15.ゆずれない想い
私は椅子に座ると、何事も無かったように食事を続けた。
戸惑った様子のエイミーだったが、ふっと笑って話し始める。
「リリアーナ様、変わられましたね」
「え?」
「話し方や雰囲気もそうですけど。以前は、アレフレッド殿下のことも、何と言うか。誰とお話していても気にされていなかったですわ」
以前の、リリアーナ本人だったらそうだろうな。
ゲームの中でリリアーナの恋愛感情を表現しているシーンは特に無いから。
全てにおいて楽しそうに振舞っては、主人公にダメージを与えるのが仕事であり、役割だ。
だから、アレフ様が好きになった主人公に興味を持ち、友情エンドにも行き着く。
婚約者の心が離れても、平気だってことなのよね。
でも、私は違う。
私はアレフ様が好き。
君セナだって、パッケージのアレフ様が気に入って買ったんだから。
「そうね。以前は気にならなかった。だけど、今は――今の私には、アレフ様が特別な存在になってるの」
「まぁ……」
エイミーは驚いた様子で、目を大きくする。
「だから、アレフ様に『ダンスは嫌だ』と、断られたのはショックだったわ」
ゆっくり胸の中の息を全部出し尽くすように言って、グリーンティーを一口飲む。
氷が解けて薄くなっていた。
「そうでしたの」
「うん」
少し、会話が途切れる。
綺麗なテーブルマナーで食べるエイミーと、ときどきカチャカチャと音を立ててしまう私。
多分、リリアーナはもっと上品に食べていたんだろうな。
「でも、ドレスも届いたことだし、OK貰うまで頑張るわ!」
暗くなりかけていたが、私は明るく宣言する。
そうよ。
こんな機会、いつまた訪れるのかわからないんだから。
女は度胸って言うじゃない。
「リリアーナ様、その意気ですわ」
「ありがとう。頑張るわ」
そう言って、2人で笑う。
エイミーがいてくれて、良かった。
「おいしいね」
「当然ですわ。マキシ様が運んでくださったのですから。おいしさも跳ね上がります」
エイミーの言葉に、つい笑ってしまう。
「マキシ様は運んでくれただけじゃない。作ってくれたのは、シェフでしょ」
「いいえ。マキシ様が運んでくださったからですわ」
エイミーは、ほぅっとため息をつく。
「エイミーは、マキシ様みたいな方が好みなの?」
「こ、好みとは言いませんが、素敵な方だと思いますわ」
少し照れたようにエイミーが言う。
「へぇー」
確かに、あの鳶色の瞳で見つめられちゃうとドキドキするのはわかるかな。
いやいや、私はアレフ様一筋よ。
「そう言えば。先程、マキシ様がおっしゃっていた、『特別なお部屋』ってどこですの?」
「多分、カフェの3階にあるお部屋だと思うわ」
「まぁ。3階がありますの?」
「うん。ここからじゃ見えないだろうけど、植物が置いてあるのは見えるでしょ?その奥に席があるの」
「そうでしたの。気付きませんでしたわ」
「当然よ。秘密のつくりにしてあるんだから」
「隠しごとなんて、良くないですわ」
少し拗ねたようにエイミーは言う。
「じゃあ。今度、マキシ様に頼んでみようか?」
「まぁ。それはとてもいい案ですわ!」
ちょっと図々しいかな?
丁度、近くを通りかかったマキシ様に頼むと快く了承してくれて、明日案内してくれる約束になった。
私たちは王族じゃないけど、カフェで働くマキシ様がいいって言うんだし、問題無いわよね。
そう言えば、ドレスを頼んだ『マジカルシュシュ』と言うお店の話をしたら、エイミーは知らなかったらしい。
あんまり有名なお店じゃなかったのかな?
あんな態度で話す妖精と、貴族が付き合うわけないわよね。
読んでくれてありがとうございます。




