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エクリプス  作者: 元蔵
第1章 全身全霊をかけてあなたに恋します
21/98

21.明日になったので言い訳せずに頑張りますよ

 4月15日月曜日。

 今日も元気に明るく、スマイルで登校する。



 そう書いてから、私は思い直して訂正する。



 今日は、アレフ様と一緒に登校した。



 と。

 この世界に来てから書き続けている日記。

 自分の決意を促すための予定日記にもなっている。

 もし、何らかの形で元のリリアーナに戻ったときを考えて書き始めたもの。

 日記のページを眺め、ゲームのセーブデータみたいにページを開いたところからやり直せたらいいのに、と思ってしまうわ。



「いってまいります!」



 私は日記帳を机の引き出しにしまうと、寮の部屋を出た。

 王族専用寮へ向かうと、丁度、アレフ様とクリフ様が一緒に歩いているのが見える。



「おはようございます」



 2人の前まで行き挨拶すると、 何故か2人ともダルそうに私を見る。



「オハヨ」


「……朝っぱらから、デケー声出すんじゃねーよ。マジウゼェー」



 普通に挨拶しただけなのに、なんなの? この言われようは。



「お2人とも、なぜそんなにテンション低いのですか? 今日はまだ月曜日ですよ?」


「だー。だっから、もうちょっと小さい声でしゃべれよ! りりー!!」


「クリフ様の声の方が大きいですわ」


 

 口を尖らせて言うと、



「オレはいいんだよ! オレは!」



 と、余計怒られてしまった。

 肩をすくめてアレフ様を見ると、呆れたような表情を浮かべている。



「ん? そういや、リリー。もう、オレのことを『クリフトス様』って呼ぶのは止めたのか」


「え?」



 驚いてクリフ様を見ると、笑いながら話してくれた。



「今言っただろ? 『クリフ様』って。アレフのことは『アレフ様』のままだったのによ」



 私、咄嗟にクリフ様って言ってたんだ。



「今は、咄嗟に言ってしまっただけですわ。もう、子供ではありませんし、失礼かと思って……」



 リリアーナがクリフ様を何て呼んでいたか、ゲームには出てなかったのよね。

 だから、クリフトス様と呼んでいたけれど、失敗だったみたいね。



「なんで、オレだけ他人行事なんだよ! そういや、クラ兄だって言ってたぞ。『リリーがクラ兄様ではなく、クラウディオ殿下と呼ぶようになった。成長したのだと思う反面、少し寂しいものだな』って」



 なっ?!

 元のリリアーナは、クラウディオ様ともそんなに親しく呼んでいたの?

 


「寂しいですか?」


「まあな」



 そう言って笑うクリフ様の横顔は、どことなく寂し気に見える。



「じゃ。今まで通り、『クリフ様』とお呼びしますわ」


「お、おう。そうしてくれ」


 笑って言ったのに、フイっと視線を背けるように横を向かれてしまった。

 アレフ様を見ると怒ったように睨んでいるし。

 やっぱり、失礼に当たるのかしら?



「そうだ、クリフ」


「あん?」


「週末にダンスパーティがあるだろ?」


「ん? ああ、新歓ダンパか?」



 ちょっ! クリフ様、略しすぎですよ?!



「あ、それそれ。リリーが出るから、エスコートしてやってくれ」



 なっ?!

 ソレ、頼みますかね? 本人の目の前で!!

 あ。

 クリフ様もビックリしてるわ。



「ハァ? なんでだよ! リリーをエスコートしながら、新入生代表挨拶するんだろ?」


「挨拶? それも頼むよ」



 ええ?

 クリフ様を見ると、フルフルと震えている。

 咄嗟に耳を塞ぐと、同時に怒声が響く。



「バッカヤロー! 何言ってんだオメーは! オレはっ! ……とにかく。オレは、絶対、やらねーからな!」



 クルっと向きを変え、そのままクリフ様は走って行ってしまった。

 塞いでいた手を下ろし、アレフ様を見れば、呆然としている。

 断られることを予想しなかったの?

 そんなに、私と踊るのは嫌なの?

 嫌な感情が胸を占めてくる。

 ギュっとスカートを握りしめ、絶望に打ちひしがれそうになる自分を奮い立たせる。

 どんどん暗くなる気持ちを隠すように、明るい声で言う。



「フフ。断られちゃいましたね。私のエスコートはアレフ様しかできないのですよ」



 アレフ様は何かを言いかけて、止めた。

 何を言おうとしたのかわからないけれど、否定されなかったと受け止めよう。

 私は、アレフ様の制服の袖を掴む。



「さぁ、遅刻しないように私たちも行きましょう」


「ああ」



 ニッコリ笑って話しかけたが、アレフ様は心、ここにあらずって感じだ。

 私が歩くと、アレフ様は引かれるまま歩き出す。

 本当は腕を組んで行きたかったけれど、今の私には、これが精一杯の頑張りだった。

 校舎に近付くにつれて、生徒の姿が増えてきたが、私の手は振り払われることはなかった。


お読みいただきましてありがとうございます。

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