14.君セナの主人公登場
翌日。
私はエイミーと一緒にカフェへ来ていた。
ランチの時間で大賑わいのカフェは、ボーイたちが全員忙しそうに働いている。
そうよね。
こんなに忙しいんだもん。
多分、マキシ様だって話しかける余裕なんてないわ。
ほっとしている気持ちの中に少し残念に思う自分もいた。
空いてる席に座りメニューを見ながら話していると、楽しくてここが異世界だなんて忘れてしまいそうになる。
エイミーとも出あってからまだ3日しか経っていなかったが、既に心友のようだ。
ん?
セットメニューの飲み物を選んでいると、グリーンティーがある。
そうだ。
確か、攻略対象者で緑茶が好きな先生がいたんだ。
近くにいたボーイに注文し、グリーンティーは先に持ってきてもらう。
久しぶりに飲む緑茶はとてもおいしかった。
「珍しいですね。紅茶以外のものを頼まれるなんて」
エイミーの言葉に、リリアーナは紅茶が好きな設定だったと気付く。
「最近、色んなものを食べることにしたの。いつも同じものじゃつまらないじゃない」
「そうですわね。新しいことを始めるには勇気が要りますけど、食べるだけならできそうですわ」
「ふふ。そうよね。グリーンティーもおいしいよ」
「色も綺麗ですわね。グリーンティーなのに、黄色っぽいのもおもしろいですわ」
2人でグラスを眺めていると、
「そう言えば、昨日のお話を聞かせていただけますか?リリアーナ様」
ごく自然を装って聞いてくる。
実は、ゴシップ好きなのかしら?
「うーん。そういうエイミーはダンスパーティーはどうなの? 誰と踊るの?」
言葉を濁し、逆に質問してみるが、
「わたくしのことはどうでもいいのです。相手も特におりませんし。それより今は、リリアーナ様のことですわ」
と話を戻されてしまう。
やるわね、侮れないわ。
「カフェでアレフ様にお話して……」
「まぁ、カフェで! それで?」
う、期待がかったまなざしで見られると更に言葉に詰まるわ。
「アレフ様にお願いして、それで……」
「それで?!」
「それで、断られてしまったんですよね。リリアーナ様」
言いにくかった言葉が後ろから発せられる。
驚いたエイミーが私の後ろを見て、更に驚いた表情をしている。
後ろには、お盆を持ったマキシ様がいた。
「ま、マキシ様」
「ようこそ、リリアーナ様、お嬢様。特別なお部屋もご用意できますが、移られますか?」
「いえ、このままで、結構ですわ」
私が断ると、エイミーがどことなく残念そうな表情を見せる。
ん?
何かあるのかしら?
「さようでございますか。では、失礼いたします」
マキシ様が運んできた料理をテーブルに並べて行く。
その姿は、流れるように美しい。
「ごゆっくりどうぞ」
一礼をしてマキシ様は去って行った。
去りゆく姿をエイミーはしばらく見つめていたが、振り返るや否や、
「リリアーナ様! 先程の方、マキシ様とはどなたですの? なぜ、リリアーナ様とアレフレッド殿下のお話をご存じでいらっしゃるの?」
「え、えーとぉ」
何とか逃げ道が無いものか、それとも話していっそのこと、スッキリしちゃおうか。
そんなことを考えていたら、2階につながる階段から降りてくるアレフ様が見えた。
アレフ様はクリフ様と一緒に歩いている。
その2人の後ろから、ピンク色の制服を着た少女が目に飛び込んできた。
蜂蜜のようなイエローブロンドの髪を両サイドで編み込み、後ろで大きなピンク色のリボンで止めている。
毛先が動きに合わせてふわふわ動く姿は、周りの男子生徒を魅了していた。
主人公だ。
ガタッ!
私はよく見ようとして、音を立てて立ち上がる。
小柄な主人公は、必死にアレフ様とクリフ様の間に入っては、何か話しかけている様子だった。
ここからじゃ遠すぎて、どんなお話をしているのか様子がわからない。
段々近づいて来る彼らは離れたところにいる私には気付いていないようだ。
第2王子であるアレフ様、アレフ様の従兄弟であるクリフ様、そして可愛らしい主人公の3人組にカフェにいる生徒たちの注目が集まっている。
私の近くを通り過ぎるとき、可愛らしい楽しげな声が聞こえた。
君セナの世界じゃないのかと思えば、君セナの世界に思えてくる。
私が何故ここにいるのか、何か理由があるのだろうか?
何が何だかわからなくなる。
どうしたらいいんだろう?
力なく俯いたまま座った私をエイミーが心配そうに見ているのが見える。
ダメだわ。
エイミーに心配掛けてばかりよ。
もっと、しっかりしなきゃ。
そうよ。
私が主人公だったときは、もっとガツガツ攻め倒してたじゃない。
こんなの序の口よ。
アレフ様とクリフ様と一緒にいる時点で、どっちのルートにも入れていない。
奪われないように私から動かなきゃ。
お読みいただきましてありがとうございます。




