22.恋も魔法も頑張ります
アレフ様の袖を離すキッカケが無く、登校する大多数の生徒にアレフ様の袖を掴んで歩く姿を見られていた。
私たち1年生の教室は3階にあり、最初は私がアレフ様を引っ張るように歩いていたのに、歩くスピードの所為か、私が連れられて歩く姿になってしまう。
これじゃまるで、迷子の子供みたいだわ。
恥ずかしいよ。
腕を組まなくて本当に良かったと思う。
いや。
袖を掴んで歩く方が、恥ずかしいのかも。
アレフ様は恥ずかしくないのかな?
先に階段を上るアレフ様の後ろ姿からは、彼が何を考えているのかわからない。
きっと、私のことは何も考えていないんだろうな。
周りを見ると、私たちより先に階段を上っていた生徒たちが道を空けて、私たちに好奇の視線をぶつけてくる。
彼らの視線の先は、袖を掴む私の手。
いっそのこと離れたらいいのに。
「え?」
急に、手が大きく階段の外側に振り回されるように、大きく揺れる。
周りに注意を向けたタイミングが悪かった。
階段はコの字型。
階段の半分を上り切ったアレフ様が、クルッと回って更に上って行ったのだ。
私はアレフ様の早さに付いて行けず、段差に足を取られてバランスを崩してしまった。
「きゃっ!」
掴んでいた手が離れ、勢いが付いたまま前のめりになる。
大勢の人の前で、しかも階段で転ぶなんて!!
すぐそばで、何かが落ちる音がした。
ぶつかる!!
思わず目を閉じた。
あれ?
痛くないわ?
ううん。
右の手首がちょっと痛い。
恐る恐る目を開けてみると、黒の、制服が視界に入る。
視線を巡らすと、黄色の制服を着た私の手首を、黒い制服に包まれた手によって、がっしりと掴まれていた。
ざわざわする周囲の音、ドクドクドク……と少し早い鼓動が聞こえる。
後ろに下がろうとしたら、何かにぶつかってあまり動けなかった。
腕、かな?
「あの、えっと」
身じろぎしていると、頭上から、ほっとしたような溜息と、呆れたようなアレフ様の声がした。
「何やってんだよ」
頭の上に何かがコツンと乗る。
「すみません」
「ったく、本当に。リリーは、ドンくさいな」
「ドンくさ? ア、アレフ様が速すぎるんです」
女子に向かって、ドンくさいって何よ。
思わず声が震えちゃったじゃない。
「クリフは普通に付いて来るぞ」
「男子のクリフ様と、一緒に考えないでください」
アレフ様が話す度に、頭の天辺がコツコツして痛い。
それに、少し重い。
段々、重みに耐えきれなくなった私は、頭を傾かせていく。
おでこを預けると、心地良い鼓動の音が聴こえてくる。
瞳を閉じると、背に回された腕に少し抱き寄せられたような気がした。
「リリー」
「はい」
「そろそろ、行こうか」
「はい」
とても長く感じたけど、実際は1~2分程そうしていたのかな?
アレフ様が横にずれ、私の手を引いて階段を上っていく。
さっきまで沢山いた生徒たちは、近くに誰もいない。
階段を上り、アレフ様の華組を通り過ぎ、私の雪組の前まで送ってもらい、そこでアレフ様とは別れた。
教室まで誰もいなかったので、 授業が始まってしまったのかと不安に思ったが、教室に入ると、まだ登校していた生徒は、まばらだった。
自分の席まで歩いたくらいから、段々廊下側が騒がしくなってくる。
黄色い声のような歓声や、叫び声。
まるで、アイドルのコンサートでも始まったような大騒ぎだ。
不思議に思い、鞄を机の上に置いて廊下に出ると、困った顔をしたアレフ様がいる。
「アレフ様、何の騒ぎですの? 廊下が騒がしいようですけど」
「あ、リリー。特に、問題は無いよ。もう少しで先生も来るから、教室に入っていたらいい」
特にってことは、何かあったんだろうってことは私にもわかった。
しかし、アレフ様がそう言うのに反論することもできない。
「わかりました。それでは、また後で」
「ああ。またな!」
私が教室に戻ると、アレフ様もすぐ教室に入ったみたい。
席に戻るころには、クラスメートが教室に入ってきて、何やら騒々しく話している。
気のせいか、私の方をチラチラ見ているような気もするけれど。
「おはようございます。リリアーナ様」
「あ。おはよう、エイミー」
いつも早く登校してくるエイミーが、やっと来た。
「今日は遅かったのね?いつもはもっと早く来るのに」
「ええ。今日は、階段がとても混んでいまして、通れなかったのですわ。何があったのかしら?」
コクンっと小首を傾げて言う、エイミー。
階段が通行止め?
不自然なほど人はいなかった気がするけれど。
まさかね。
「不思議なこともあるのね」
「全くですわ」
HRが終わり、1限目は魔法学だから、攻略対象者ナザリト・リヴァプール様の授業だ。
1日目の出来事で、授業を途中で抜けちゃったからか、ナザリト先生からガッツリ目を付けられてしまった。
苦手なんだよね。
ナザリト先生って。
人の好みはそれぞれだから、ナザリト先生も人気が全くないわけではない。
最初はそっけない態度だったのが、好感度が上がると、態度が激変してすごいラブラブになる。
ちょっと行き過ぎて、束縛がキツメなんだけど、それがまたいいと評判なんだよね。
お前に会えない日は、世界が輝くのを忘れてしまったかのようだ。
私の世界に輝きを与えてはくれないか?
この、怖ろしい顔して授業をしているナザリト先生が、こんなセリフを言うとは思えないなー。
授業中、そんなことばかり考えていたら、
「私の顔に何か書いてあるのかね? リリアーナ・ベンフィカ?」
「いえ。そんなことはありません」
「そうか。じゃ、次の所から読むように」
うわ、当てられちゃったよ。
『エイミー。次ってドコから?』
『P20の上から5段目の所からですわ』
『ありがとう』
ヒソヒソ話は聞こえなかったみたいだ。
私は、よくわからない内容が書かれている魔法の使い方の部分を読み上げる。
「魔力は、全ての生物、植物が保有する力であり、超常現象を起こす力である。
属性は木、火、土、風、水、光、癒、闇の8つ。
ほとんどの人は木、火、土、風、水、の5つの属性、五属性から得意な属性を持つ。
光と癒はほぼ同じ力で、攻撃に特化したものが光。
回復や補助に特化した、相手にダメージを与えることができないのが、癒と、言われる。
光は、王族の直系男子にしか具現しない。
癒は、司祭の家系にしか具現しない、特殊な属性だ。
そして、闇属性は人間で持つ者はいなく、アンデッドモンスターのみが持つ。
属性には相性があり、
木は土に強く、
土は水に強く、
水は火に強く、
火は風に強く、
風は木に強く、
光は全ての属性に強い。
闇は、五属性に強く、光に弱い。
この特性を使うことにより、LVが低い者でも、相反する属性で戦えば、LV差があっても、勝つことができる」
「よろしい、そこまで」
ほっとして、イスに座り、ナザリト先生の説明を右から左に聞き流す。
たしか、リリアーナの属性は風。
魔法、使えるのかな?
君セナでは、パラメータと魔法大会のイベントの為に存在しているだけだった。
夏の暑い日に風魔法を自分の近くに掛けて、気持ち良さそうにしてるシーンもあったよね。
で、主人公が頼むと、力加減を誤って吹き飛ばされるんだよなあ。
今すぐには使わないようにしよう。
少し授業風景として、魔法について説明させていただきました。
ほぼ、五行そのままですね(笑)
お読みいただきましてありがとうございます。




