう!謝らなくてもいいから早めになんとかしてよね」
「そう、言われましても」
「今から行くわよ!」
「今からですか?」
結局、シャムエラに
早くして!
と言われて、そのままアレフ様の元へ行くことになった。
華組の教室の前には、女子生徒が列の様に並んでいる。
まるで行列のできるお店みたい。
確かに、このままじゃいけないわよね。
……整理券でも配りますか?
と、聞いたらシャムエラとエイミーにすごい顔で睨まれてしまった。
うう、私にどうしろと言うのよ。
「もう、こんなんじゃ、教室に入れないじゃない!」
「まあまあ、シャムエラ様。授業が始まる頃には、皆さま、ご自分の教室に戻られるでしょう」
「リリアーナ様、それでは問題の解決になっておりませんわ」
「う。そうね」
「それに、ダンスパーティまでずっとこの調子じゃ、私困るわ」
何とか教室に入ろうとするシャムエラに、横入りを注意する女子生徒もいる始末。
廊下から教室の中を覗いて見ると、1人、1人、申し込まれては、断っているっぽいアレフ様が見える。
うわ。
クリフ様、すっごく機嫌が悪そう。
ん?
アレフ様が立ち上がったわ。
どうされたのかしら?
「ちょっと、リリアーナ。教室に入るわよ」
「はい。今、行きますわ」
何とか入り口にいた女子生徒に通してもらって、シャムエラに続いて教室に入る。
そのときだった。
「悪いけど、これ以上はクラスの迷惑になる。それに、俺には婚約者がいるんだ。君たちのエスコートはできない。勿論、ダンスの約束も。みんな、自分の席に戻ってくれ」
アレフ様が席に座ると、ざわつきながらも、他のクラスの女生徒たちは去り始める。
「みんな、今週は迷惑かけてばかりですまない」
アレフ様が座ったまま頭を下げると、
「全くだ。もう少しでオレは、キレるところだったぜ」
横からクリフ様が言い、クラスのみんなが笑う。
「本当よ。隣の席の私は睨まれるし、散々だったわ」
シャムエラが話しながら席に座る。
「実は、わたしもよ。自分で選んだ席じゃないのに、怖かったわ」
と、シャムエラの近くの席の女子が口ぐちに言い始める。
和やかに話す華組の生徒たちを見て、私はコッソリ、出て行く女生徒に紛れて教室から出る。
だって、ほら。
私、何もすることないし。
あの場で婚約者は私ですよ! なんて言うのも怖いし。
そんなことしたら、ケンカ売ってるようなものよね。
それにまだ、心の準備もできていなかったし!
廊下から、クラスメートと話しているアレフ様をそっと見て、さっきの言葉を思い出す。
『 悪いけど、これ以上はクラスの迷惑になる。それに、俺には婚約者がいるんだ。君たちのエスコートはできない。勿論、ダンスの約束も。みんな、自分の席に戻ってくれ』
ちょっと、カッコよかったな。
言い訳の理由も君セナとほとんど同じだった。
くすっ。
思わず笑みが零れる。
ふふふ。
もう一度、アレフ様を見てから雪組に戻ろう。
そう思って、また華組の教室を覗くと、隣に座っているクリフ様と目が合ってしまった。
慌てて教室に背を向ける。
私だってバレバレよね。
もう、勘が鋭いって取説にも書いてあったけど、こんなところで発揮しなくていいのに。
覗いていたのは事実だけれど、知られたくなかったよ。
ん?
そう言えば、私は華組の教室から出てきちゃったけれど、エイミーはどうしたのかしら?
エイミーを探そうと顔を上げると、アレフ様が教室から出てきた。
驚いて、教室のクリフ様を見ると、私を見てニヤっと笑った。
酷い、話したのね。
「リリー」
アレフ様の声に、私は振り返る。
でも、アレフ様のお顔は恥ずかしくて見れない。
「はい」
「話がある。授業が終わったら、雪組に行く。帰らないで待っててくれ」
「わかりました」
そっとアレフ様を見上げると、真っ直ぐに私を見つめている瞳が見えた。
所々、辻褄が合わなかったり、おかしな部分をコッソリ訂正しています。
多いのが、最初の一文字が消えていること。
コピペをするときに消えていると思われます。
あとは、池が大きかったり、小さかったりしたのを大きいに統一したり、数字が間違っていたり、などなど。
かなり恥ずかしいですね。
もっともっと、精進したいです。
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。




