20.負けないんだから! 明日から・・・・・・
帰ろう。
今日のところは、邪魔をしないであげる。
そう。
邪魔をしないであげるだけよ。
アレフ様には私もアタックし続けるんだから。
繰り返し自分に言い聞かせて、私の部屋がある寮に戻ることにした。
遠いなぁ。
ゲームだと、行きたい場所を選択すれば、一瞬で画面が切り変わるのに。
しばらく歩いていると寮のある方向から、黒髪の背の高い男性が歩いてくる。
王族の誰かに用があるのだろうか?
近付いてきて、顔がハッキリとわかるようになってきた。
ジョナス様だ。
ソルーア王国軍の元帥である、プライア公爵家の長男。
2年生の生徒会副会長、ジョナス・プライア様。
生徒会長である、クラウディオ様にご用なのかな?
2人は学年が違うけれど、とても仲が良く、お互いを信頼しているのよね。
剣の柄を握る主人公の手を上から、触れるように優しくにぎりしめ、反対の左手はさり気なく腰に回して抱き寄せて囁くの。
この剣に誓おう。俺は生涯、君だけを愛しぬく。と
目を大きく見開く主人公が頬をポッと染めて頷く。
俯いた顔をジョナス様が指で軽く上向かせ、恥ずかしそうに見つめる主人公だが、恥ずかしさのあまり目を閉じてしまう。
その様子に、紫色の瞳を細めて笑うジョナス様。
2人は更に寄り添っていき、ジョナスの後ろ姿が画面一杯に広がる。
「おい」
そんな私の回想は、簡単に吹き飛ばされてしまった。
目の前に厳しい表情をしたジョナス様が立っている。
「はい。なんでしょうか」
本人を前にしてエンディングシーンを回想していたからか、何となく疚しい気持ちになる。
そんな私の気持ちを知らずしてか、ジョナス様は怪訝そうな声で言う。
「君がいた方向は、一般生徒は立ち入り禁止になっている。知らなかったのか?」
「申し訳ありません。アレフレッド殿下に用事がありましたので。立ち入り禁止とは知りませんでした」
言い終え、ぺこりとお辞儀をする。
後ろで1つに編み込んだ三つ編みがパサっと落ちた。
「ん? その髪の色は。もしかして、ベンフィカ嬢か?」
「はい。私は、リリアーナ・ベンフィカでございます。ジョナス様」
「そっか。ベンフィカ嬢だったのか。髪型が違うから、誰だか気付かなかったぜ。すまなかったな」
「いいえ。構いませんわ」
先程の厳しい表情から、穏やかな笑顔のジョナス様。
一瞬、回想していたエンディングムービーを思い出してしまうわ。
「ジョナス様はクラウディオ様のところへ行かれるのですか?」
「ああ。生徒会のことで確認したいことがあってな」
ハラリと落ちた髪を無造作に掻き上げる姿もサマになっている。
「そうでしたか。それでは、私はこれで」
そう言って、頭を下げる。
「ああ。またな」
「ごきげんよう」
歩き出しても、しばらくはジョナス様の視線を感じて、少し緊張気味に歩く。
笑うととても優しげな表情なのに、普段は少し鋭い目つきのためか、きつめの印象を受ける。
視線を感じなくなったので後ろを振り返ると、丁度、ジョナス様が歩き始めたところだった。
部屋に戻り、机に向かう。
これまで会った攻略キャラは、10人の内4人。
魔法学教師のナザリト先生。
第2王子様のアレフレッド殿下。
宰相のご子息のクリフトス様。
元帥のご子息のジョナス様。
隠しキャラ2人の内の1人、第1王子様のクラウディオ様。
ふと、マキシ様のことを思い浮かべる。
カフェでのこと。
もしかして、彼は隠しキャラの1人だったのかも、と。
私が君セナの世界に、
ううん。
この『君セナっぽい世界』に来てから、5日が過ぎた。
皆既日食が起こった元の世界と同じ、4月9日からこの世界での生活が始まったのだ。
君セナのゲーム開始日は4月1日の月曜日。
学園の入学前はムービーが流れ、実際プレイ開始は入学式からとなる。
入学式は4月5日。
4月9日から始まったのは、やはり、もとの世界と同じ日だったからだろうか?
4月9日。
そこで、ふと思い出す。
そうだ、私がプレイしていたゲームでの日時が、4月9日だった。
と、言うことは……コレは私がプレイしていたゲーム?
ううん、やっぱり変よ。
ゲームなら、私とシャムエラが会うのは同じクラスになった2年生のときのハズ。
どのルートをやっても、1年生で私とシャムエラが会うことはなかったのだから。
それとも、攻略キャラクリアーした後のセーブデータだと、違うのかな?
ダメね。
考えても答えが出ないんじゃしょうがないじゃない。
気分転換に散歩に行こう。
ミセスブラウンに声をかけてから、外を出た。
柔らかな日差しが降り注ぐ。
森に行けば、クリフ様はまだお昼寝中かな?
散歩をするのに森っていい場所よね。
確か、大きな池があったし、もしかしたら桜も見れるかも。
よし、森に行こう。
目的地を決めると、私はさんぽを口ずさみながら歩き出す。
くよくよしたって、しょうがないもんね。
20話となりました。
もう少しキリのいいところで終わらせる予定だったのですが……。
お読みいただきありがとうございます。




