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エクリプス  作者: 元蔵
第1章 全身全霊をかけてあなたに恋します
25/98

25.デザートは別腹と言っていたら、絶対に後悔しますわよ

 朝になると、夢を見たような気がするのに、どんな夢だったか忘れてしまった。

 リリアーナの夢だった気がしたのに。

 やっぱり、身体や脳には記憶があるのかしら?

 わからないことだらけね。



 さてと。

 今日こそはクラウディオ様に会って、アレフ様の停学を止めてもらわないと。

 私は、青い制服を着て、髪を高い位置でポニーテールにし、濃紺のリボンを結ぶ。

 動きに合わせて緩く巻かれた髪が、ふわりと舞った。

 鏡であちこち見回す。

 髪型以外は君セナのデフォルト姿のままだ。

 弾けて砕け散るわけにはいかないしね。

 よし、戦闘準備OK!

 私は気合十分に、登校した。



 何も考えていなかったけど、どうやってクラウディオ様に会おう?

 朝、会うこともできず、昼休みになってしまった。

 3年生の教室には行きにくいし。

 やっぱり放課後、生徒会室に突撃かな?



 カフェでエイミーと、デザートの追加オーダーをどうするか話していると、マキシ様がやってきた。



「何か、お悩みですか?」


「こんにちは、マキシ様。丁度、デザートをどれにしようか相談していたところですわ」



 エイミーが嬉しそうに答えている。

 頑張れ、エイミー!



「そうでしたか。本日のおすすめは、こちらのフルーツプリンになっておりますが、こちらのオレンジを使ったチョコレートタルトも、大変良く仕上がっています。私は、オレンジのチョコレートタルトをお勧めいたします」



 エイミーの持つメニューを指さしながら、笑顔で説明されるマキシ様。

 ほんのりとエイミーが朱く頬を染めている。



「まぁ。それでは、私はオレンジのチョコレートタルトにいたしますわ。リリアーナ様は、どうされますか?」


「私は、フルーツプリンにする。それで、半分こにしましょう。両方食べてみたいから。いい?」


「そうですわね。わたくしも両方食べてみたいですわ」



 マキシ様は注文を取ると、すぐに去って行った。



「やっぱり素敵ですわ」



 マキシ様を見つめるエイミーも、とってもかわいいよ。

 ここは、私がキューピットにならないと。

 獲物、じゃなかった、マキシ様を見ると誰かにぶつかったようだ。

 マキシ様の陰から蜂蜜色の髪がふわふわと見える。

 ん?

 蜂蜜色?

 シャムエラだ。

 彼女はニコニコしながら、私たちの座るテーブルに近づいて来る。



「あの方は……」



 エイミーがつぶやいて、私をチラっと見る。

 この前、アレフ様とクリフ様と一緒にいるところを見てしまったものね。

 シャムエラに視線を戻すと、私たちのテーブルを目指しているようだ。

私たちの所で止まり、ニッコリと笑う。



「こんにちは。リリアーナ。私もご一緒してもいいかしら?」


「えっ?」



 エイミーが驚いて私を見た。

 そうだよね。

 まさか、友達になってるとは思わないよね。



「こんにちは、シャムエラ様。もちろん。どうぞ、お座りになってください。彼女は私のお友達のエイミー・フォーセット嬢ですわ」



 にこやかに紹介すると、話の流れでエイミーも挨拶を始める。



「わたくしは、エイミー・フォーセットでございます。よろしくお願い致しますわ」


「エイミーね。私は、シャムエラ・ポルトです。どうぞ、よろしくね!」


「は、はい。シャムエラ様」



 大きな瞳を更に大きくして、それでも律儀に答えるエイミー。

 シャムエラは、さっさと椅子に座る。



「ねぇ、さっきの人は誰なの?」


「さっきの人……、マキシ様のことかしら?」



 『さっきの人』で 思い当たるのはマキシ様しかいない。

 私の言葉に、シャムエラは目を輝かす。



「マキシさんって言うんだ! 毎日、カフェに来ているのに、初めて見かけたわ」


「私たちも毎回会うわけではないですよ。ねぇ」


「ええ。わたくしたちも、マキシ様に会える日は特別な日のように思えますわ」


「へぇ。そうなんだ。マキシさんもいいわね」



 シャムエラの言葉に、エイミーがハッとした表情でシャムエラを見る。

 思わぬライバル候補だ。

 私としては、アレフ様を狙わないでいてくれたら御の字だけど、マキシ様だと、エイミーがかわいそう。



「ええ。素敵な方ですわね」



 私が言うと、2人が私の後ろを見て、あっと驚き、ポっと顔を朱く染め、さっと視線を逸らす。

 偶然なのか、逸らした先で視線があった2人は、同時に照れたように笑った。

 何これ、かわいい。

 君セナではあまり仲が良いとは言い難い2人だったけれど、もしかして仲良くやっていけるかな? と思っていたら。



「リリアーナ様に、そう、おっしゃっていただけるとは、大変光栄に存じます」



 にこやかに笑うマキシ様が立っていた。



「ご謙遜を。誰もがそう思っていることですわ」



 ねぇ?

 って2人を見ると、うんうんと頷くシャムエラと、恥ずかし気に頷くエイミー。



「そうですか? ありがとうございます」



 話しながら、オレンジのチョコレートタルトとフルーツプリンを並べていく。

 そして、シャムエラに尋ねる。



「ご注文はお決まりですか?」


「あ、そうだったわ。って、あれ? 2人とも、それしか食べないの?」


「ええ。」


「私たちは先に食事は済んでいて、デザートを頼んでいたのですわ」


「そうなんだ。えーっと、どうしよう」



 メニューを見て、困る様子を見せるシャムエラ。

 もしかして、お小遣いがピンチなのかな?

 でも、まだ火曜日よね?



「もし良かったら、私が一緒にご注文いたしますよ」


「本当? ありがとう。実は、週末、家に帰らなかったからお小遣いが少なくて~。あ、マキシさん。Aセットをお願いします」



 君セナではルーレットを回すのだけれど、現実にはルーレットを回したらお金が手に入るなんて、ありえないことだものね。

 毎週、家に帰ってお小遣いをもらうことになっているのか。



「デザートはよろしいの?」


「だって、そこまで頼んだら、さすがにずうずうしいわ」


「まぁ。では、デザートはわたくしが頼みますわ」



 遠慮がちに話していたシャムエラの顔は、花が咲いたようにほころぶ。



「エイミー、ありがとう! じゃ、イチゴのキャラメルタルト!」


「かしこまりました」



 去って行くマキシ様の後ろ姿を眺めていると、シャムエラがポツリと言ってきた。



「リリアーナ、エイミー、ありがとう」


「お気になさらないでください」


「そうですわ。わたくしたち、お友達でしょう?」



 ふふ。

 と私たちは顔を見合わせて笑う。

 注文が引いたのか、すぐに、シャムエラのAセットとイチゴのキャラメルタルトが運ばれてくる。

 食べ始めたところでシャムエラがふと、気付く。



「あれ? 半分にしたの?」


「ええ。2つも食べたら太ってしまいますでしょ?」



 チャキっとデザートフォークを構えるエイミー。



「本当は、イチゴタルトとプリンで悩んでいたんだけど、マキシ様のお勧めがチョコタルトだったの」



 私も、左手にお皿、右手にフォークを構える。



「え? なんか、怖いよ2人とも?」


「一口でいいですわ! 私のプリンも一口分さしあげるから、イチゴタルトを一口くださいませ!」


 ザクっと音がしてタルトが割れる。

 口の中に入れると。イチゴの爽やかな酸味と香りの後に、キャラメルの焦がしたほろ苦さと甘みが口の中に広がった。



「はぅ。おいしー」


「あー! 私のイチゴのキャラメルタルトがぁ!!」



 もう!

 と、言いながら私のプリンを一口食べるシャムエラ。



「何これ。とろける~!」



 嘆いていた顔から一転して、にやけ顔になるシャムエラ。

 わたくしも~と、エイミーとシャムエラが交換し合い、デザートに舌鼓を打つ。

 

 オレンジのチョコレートタルトは、ビターが効いた苦めのタルトに、甘いピスタチオのスポンジが載り、その上に刻まれたオレンジピールが入ったチョコレートムース、更に小さくカットされたオレンジがちょこんと載っていた。

 見た目も綺麗だし、それぞれ別々に食べてもおいしい。

 それを一緒に食べると、また違う発見がある。

 それぞれがお互いを引き立てるかのように協調しあうのだ!!

 マキシ様が今日の出来が良いって太鼓判を押すだけのことがあるわね。

 なんだか別世界に来たみたいだわ。

 学校の食堂で、こんなデザートが食べられるなんて。

 さて、次はプリンを……とお皿を見たら無い。



「あれ? 私のプリン、無い」



 くすくす笑うシャムエラとエイミーを見ると、それぞれのお皿に私のプリンを更に半分にした物が載っていた。



「あー。取ったわね!」


「気付かないリリアーナ様がいけないのですわ」


「そうそう。美味しいものは早く食べちゃわないとね」



 言い終わると同時に、2人はパクリとプリンを食べてしまった。



「ガーン!! あぁ。私のプリン」


 くすくす笑うシャムエラとエイミー。

 私のプリンを食べちゃうなんて!

 プリンを嘆いていたら、向こうからクラウディオ様とジョナス様が歩いているのが見える。

 私に気付いたのか、私たちの方へ歩いてきた。



「何やら、楽しそうだな。学園にはすっかり慣れたのか?」


「はい。クラウディオ殿下。」



 私は、立ち上がると、軽くお辞儀をする。

 エイミーがシャムエラをつつき、同じくお辞儀をした。



「ああ、ここは学園内だから楽にして良い。リリアーナ。昨日、私に何か用事があったようだが、何かあったのか?」



 もしかして、それで私に会いに来てくれたのかしら?



「はい。お時間がありましたら、お話を聞いていただきたいと思っています」


「ふむ。わかった。これから話を聞こう。2人とも、少しリリアーナを借りるぞ」



 突然話しかけられて驚いた様子のエイミーだったが、しっかりと受け答える。



「承知いたしました。リリアーナ様、いってらっしゃいませ」


「あ、またね。リリアーナ」


「ええ。それでは、また。エイミー、シャムエラ様、ごきげんよう」



 軽くお辞儀をして、私はクラウディオ様とジョナス様の後を付いて行く。

 まずは、何て切り出そう。

 何としても、アレフ様の停学を取り消してもらわなきゃ!



暦上では、今日から立秋だそうです。

読書の秋ですね。

これからもお読みいただけたら嬉しいです。


最期までお読みいただきありがとうございました。

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