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エクリプス  作者: 元蔵
第1章 全身全霊をかけてあなたに恋します
23/98

23.今の私にできること

「ふぅ」



 午前の授業が終わり、思わず私の口からため息が漏れる。

 途中に休憩時間があったけど、ぶっ通しで魔法学の授業と言うのは疲れてしまった。

 魔法は、血液の様に体を巡っている魔力を、意志の力で練るように収束させて発現させる。

 今日の授業内容は魔法の発動までだった。

 みんな、手のひらの上で五属性を象徴する、火、水または氷、風、草の芽や葉、石や砂が具現しているのに対し、唯一、私だけが何も発動しなかった。

 使わないようにしたんじゃない。

 使えなかった。

 さすがに凹むわぁ。



「元気出してください。リリアーナ様。今日は調子が悪かっただけですわ」



 エイミーが励ましてくれたけれど、落胆は隠せなかった。



「うん。次は頑張ってみるわ」



 少し投げ槍な言葉になってしまう。

 だって、私だけ発動しないって、罰ゲームみたいでしょ。



「リリアーナ様は幼少の頃から魔法がお上手でしたし、次回は大丈夫ですわ」



 だといいんだけど。



「そうだね。じゃ、ゴハン食べに行こうか?」


「はい。リリアーナ様」


 気持ちを切り替えて、私はエイミーとカフェに向かった。

 落ち込んでもできないものはできないのだから、落ち込むだけ損だわ。



 注文をして、空いてる席に座る。

 今日はマキシ様はいらっしゃらないみたい。



「マキシ様に会えるのを楽しみにしてましたのに」


「お忙しいのでしょう。きっと」



 私としては、会わなくてホッとしてるんだけどね。

 さすがに醜態をさらしてばかりじゃ、恥ずかしいもの。

 それにしても、今日はいつもより騒がしい。

 入学後、初めての休み明けだからか、週末に行われる新勧ダンパがあるからかな?

 そう言えば、結局、アレフ様はエスコートをしてくれるのかしら?

 ちゃんと確認しておかないとね。



「あら、アレフレッド殿下ですわ」



 エイミーの声に顔を上げると、丁度、アレフ様が2階から降りてくるところだった。

 急に静まり返るカフェを、どことなく、硬い表情をして足早に歩いて行く。



「アレフ様?」



 私のつぶやきが聞こえたのか、アレフ様が一瞬だけ私を見る。

 しかし、すぐに視線を戻し、歩調を変えることなく、カフェから出て行ってしまった。



「何かあったのでしょうか?」


「わかんない」



 アレフ様が出て行くと、カフェは先程までの騒がしさに戻る。

 何か、とても嫌な胸騒ぎがする。

 その理由を知ったのは、放課後だった。



 午後の授業が終わり、華組の教室に向かうと、アレフ様は既にいなかったのだ。

 もう、帰ったのかな?

 教室を見渡すと、クリフ様がうんざりした表情で、シャムエラと一緒にいる。

 まぁ、クリフ様がうんざりした表情をするのは、ゲーム開始の頃だといつものことよね。

 ふと、朝の出来事が頭を過ったが、クリフ様は根に持たないタイプだ。

 普通に話したら大丈夫。

 私はクリフ様の前まで歩いて行った。

 シャムエラが私に気付いたので、こんにちは、と軽く挨拶をして。



「クリフ様」


「あ? リリーか、どうした?」


「アレフ様はもう、お帰りになられましたの?」


「アレフは停学になっただろ。聞いていないのか? リリーは停学にならなかったのか?」



 意外そうにクリフ様が言ったけれど、私には寝耳に水だった。



「え? 停学ですって? なぜですの? それに、私もですか?」


 驚いている私を見て、



「あー。そうだよな。リリーはそうだよな。」



 と、1人したり顔で頷いている。



「どういうことですの?」


「いや。本人たちは無自覚だったんだろうな、とな。」


「無自覚? ですか?」


「リリー。お前、……朝、多分、階段で転んだろ?」



 少し、ふて腐れたような表情でクリフ様が言う。

 それにしても、いなかったのになんで知ってるんだろう?



「ええ。転びかけたところを、アレフ様に助けてもらいましたけど」


「それが噂になったんじゃないか? 見ていた奴らからは、リリーが転んだんじゃなくアレフに抱き付いたように見えたんだろ。アイツ、動き早いからなって、あー! 何、オレに言わせてんだよ!! チッ」



 乱暴にイスから立ち上がると、クリフ様は鞄を持って教室から出て行ってしまった。

 突然のことに、ただ、見送ってしまった私に追い打ちが襲う。



「あー。クリフトス様~!! もう! せっかく、クリフトス様とお話していたのに。邪魔しないでよね!」



 シャムエラはそう言うと、クリフ様を追いかける様に教室を出て行った。


 え?

 私、邪魔しちゃった……わね。

 それは間違いないわ。

 私が来た所為でクリフ様が帰っちゃったし。

 そんなつもりはなかったけれど、ゲームの通り、お邪魔虫リリーになってしまった。

 ごめんね、シャムエラ。



 それよりも、今はアレフ様よ。

 周りから見たら、私がアレフ様に抱き付いたように見えた?

 たしかに、アレフ様との距離は近かったような、気もするけど。

 そんなつもりは——。



 「あれ? まだ、残ってる人がいたんですねぇ。もう、下校する時間ですよ? おや?」



 教室の入り口に攻略対象キャラの1人、華組の担任のルカ・ユベントス先生が立っていた。



「あなたは華組の生徒ではありませんね」



 穏やかな表情で教室に入ってくる、ルカ先生。

 貴族ではない主人公が、学校に馴染めずにいるのを心配して話しかけてくれたり、相談に乗ってくれたりする。

 誰にでも優しく、一部の先生や生徒から貴族でないからと、辛く当たられたりすると、庇ってくれる優しい先生だ。



「私は、雪組のリリアーナ・ベンフィカでございます」



 ぺこりと、淑女の礼をする。



「ああ。あなたがリリアーナ・ベンフィカですね。もしかして、アレフレッド殿下にご用だったのですか?」


「はい。停学になられたとお聞きしたのですが」


「そうですね。私どもは停学にしなくても、と話したのですが、生徒会長のクラウディオ殿下が『王族が風紀を乱すとは罷りならん』と言いましてね。アレフレッド殿下も話し合われて、停学処分を受けたのですよ」


「そうだったのですか。あの、停学はいつまでですか?」


「今日を含めて、5日ですね。土曜日の新入生歓迎ダンスパーティには出席されますよ」



 ううん。

 逆に参加できなくていいと思ってるに違いない。

 でも、それじゃ私が困るわ。



「停学中のアレフ様に会うことは許されるのでしょうか?」

「とんでもない。リリアーナ、それぞれの学生寮は、異性が立ち入ることを禁止していますよ」


 驚いた表情のルカ先生を見て、更に、私も驚く。

 私、アレフ様のお部屋に案内されたけど……。



「停学を短くすることはできませんか?」


「うーん。難しいですね。私どもは停学の必要は無いと思っているのですが、クラウディオ殿下がお決めになったことですしね」


「クラウディオ殿下は、今、どちらにいらっしゃいますか?」


「そうですね。生徒会室か、もしくはもう、寮に戻られているかもしれませんね」


「ありがとうございます。ルカ先生。さようなら!」



 私は生徒会室に行くべく、教室のドアに向かう。



「ええ。さようなら、リリアーナ。あなたに幸運の女神が微笑むことを祈っていますよ」



 ルカ先生の祝福の言葉を背に、私は生徒会室へ走って行った。

 

ここで、このサブタイトルを付けたことを後々後悔しそうな気がします。

数字だけにしようか、サブタイ本当に悩みます。


お読みいただきましてありがとうございます。

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