21.明日になったので言い訳せずに頑張りますよ
4月15日月曜日。
今日も元気に明るく、スマイルで登校する。
そう書いてから、私は思い直して訂正する。
今日は、アレフ様と一緒に登校した。
と。
この世界に来てから書き続けている日記。
自分の決意を促すための予定日記にもなっている。
もし、何らかの形で元のリリアーナに戻ったときを考えて書き始めたもの。
日記のページを眺め、ゲームのセーブデータみたいにページを開いたところからやり直せたらいいのに、と思ってしまうわ。
「いってまいります!」
私は日記帳を机の引き出しにしまうと、寮の部屋を出た。
王族専用寮へ向かうと、丁度、アレフ様とクリフ様が一緒に歩いているのが見える。
「おはようございます」
2人の前まで行き挨拶すると、 何故か2人ともダルそうに私を見る。
「オハヨ」
「……朝っぱらから、デケー声出すんじゃねーよ。マジウゼェー」
普通に挨拶しただけなのに、なんなの? この言われようは。
「お2人とも、なぜそんなにテンション低いのですか? 今日はまだ月曜日ですよ?」
「だー。だっから、もうちょっと小さい声でしゃべれよ! りりー!!」
「クリフ様の声の方が大きいですわ」
口を尖らせて言うと、
「オレはいいんだよ! オレは!」
と、余計怒られてしまった。
肩をすくめてアレフ様を見ると、呆れたような表情を浮かべている。
「ん? そういや、リリー。もう、オレのことを『クリフトス様』って呼ぶのは止めたのか」
「え?」
驚いてクリフ様を見ると、笑いながら話してくれた。
「今言っただろ? 『クリフ様』って。アレフのことは『アレフ様』のままだったのによ」
私、咄嗟にクリフ様って言ってたんだ。
「今は、咄嗟に言ってしまっただけですわ。もう、子供ではありませんし、失礼かと思って……」
リリアーナがクリフ様を何て呼んでいたか、ゲームには出てなかったのよね。
だから、クリフトス様と呼んでいたけれど、失敗だったみたいね。
「なんで、オレだけ他人行事なんだよ! そういや、クラ兄だって言ってたぞ。『リリーがクラ兄様ではなく、クラウディオ殿下と呼ぶようになった。成長したのだと思う反面、少し寂しいものだな』って」
なっ?!
元のリリアーナは、クラウディオ様ともそんなに親しく呼んでいたの?
「寂しいですか?」
「まあな」
そう言って笑うクリフ様の横顔は、どことなく寂し気に見える。
「じゃ。今まで通り、『クリフ様』とお呼びしますわ」
「お、おう。そうしてくれ」
笑って言ったのに、フイっと視線を背けるように横を向かれてしまった。
アレフ様を見ると怒ったように睨んでいるし。
やっぱり、失礼に当たるのかしら?
「そうだ、クリフ」
「あん?」
「週末にダンスパーティがあるだろ?」
「ん? ああ、新歓ダンパか?」
ちょっ! クリフ様、略しすぎですよ?!
「あ、それそれ。リリーが出るから、エスコートしてやってくれ」
なっ?!
ソレ、頼みますかね? 本人の目の前で!!
あ。
クリフ様もビックリしてるわ。
「ハァ? なんでだよ! リリーをエスコートしながら、新入生代表挨拶するんだろ?」
「挨拶? それも頼むよ」
ええ?
クリフ様を見ると、フルフルと震えている。
咄嗟に耳を塞ぐと、同時に怒声が響く。
「バッカヤロー! 何言ってんだオメーは! オレはっ! ……とにかく。オレは、絶対、やらねーからな!」
クルっと向きを変え、そのままクリフ様は走って行ってしまった。
塞いでいた手を下ろし、アレフ様を見れば、呆然としている。
断られることを予想しなかったの?
そんなに、私と踊るのは嫌なの?
嫌な感情が胸を占めてくる。
ギュっとスカートを握りしめ、絶望に打ちひしがれそうになる自分を奮い立たせる。
どんどん暗くなる気持ちを隠すように、明るい声で言う。
「フフ。断られちゃいましたね。私のエスコートはアレフ様しかできないのですよ」
アレフ様は何かを言いかけて、止めた。
何を言おうとしたのかわからないけれど、否定されなかったと受け止めよう。
私は、アレフ様の制服の袖を掴む。
「さぁ、遅刻しないように私たちも行きましょう」
「ああ」
ニッコリ笑って話しかけたが、アレフ様は心、ここにあらずって感じだ。
私が歩くと、アレフ様は引かれるまま歩き出す。
本当は腕を組んで行きたかったけれど、今の私には、これが精一杯の頑張りだった。
校舎に近付くにつれて、生徒の姿が増えてきたが、私の手は振り払われることはなかった。
お読みいただきましてありがとうございます。




