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エクリプス  作者: 元蔵
第1章 全身全霊をかけてあなたに恋します
24/98

24.夢でもいいから

 生徒会室に辿り着いた。

 私は、息を整えてからドアをノックすると、すぐにドアが開く。



「君は……」



 驚いた表情のジョナス様が立っていた。



「ごきげんよう、ジョナス様。あの、クラウディオ殿下はいらっしゃいますか?」


「ベンフィカ嬢か。悪いが、クラウディオ殿下はいらっしゃらない。すぐに戻ってくると思うから、中に入って待っているかい?」


 ジョナス様の申し出に、一瞬躊躇する。

 すぐに戻ってくるなら、外で待つより中で待っていたい。

 でも、公式設定で言う、プレイボーイであるジョナス様。

 老若男女、来る者拒まず、自分からも攻めていくキャラ。

 さすがに普通の男性には手は出さないけれど、男の娘はOKと書いてあった。

 TPOも忘れて口説いてしまい、生徒会長から叱責されることもしばしば。



 一応、王族の婚約者に手を出すことは無いよね?

 ゲームでは、主人公の前でだけだったのかもしれないし。



「はい。ご迷惑でなければ、お願い致します。」


「フ。そうこなくちゃな」



 ジョナス様は一度、生徒会室から出てドアの前を空ける。



「ようこそ、ベンフィカ嬢」



 私の隣に立ったジョナス様は、肩に手を添えて招き入れてくれた。



「失礼致します」



 リリアーナとしては初めて入るけれど、ゲームでは、ジョナス様イベントで度々登場する。

 カフェでも思ったけれど、ゲームと全て同じって面白いね。



「まずは、こちらのソファーに座って寛いでいてくれ。今、何か飲み物を用意してくるからな」


「あの、お構いなく」


「遠慮するなって。丁度、俺も1人で暇を持て余していたんだ。君が来てくれて助かったよ」


「そう言っていただけると、助かりますわ」



 少し待っててくれと言って、ジョナス様は続き部屋へ行ってしまった。

 その部屋はミニキッチンになっている。

 1人になり、案内されたソファーに座って周りを見渡す。

 座った位置から見る生徒会室は、ゲーム画面の生徒会室のままだ。

 じゃ、このソファーに座って、ジョナス様とイベントが起きていたのね。

 初期の頃だと、会話中心のイベかしら?



  ジョナス:シャムエラ、俺に会いに来たのか?


        A:こんにちは。ジョナス様!

   ▽   B:どうしても会いたくて……。


 最初から飛ばすと好感度が下がるキャラが多い中、ジョナス様は慣れていらっしゃるからか、Bを選ぶとすぐに小イベントが発生する。

 どうしても会いたくて……。

 を選択すると、



「俺に仕事の手を止めさせるとは、イケナイ子だな」



 ゲームと同じセリフに驚いて声のした方を見ると、センターテーブルに飲み物が載ったお盆を置き、面白そうに笑いながらジョナス様が近付いて来る。



 声に出てた?



 驚いていると、ゲームの様にジョナス様は私の隣に座る。

 違う、ダメだよ。

 私は今、ジョナス様を攻略しに来たんじゃない!

 慌ててソファーから立ち上がって、ジョナス様から離れる。



「フ、ハハハハッ。冗談だよ。」



 ひとしきり笑うと、ジョナス様はお盆から飲み物を差し出してくれた。

 そして、私が座っていたソファーの向かいにある、1人掛けソファーに座る。



「あ、あの……」


「からかって悪かった。さすがの俺でも、未来の第2王子妃に手は出せないさ」



 本当かしら?

 疑心暗鬼になって、ついジョナス様をじぃっと見つめてしまう。



「本当に悪かったよ。そんな目で見ないでくれ。さあさ、せっかく淹れた紅茶が冷めちまうぞ」


「いただきますわ」



 私はまだ、疑いの目を向けながらソファーに座り直し、紅茶を飲む。

 マスカットの爽やかな香りが広がる。



「おいしい」


「フ。そうだろ? 俺が淹れたんだからな」



 ニヤリっと笑うジョナス様を見て、本当はコーヒーばかり淹れてるのを、ゲームで知っているのよって言いたくなった。

 まぁ、本当に紅茶はおいしかったので言わないけど。

 ん?

 視線を感じて、顔を上げると、



「俺からは無理だが、ベンフィカ嬢から飛び込んでくるのには拒まないぜ?」



 そう言ってジョナス様はパチっとウインクをした。

 一気に顔が熱くなる。



「そんなこと、絶対にありえません!」


「どうだかな」



 どうして、そんなに自信たっぷりなのー!!

 早く帰ってきてよ、クラウディオ様ー!!



 私の心の叫びは空しく響く。



 結局、ジョナス様は生徒会室には戻られなかった。

 どうしたんだろう?

 私は紅茶を2杯いただいて、ジョナス様に寮まで送ってもらう。

 断ったんだけど、押し切られてしまったのよね。



「すまなかったな。クラウディオ殿下が戻られなくて」


「予測不可能なことですもの。仕方ありませんわ」


「ハハ。予測不可能か。……そうだな」



 寮の前に辿り着いた。

 1人で帰るより、やっぱり楽しいね。



「ジョナス様、送っていただいて、ありがとうございました。あと、ごちそうさまでした。」


「構わないさ。俺も丁度帰るところだったしな」



 丁度と言っても、女子寮と男子寮は校舎からは方向が逆の位置にある。



「遠回りでは?」


「フ、そうだな。じゃ、お礼としてこれからは、リリアーナと呼んでもいいか?」



 え?名前?



「別に構いませんが」


「そうか。じゃ、お礼はこれでお終いだ。じゃあな。リリアーナ」


 にこやかに笑うジョナス様。

 立ち去らないところを見ると、この場合、私が寮に入ればいいのかな?



「ごきげんよう、ジョナス様」



 私はお辞儀をして寮に入る。



「気付いていないんだな。俺はノックに気付いてドアを開けたわけじゃなかったんだが」



 ジョナス様が何かをつぶやかれたように聞こえたけど、振り返ると、ジョナス様は私に背を向けて歩き出していた。



 その日の夜。

 初めてリリアーナの夢を見た。

 小さい頃の私とアレフ様とクラウディオ様、そして見たことのない少女。

 5歳くらいだろうか?

 幼稚園児くらいに見える。



「クラにいさま~。アナさま~。わたしたちも、いっしょに行きたいですわ」



 小さなリリアーナが言うと、困ったような表情をするクラウディオ様とアナ、多分、アナマリア様。

 飴細工のような透き通るようなブロンドの長い髪。

 雪のような白い肌に桜のような淡い桃色の唇と瞳。

 とてもかわいい、美少女だ。



「わたしたちも連れて行ってください。お兄さま」


「お願いですわ。アレフ様と2人だけお留守番だなんて、イヤですわー」


「陛下に頼んでみましょう?」



 澄んだ可愛らしい声だった。



「アナは甘すぎるぞ」


「いいではありませんか、ね?」



 子供のクラウディオ様が赤くなってる。



「仕方ない。ここで少し待っていろ」



 そう言ってクラウディオ様が王宮に向かって歩き出す。

 喜んでいる私たち。

 眠りが深くなったのか、そこで夢は途切れてしまった。

少し、遅くなりましたが、暑中お見舞い申し上げます。

暑い中、お読みいただきありがとうございます。

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