16.秘密の場所
投稿が遅くなってすみません。
これからは不定期に更新することが多くなります。
ご了承ください。
翌日。
金曜日の今日は、午前授業で終わり。
曜日の感覚は日本と一緒で、土日はお休みになる。
その為、週末を家で過ごす生徒も多く、金曜日の午後は比較的、カフェが空いていた。
「お待ちしておりました。リリアーナ様、エイミー様」
入り口にマキシ様が立ち、優雅にお辞儀をしている。
いつものスーツではなく、燕尾服と言うのか、とてもフォーマルな装いだ。
マキシ様の隣には、ゲームにも登場しているボーイもいて、彼も同じ服装だった。
王族専用スペースでも、カフェの制服は同じスーツだったような?
「今日は、お願いを聞いていただきまして、ありがとうございます」
私たちがお礼を言うと、
「いえ。私どもも、楽しみにしておりました。では、ご案内致します」
私たちの手を取り、マキシ様方の案内の元、2階へと上がる。
そして、並ぶ個室の一番奥へと進み、部屋に入ると下へ降りる階段があった。
「階段?」
驚いて、出てしまった疑問にマキシ様が答えてくれる。
「はい。私たちの大事なお客様だけをご案内する、特別室でございます」
王族専用スペースじゃないの?
エスコートされながら階段を降りると、どことなく淡いピンク色で統一された部屋に着く。
可愛いカフェカーテンがかかる大きな窓の向こうには、満開の桜が1本見える。
「きれい……」
思わずつぶやくと、後ろから
「本当。綺麗ですわね」
と、エイミーも桜にくぎ付けになったように見て言った。
「お気に入ってもらえて光栄です。こちらの枝垂桜は、学園が創設されたときに植樹したものですが、カフェの増改築により、このお部屋からしか見ることができなくなっているのです」
「こんなに見事なのに、ほとんどの人から見てもらえないなんて」
よく見ると、桜の周囲は他の種類の木とその奥に窓の無い壁が続いている。
私たちのいる特別室に、小さい森。
この部屋からか、森から見ないと、この桜は見れないだろう。
更に、桜は咲いている期間が短い。
昨日、マキシ様にお願いしていなければ、この桜を見ることはできなかっただろう。
「今日は趣向を凝らして、こちらでお寛ぎいただきたいと思います」
マキシ様がドアを開け、桜が咲いている中庭へ案内してくれる。
付いて行くと、桜のそばにラグやクッションが沢山置かれていた。
そっか。
お花見だ。
私たちがクッションの上に座ると、マキシ様方は建物に戻る。
「驚いたわね」
「ええ」
森の奥には大きな池があり、岸辺には色とりどりのチューリップが咲いている。
「王族専用スペースじゃなかったね」
「そうですわね。王族専用スペースも見たかったですが、こちらも素敵ですわ。今日は、この特別室に案内していただけたことが嬉しいですわ」
「そうだね。この満開の桜が見れるのは今だけだし」
桜を見上げると、春風に垂れた枝が揺れ、花弁がふわふわと舞い降りている。
「お待たせいたしました」
黒地に白や淡い色で描かれた桜の重箱を持って、マキシ様方が戻ってきた。
重箱の中には、取りやすいようにカップに入ったちらし寿司や手まり寿司に、煮エビや伊達巻など、お節料理みたいな和食が並ぶ。
デザートは和洋折衷に、春を意識したケーキやゼリー、お団子が入っていた。
「お花見なのね」
透明なサイダーに桜の花びらを浮かべたグラスを受け取りながら話す。
「はい。この季節にしか楽しむことができませんから」
桜をバックに微笑みながら話すマキシ様。
まるで、イベントのスチルみたいだ。
「さぁ、どうぞお召し上がりください。今日は、私たちも一緒に楽しませていただきますよ」
カチン
乾杯するように私たちのグラスを鳴らしてから、マキシ様は飲み物を飲む。
どことなく危険な香りがただよう。
エイミーは完全に見とれてるよ。
これは、応援してあげないとね!
ちびちびと飲みながら、エイミーの恋に、ニマニマと笑っていたが全く気付かれないので、私はお料理を食べることにした。
別に、相手にされなくて寂しいわけじゃないんだからね!
ぐいっとグラスを傾け、サイダーを一気に飲み干す。
甘いサイダーの後から、ふんわりと桜の香りが追ってくる……。
桜は見るのは好きだし、桜餅も大好きだけど。
苦手なんだよね、桜の味。
グラスに残った桜の花を、どうしたものかと見つめていると、ボーイがサイダーを継ぎ足してくれた。
桜の花の追加は無く、ほっとする。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「あの。失礼かもしれませんが、お名前を聞いてもよろしいですか?」
そう言えば、彼の名前は紹介されていない。
「私は、ロビン・フラガと申します。お好きなようにお呼びくださいませ」
ん?フラガ?
「マキシ様と同じ名前?」
「はい。マキシは私の兄でございます」
ニコッと笑った顔は、どことなくマキシ様に似ていなくもないけど。
瞳の色がマキシ様の鳶色と違い、ロビンさんは青い。
マキシ様は青い髪に対し、ロビンさんの髪は茶色だ。
「あまり似ていないね」
「ははは。よく言われます」
あれ?
私、変なこと言ってない? 言ってるよね?
似てる似てないとか。
笑うロビンさんを見ると、唐突に悲しくなった。
「変なこと言ってごめんね。でも、似てないって、悲しいねっ!っう……」
涙まで溢れてきた。
ロビンさんにハンカチを貰って涙を押えるが、全然涙は止まらない。
なぜ泣いているのかも、なぜ悲しいのかもわからない。
泣いている私と驚いているロビンさんに気付いたエイミーが、軽やかに笑う。
「まぁ。リリアーナ様。放ってしまって、申し訳ありませんわ」
と言って、私に抱き付いてきた。
そっか。
私はエイミーを取られたから、悲しくて泣いたんだ。
理由がわかって、私は更に泣き始めた。
「うっ。エイミー、悲しいよぉ~」
子供のように泣く私をあやし、エイミーは、言った。
「リリアーナ様は泣き上戸なのですわ。本日は、案内していただきまして、ありがとうございます」
泣き上戸?
何それ?
エイミーが私を抱きしめたまま、立ち上がる。
「こちらへ」
「ありがとうございます。ごきげんよう」
私は、エイミーに抱きかかえられるようにして、寮の部屋に戻ったのだった。
未成年の方はお酒を飲んではいけませんよ(笑)
お読みいただきましてありがとうございます。




